頭だけ・手だけアニマル 帽子や手袋でプチ着ぐるみ
変身姿、SNSで披露
秋冬の定番、アニマル柄。しかし今年はただの柄では終わらない。動物の顔つき帽子や肉球付き手袋など、まるで着ぐるみの一部分のようなファッションが街に増殖し始めている。ありふれたものでは心動かされない今どきの消費者も、珍しく、身につければ楽しくなれる「ちょっとだけ」着ぐるみは潜在ニーズにぴったりくるようだ。
「何これ、かわいい!」。平田智子さん(26)と寺田唯さん(26)の2人組が店に入るなり駆け寄ったのは、一風変わった帽子売り場。白クマやコアラ、果てはイエティまで、ぬいぐるみそのままのニット帽(4410円)が並ぶ。実際にかぶってみると、首から上は完全に着ぐるみだ。
街を歩くにはかなり勇気の要りそうなデザインだが、ここプラザ ルミネエスト新宿店では人気商品。寺田さんも「友達とおそろいでかぶったら楽しそう」と明るく笑う。同店で扱うほかの帽子に比べ価格は3~4割高いにもかかわらず、今月5日の発売以降10~20代の若い男女を中心に滑り出しは好調だ。
街に続々登場し始めた着ぐるみ風ファッション。20代向けファッション誌「mini」(ミニ)の見沢夢美編集長によれば、コレクションブランドがネコなどの動物をモチーフにしたファッションを発表したのをきっかけに昨年ごろから少しずつ登場、今年は一気に種類が増えたということのようだ。「遊びを取り入れたい時にはぴったりのアイテム」と言う。
とはいえ、あまりかわいすぎるデザインには抵抗のある人も多い。もっとさりげないデザインの商品も出始めている。
小田急百貨店新宿店(東京・新宿)に今月2日から並び始めた小さな耳付きの帽子(8925円)。着用姿は横や後ろから見ると耳付きだとわかるものの、前から見ると普通のニット帽だ。一見無地のシンプルな手袋(8400円)も、裏返すと実は肉球に見立てたアップリケが付いている。都内に住む女子高生(18)は「これぐらいのデザインだと普段から使いやすい」と話す。
売り場には10代から60代まで幅広い年齢の女性客が次々集まり、面白そうに商品を手に取る。年齢の高い女性の購入は意外に見えるが「今は年齢を問わず、たんす在庫にない商品でないと買ってもらえない。ここ3年は売り場で見たことがないというのがヒットの絶対条件」と岡部葵バイヤー。皆が持っていないちょっと変わったデザインながら、身につけやすいさりげなさというバランスが人気の理由のようだ。
人目に付きにくいアイテムでこっそり取り入れる人も増えている。まずは靴に隠れがちな靴下。靴下店チェーンのチュチュアンナ(大阪市)の靴下(367円)は、はくとアヒルやヘビに足をくわえられたように見える、ひとひねりあるデザインだ。「珍しいから雑貨感覚でつい買ってしまう」と10代女子が殺到。若者向け靴下250商品のうち売り上げ7位の人気商品になっている。
いつでもつけ外しできるマスクも、おしゃれグッズとして急浮上中。雑貨ブランド「gonoturn」(ゴノタン)のマスクは、動物やドラえもんなどキャラクターの鼻と口が付いたデザイン。もこもこのぬいぐるみ素材は冬向きだが、昨年9月の発売以来売り上げは毎月伸び続けている。
本物の着ぐるみも、ルームウエアならチャレンジできる。通販のフェリシモが9月に発売した羊の着ぐるみは、20代女性を中心に注文が予想の3倍のペースだ。数年前から肉球付き靴下など、ワンポイントだけ動物になりきれる室内着を発売してきた同社。好評に応え、ついに着ぐるみまで投入するに至ったという。
着ぐるみファッションの陰の主役といえそうなのが、ソーシャル・ネットワーキング・サービス(SNS)の普及。「マスクをつけたら顔がドラえもんに!」「着たらひつじになれる」――。どの商品でも着用して「変身」した写真をネットに載せるという流れは定着。さらに書き込みは国境も超え、チュチュアンナでは画像を見て目的買いに来る外国人観光客まで現れているという。
温かい着ぐるみファッションは秋冬がシーズン。人気はこれからさらに高まりそうだ。
(高倉万紀子)
[日経MJ2013年10月21日付]
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