マネー研究所

カリスマの直言

GPIF改革より休眠預金の活用を(渋沢健) コモンズ投信会長

2014/7/6

「年金資金がPKO(株価維持策)になってはいけない」

 株式市場では年金積立金管理運用独立行政法人(GPIF)への期待が高い。政策の変化に収益チャンスを見出すグローバルマクロ系のヘッジファンドの間ではGPIF改革の話題で持ちきりだ。6月にシンガポールで講演した際には日本が専門でない外国人投資家からもGPIF改革について質問されるほど注目されている。

 「まだ、何も決まっていない」と改革の制度設計の有力者の声が聞こえてくるが、129兆円もの運用資産を持つ世界最大級の機関投資家の動向である。その運用資産の配分比率が1%でも見直されれば、マーケットへの影響が大きい。関心を集めることは当然だ。

 しかし、そもそも年金運用の役割とは将来の給付金の原資を確保することだ。年金保険料の推移と将来の給付水準との関係から、適切な資産配分を通じて長期的な収益を確保することがGPIF改革の本質だ。運用資産に占める株式の比率を17%から20%に引き上げたら3兆円以上の買い余力になるという観測が多いことに異議を唱えたい。

 GPIFの現状の基本方針は国内債券60%、国内株式12%、外国債券11%、外国株式12%、短期金融資産5%である。昨年来からの安倍政権の経済政策アベノミクスによる株価上昇で、国内株式の比率は17%ぐらいまで上昇しているので、GPIFのポートフォリオが厳格に従来方針に沿って運用されるのであれば、5%のリアロケーション(再配分)、つまり5兆円以上の売り圧力が株式市場にかかることになる。このような状態を回避するために、GPIFの株式比率を高める議論が生じた側面があるのではないだろうか。

 仮に株式配分の上限が20%に設定されたとしても、必ずしも3兆円超の新しい資金が株式市場に流れ込むことにはならない。現在の水準から株式相場が2~3割上昇すれば、株式の比率を増やさなくても、GPIFの株式資産運用の比率は20%を超してしまい、それ以上の上昇は売り要因になるからだ。

日アフリカビジネスフォーラムの懇談会にてNEPAD(アフリカ開発のための新パートナーシップ計画調整庁)イブラヒム・マヤキ長官(中)と経済同友会アフリカ委員会の関山護委員長(丸紅副会長)

 また、「年金制度改革」か「新成長戦略」か、という二者択一に縛られるべきではなく、その両方を追求する意識変革が重要だ。経済成長率の高低シナリオによる将来の給付水準の変化が厚生労働省の公的年金の財政検証で公表された。持続的な経済成長が実現できれば、年金制度の健全化につながることは明白だ。

 年金は生きるための資金なので、その資金が持続的成長を促進する「生きた」運用への配分が高まることは賛成だ。ただ、国民の年金資金を使って株価を維持した90年代のPKO(株価維持策)のように近視眼的な株価操作策に決して甘んじてはならない。

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