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わたしの投資論

株の収入は本業のお笑いの1000倍です(井村俊哉)

 

2014/3/27

 お笑いトリオ「ザ・フライ」の井村俊哉氏は、昨年、株式投資で本業をはるかに上回る利益を上げた。中小企業診断士の資格を持つ異色の芸人の武器は、自分で決めた「常識破りのルール」だった。

 昨年、株式投資で得た利益は1800万円です。含み益も合わせると2000万円を超えます。自分でもびっくりしますが、本業の収入の1000倍近いです(笑)。総資産額は、株価によって変動はありますが3000万円弱ですね。いまは

 お笑いトリオ「ザ・フライ」の井村俊哉氏は、昨年、株式投資で本業をはるかに上回る利益を上げた。中小企業診断士の資格を持つ異色の芸人の武器は、自分で決めた「常識破りのルール」だった。

 昨年、株式投資で得た利益は1800万円です。含み益も合わせると2000万円を超えます。自分でもびっくりしますが、本業の収入の1000倍近いです(笑)。総資産額は、株価によって変動はありますが3000万円弱ですね。いまは長期保有している現物株が資産の半分ほどで、それを原資に信用取引でデイトレードをしたり、新規株式公開(IPO)の抽選に参加したりしています。

■芸人になりたくて投資家に

  • 井村俊哉(いむら・としや)氏 1984年、茨城県出身。2009年にお笑いトリオ「ザ・フライ」結成。11年にコントのコンテスト「キングオブコント」で準決勝進出。 

 投資歴は今年で10年目になります。僕が投資を始めたのは、芸人になりたかったからです。……といっても分かりませんよね。大学生のころ、お笑い芸人になりたかった僕は「芸人さんってどんな生活をしているんだろう」と思ってインターネットで調べました。すると、とあるサイトに「芸人は急にオーディションや仕事が入るから、アルバイトなんてできない。だからみんな株式投資をして生計を立てている」と書いてあったんですよ。いま思えばそんなわけないんですが、当時は芸人になりたい一心で「少しでも芸人さんに近づけるなら」と思いまして。

 そもそもお金もうけ自体が大好きだったので、抵抗なくスムーズに始められたというのはありますね。高校生の途中までお小遣いがもらえない家だったので、友達と遊びに行っても好きなものがなかなか買えなかったんです。だから自分でお金を稼ごうと思って、小学生のころからゲームの転売に精を出していました。近所のゲームショップの買い取り価格を全部書き出して、それを片手にそれより安く売っている店を見つけたら買って、2、3時間遊んだらすぐ売って……。やっていたことは株と一緒ですね。ゲーム自体よりもそちらの方に興味がありました。

 投資はデイトレから入りました。経済の知識もない状態で始めて、最初はちょっともうかったんですが、その後損切りできずに塩漬けにしてしまって、大損です。100万円ほどで始めたのが、半分以下になってしまいました。

 その後も細々と続けてはいましたが、本格的に再開したのは2011年の初めです。今度の理由は結婚したかったからです。その前年に妻と出会って、真剣に将来を考えたときに、売れない芸人のままではとてもじゃないけど相手の親御さんに「絶対売れるんでお嬢さんを僕にください」とは言えなくて……。芸人もやめたくなかったので、アルバイトなどではなく、株に真剣に取り組んでみようと思いました。勝算はありませんでしたが、ずっと続けていてイロハくらいは分かっているつもりだったので。

 ほどなく東日本大震災が起きました。その日もデイトレをしていて、売り建てをしていたのに株価が上がって、このままでは損が出てしまうと思っていたときに揺れが来ました。木造の家で、マウスをつかんで画面にかじりついていました。地震の瞬間には株価はすべて止まっていて、揺れが収まってから急に下がりだしたんです。そのときは、マイナスだった分がプラスになってほっとしていたんですが、そのあとテレビを見てただごとじゃないとようやく気づきました。妻と連絡が取れなかったので、それまでの邪念を振り払うように、妻の職場まで走っていきましたね。

 その後、相場は大きく落ち込みましたが、基本的にデイトレだったのでそこまで影響を受けることはありませんでした。ほとんどの銘柄が値下がりという状態が3日くらい続いたときにはぼうぜんとしていましたが、「こういうとき買わないでどうするんだ」と思って買った株が結構利益を出しました。

■高値で買って安値で売る

 デイトレで狙うのは、出来高とボラティリティーが高くて、個人投資家に人気がある銘柄です。朝8時半くらいに、売買注文の状況を見て買いが優勢なものをリストアップし、9時に市場が開いたら自分で決めたルールに従って売買していきます。ルールは経験を重ねながら自分なりに理論を立ててつくるのですが、必要があれば変えていきます。僕のルールは「高値で買って安値で売る」です。普通は逆ですよね。どういうことなのか、その日の株価が100円で始まった株で説明してみましょう。

 まず、株価が90円に下がったとします。セオリーなら安くなったここで買うのでしょうが、90円まで下がっているということは、この株はすごく調子が悪いんですよ。その日に限ればその株を持っている人は全員が損しているわけです。彼らは「早く上がってくれ」と焦っていて、ちょっとでも株価が上がったらストレスから解放されたくてすぐ売ろうとするんです。その結果、100円までは戻らずに、95円まで上がったとしてもすぐに売りをあびせられ、安値の90円を割り込んで85円、80円と下がっていくというのがよくあるパターンです。だから、ここでは買いません。

 では、いつ買うのか。値下がりした株の中には、不調をはねのけて直近の高値である100円まで戻る株もあります。90円台で買った人はみんなもうかっていて、はじめから持っていた人は少し上がったときにすでに売っているので、調子がかなり上がってきているといえます。僕はこのタイミングで買います。たいていは一時的にぐんと上がり、運がよければ110円、120円と伸びるので、そのまま放置します。その日の終値で売るか、買いたい人が多くて売買が成立しなかったら次の日に持ち越します。思惑が外れて伸び悩んだ場合は、100円まで下がってきたらそこで売って損を出さないようにします。

 ただ、90円から100円まで一瞬戻して、そこで買ったもののすぐ下がってしまうケースもあって、そういう場合は直近の安値である90円まで下がったら損切りします。損を抱えている人が多い状態になっているので、そういう調子の悪い株を持っているのは危険なんです。調子の悪い株は手放して、株価が上がる余地がある調子のいい株だけ残すのが鉄則です。セオリーに惑わされてこの逆をやってしまうと、調子のいい株は利益が出たらすぐ売ってしまって、調子の悪い株は逆に手元で塩漬けにしてしまうことになります。

■勝ってかぶとの緒を締められず

 株は人がやるものですから、心理学の要素が大きいと思います。株の知識以上に、そのときみんながどんな気持ちでいるかを考えることが大事です。その上で、ルールに従って淡々とやるのが一番いいんですよ。売りたい衝動を抑えてルールを守って、3日間で350万円利益が出たこともあります。ただ、分かっていてもなかなか守れないんですよね。先月も、ルールを破って1日で430万円損を出しました。その前日に50万円くらい利益を出していたこともあって、損切りをすべきところでつい調子に乗って、いつも取引する額の4倍くらいまでつぎこんでしまって……。調子に乗ると必ずしっぺ返しがあります。勝ってかぶとの緒を締められないんです。

  • 「株は人がやるものだけに心理学の要素が大きい」と語る

 11年に、粉飾決算が明らかになったオリンパス株で大変な思いをしたんですが、それも始まりはルールを破ったことでした。2500円くらいだった株価が、社長の解任騒動、そして会社が粉飾を認めると一気に500円台まで下がりました。アナリストは「上場廃止になるから株は売った方がいい」と言っていて、売り注文ばかりで取引が成立しない状態でした。でも、その後買い注文が膨らんできたんです。おや、これは取引が成立して一時的にぐんとリバウンドするんじゃないかと思って、思わず買い注文を出してしまったんですよ。取引は成立したものの、直後にまたどかんと売りが降ってきて、それ以降は売ろうとしても売れなくなってしまいました。次の日も取引が成立せず、この時点で、たとえ売れたとしてもほとんど資産がなくなってしまうような状況でしたが、もう仕方ありません。全部売って株もやめよう、と決意しました。

 それなのに、その次の日、いざ安値で取引が成立しそうになると急に気が変わりました。どうせもうやめるんだからどうなってもいいやと、売りを引っ込めてなけなしのお金で買い増しました。いくらでもいい、この日の終値で売って終わりにしようと。ところが、市場が閉まる午後3時の直前に誰かが急激に売り注文を出したせいで、取引が成立しなかったんです。こんなこと、ごくまれにしか起きないのに……。

 「ババをつかまされた」と思いました。上場廃止になるというのが定説でしたから。もう本当に吐きそうでした。その日はお笑いのライブがあって、やけになって好き勝手しゃべったらいつもより受けたんですけどね(笑)。事態が急転したのは「上場維持の可能性」という報道があってからです。今度は3日連続のストップ高。結局、何百万円もの損が、逆に80万円のプラスになっていました。

 ルールは完璧じゃないと分かっているからこそ「今回はルール通りじゃないんじゃないか」とつい思ってしまうんですよ。ルールを守って損をすることも当然あるので、その逆もあるだろうと……。でもそれが地獄の入り口なんですよね。

■バフェット流で長期投資も

 デイトレだけでなく、長期投資でもそれなりの成績を残しています。「投資の神様」ウォーレン・バフェット氏の本を読んで、ビジネスモデルにほれた企業の株は徹底的に持っていようと思っています。

 一番成功したのは、BtoBの電子商取引のプラットフォーム事業を手掛けるインフォマートです。株価は買ったときから8~10倍になりました。長期投資をするにあたり、配当利回りが高くて財務が健全な企業を探していたときに見つけたんですが、調べれば調べるほど魅力的だと思いました。特にプラットフォームというのが重要で、インフラみたいなものですから地盤がすごく堅い。法人相手なので、取引先が使っていたらうちも使わないと、という連鎖が起きて、一度がっちりマーケットを握ってしまえば他の企業が参入しにくいんです。

 インフォマートは12年に中期経営計画を発表していて、最終年度に純利益が2倍になると書いてあったんです。気になったので株主総会に参加して、質疑の時間に「どういう根拠があっておっしゃっているんですか?」と聞いてみました。すると「いまは旧システムと新システムの減価償却が重なって利益が圧迫されているが、最終年度には旧システムの方は償却が終わる」という説明だったんですね。これは間違いないと思って10倍くらい買い増すと、アベノミクスの勢いもあって株価は一気に上がりました。これだけ上がると、何度も売るタイミングはあったんですが、すごく好きな企業ですし、新たに売る理由が出てこない限りこれからも持ち続けると思います。

■NISAはIPOと絡める

 今年から少額投資非課税制度(NISA)が始まりましたが、CMなどを見ていると、それまで興味のなかった人がよく分からず始めて、すごく損をしてしまいそうで気がかりです。年初から始めた人、きっとたくさんいますよね。株価が下がって困っているんじゃないでしょうか。NISA自体は決して「初心者でも簡単」といったたぐいのものではありません。NISAのメリットは利益を出さないと得られないのに、肝心のもうけ方は誰も教えてくれません。期間が5年だけというのも、長期投資を促すには不十分です。損益通算ができなかったり、期間が終わる5年後にNISA口座から課税口座に移すときの取得額がその時点の時価だったりというのも不満です。薦められる使い道があるとすれば、IPOと絡めることですね。IPOは銘柄によってはほぼ確実に利益が出るので、抽選に参加して当選したらNISA口座で買えば、利益を非課税にできます。初心者のNISAはこの方法に尽きますね。

 投資というと「俺らは必死こいて働いているのに、何楽して稼いでるんだよ」と思う人もいるかもしれません。実際はそんなに楽ではないんですが、確かにキーボードをたたいているだけでお金が増えたり減ったりしているのは事実なので、それは認めましょう。ですが、楽してお金を稼いで、何が悪いんだと言いたいですね。僕はお金に色はないと思っています。だから、どう稼いだかよりも、どう使うかの方が圧倒的に重要です。僕なら家族や友人のためです。彼らに何かがあったとき、お金があれば助けることもできるじゃないですか。それがたとえ楽をして稼いだお金だとしても、です。それに、楽だというならやってみればいいじゃないかと思います。投資は誰にでもできるわけですからね。

(聞き手は電子報道部 森下寛繁)

「わたしの投資論」は随時掲載します。

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