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税を知る

働く妻、控除の重複が俎上に 「家族控除」の意味

2014/6/5

 税の制度を変える議論が活発になっています。それぞれの税がどんな考え方で課され、どんな仕組みになっているのかを知るために、青山学院大の三木義一教授に解説してもらいます。第1回は配偶者控除です。

■配偶者控除は憲法が保障する権利

 ――最近、「配偶者控除の見直し」という話をよく耳にします。そもそも配偶者控除とはどういうものですか。

配偶者控除の見直しが議論になっている

 配偶者控除を説明する前に、所得税の考え方を知ってもらった方がよいでしょう。所得税の仕組みは、所得そのものではなくて、その所得を得た人に課税をするという考え方を採用しています。たとえば家族を養っているAさんと独身のBさんを比べると、税を払う力はAさんの方が弱いといえるので、Aさんの税の負担は軽くしてあげなければいけません。

 そうやって、その人の事情を配慮するのがさまざまな「所得控除」です。小難しく聞こえますが、要するに所得税の基準になる金額を減らすということです。

 所得控除のなかで、所得がある人全員に適用されるのが「基礎控除」です。憲法25条が保障する「健康で文化的な最低限度の生活」に必要なお金には、課税できないことになっています。それが基礎控除で、年38万円です。

 一方で、所得のない配偶者や子どもにも、健康で文化的な最低限度の生活費を保障しないといけません。ここでは配偶者を専業主婦の妻としましょう。これらの費用を誰が払っているのかというと、夫ですよね。ですから、夫の所得から妻や子どもの「最低限の生活費」の分を引いてあげなければいけないのです。そのうち妻の分が配偶者控除、子どもなどの分が扶養控除で、いずれも基礎控除と同じ38万円です。

――配偶者控除には「専業主婦を優遇している」という批判もありますが、憲法が保障している権利なんですね。

 そうなんです。ただ、配偶者控除の歴史は複雑です。家制度の影響が色濃く残る昭和初期には子どもらのための扶養控除しかなく、専業主婦を養っても控除を受けることができませんでした。それが1940(昭和15)年、戦時期の「産めよ増やせよ」の号令の下で、扶養控除に妻を入れることで、税法上優遇したのです。

 1961(昭和36)年、妻の控除は配偶者控除として独立します。このとき扶養控除より金額を高くしたのですが、その差額を当時の議員が「内助の功」と表現しました。配偶者控除に、専業主婦を優遇するかのようなイメージがあるのにはこうした背景があります。いまは扶養控除も同じ額ですから、実際には誤解なのですが。

 配偶者控除を受けられるのは、妻の所得が年38万円以内の場合です。パートタイマーの妻の年収が103万円を超えると、この条件から外れます。これを超えないようにと妻が働くのをセーブしてしまうのが「103万円の壁」と呼ばれている問題です。

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