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税を知る

実は特殊な日本の相続税 理由は農家を救うため

2014/7/17

 2015年から相続税が増税されるのを受けて、相続への関心が高まっています。日本の相続税制は、世界でも類を見ない特殊な仕組みだということをご存じですか。意外と知らない相続と税金の関係について、青山学院大の三木義一教授に聞きました。

■憲法にはない「相続権」

 ――そもそも相続に税金がかかるのはなぜですか。親の財産を受け取るのは、何となく当たり前の権利のようにも思えますが。

 まず、「相続する権利」について考えてみましょう。日本国憲法には「相続権」などというものは書かれていませんよね。

親が亡くなったら財産を受け取れるのは当然?

 相続という制度は、憲法が保障する所有権に由来しています。所有権とは、自分の財産を自由に処分できる権利です。財産を残し、かつ遺言を残さなかった人は、この権利を死ぬまで行使しなかったことになります。そこで、死者の意思を推定して、処分権を代わりに行使するのが相続なのです。そして、生きていれば残された家族にこういうふうに分けただろうというのが、民法が定める法定相続分です。配偶者は2分の1、子どもは2分の1を人数で割った分……という、あれです。

 相続に税がかかるのは、一言で言えば不公平を是正するためです。親の財産を丸ごと引き継げるとなると格差が広がるばかりですから、税という形で社会に分配してもらってバランスを取っているのです。ただし、より具体的な根拠は、その国の相続税が「遺産税」か「遺産取得税」かによって違います。

 ――相続税にも種類があるのですね。

 遺産税というのは、残された財産に課税するという発想で、米英や戦前の日本の仕組みです。遺産が多いほど、税金も高くなります。

 遺産税を課す根拠は主に2つあるといわれています。一つは税の後払い理論と呼ばれるもので、「たくさん財産を残せたということは、生前に税をあまり取られないように要領よく立ち回ったはずなので、相続のときにその分まで精算してくださいね」という理屈です。自国の税制に不備があると認めるようなものですし、きちんと納税して財産を残した人にはたまったものじゃないですよね。

 もう一つは信託理論といって、「たくさん財産を残せた人は、社会に能力があると認められたからこそ財産を預けてもらっていたけれど、相続人はそうとは限らないので、社会がリスクを避けるために少し回収しますよ」ということです。これもずいぶん乱暴です。

 一方、現在の日本やフランス・ドイツなどが採用する遺産取得税は、遺産を受け取る人に課税します。遺産の総額にかかわらず、各自が受け取った額に応じて税がかかります。「親族とはいえ他人の財産を自分のものにできるのは、相続という国の制度のおかげなので、国に対して一部を還元してください」というのが、税を課す根拠です。手に入れた利益の分だけ税を納めるという意味では、所得税に通じるものがあります。

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