マネー研究所

カリスマの直言

蹴られた缶を拾い、政治動かすか米国民(渋沢健) コモンズ投信会長

2013/11/10

「米国株が高値圏で推移する市場は『冷静』なのか。『まったりした楽観』」でなければいいが……」

 ”Kick the can down the road(缶を道の先に蹴る)”という米国のことわざをご存じだろうか。我々が子どものころに遊んだ「缶蹴り」のことではない。缶を拾うことなく蹴飛ばし続け、物事を解決せず先延ばしにするという意味だ。

 いまの米国は、缶蹴りに例えれば与党である民主党と野党・共和党の「ねじれ議会」という鬼からにらまれているようなものだ。暫定予算案で折り合いがつかなくなり、10月1日から米連邦政府機関が一部閉鎖された。10月17日までに政府の債務上限が引き上げられなければ、債券の利払いが滞る可能性があった。つまり世界のマーケットは、米政府の債務不履行(デフォルト)という想像を絶する金融危機の崖っぷちに立たされたのだ。

 しかし切羽詰まった状況のなか、暫定予算と債務上限法案は10月16日に可決された。はたして、大事故をギリギリのタイミングで回避した政治家たちはヒーローだったのだろうか。そんなはずはない。「いいかげんにしろ」――これが米国民だけでなく、世界の多くが抱いた印象だ。

 解決したどころか、まさに様々な問題を缶の中に詰めて道の先へと蹴っただけなのだ。成立した暫定予算の期限は年明けの1月15日まで、債務上限引き上げも2月7日までの時限的な措置にすぎない。新年に再び缶のふたを開けたら問題はいつの間にか消えていた、という魔法のようなことは起きない。また、ふたを開けずにいれば封じ込めておけるということでもない。

 しかし市場は米政府の財政問題について「冷静に判断している」という解説が少なくない。9月中旬に0.01%だった米財務省証券(TB)の1カ月物金利はデフォルトが懸念された10月15日には0.30%以上に跳ね上がったが、暫定予算と債務上限法案が可決されたことで10月末には0.03%まで落ち着いた。3カ月物金利も10月末には0.04%と、9月から微増の水準で推移している。つまり来年2月7日に再び期限を迎える債務上限引き上げも「いずれ何とかなるだろう」と市場はみているのだ。

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