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日本の歩き方

富士山、東京都内にもあった 気軽に登れる50カ所 江戸時代の信仰の名残

 

2013/6/23

 世界文化遺産への登録で脚光を浴びる富士山。7月からの夏山シーズンには大幅な登山者増が見込まれているが、東京にも「小さな富士山」が点在していることをご存じだろうか。江戸時代、「気軽に登頂できる『模造』の山」として、造られたもので、今でも23区内に50以上が残っているとされる。本家の山開きを前に、「身近な富士」に足を運んでみた。

■山頂に金明水

富士塚について語る有坂蓉子さん(鳩森八幡神社)

 「ざーんげざんげ。六根清浄」――。聞き慣れない厳かな言葉が飛び交うなか、6月3日、渋谷区の鳩森八幡神社境内にある富士塚がいち早く山開きした。「千駄ケ谷富士」は、都内に現存するもので最も古いといわれる1789年の築造。手前に富士五湖を模したという池を配し、中腹にはクマザサが生い茂る。

 「庭園風で落ち着いた造り。お薦めの富士塚の1つ」。案内をお願いした富士塚愛好家の芸術家、有坂蓉子さんが熱っぽく語る。

 富士塚は、江戸時代に広まった山岳信仰「富士講」のシンボル。「なかなか行けないなら作ってしまえ」という江戸庶民のしゃれ心だ。当時は「江戸は広くて八百八町、講は多くて八百八講」といわれるほど、町中の至る所にあったが、講の衰退や宅地化などとともにその数も激減した。

 有坂さんによると、富士塚の基本構造は、麓の「胎内」という洞窟、5合目にある「小御嶽神社」、7合5勺の「烏帽子岩」、山頂の「奥宮」の4つ。このほかにも、各富士塚ごとに、てんぐの石像があったり、大沢崩れが再現されていたり。様々な個性があり愛好家心をくすぐるそうだ。

 標高5メートルほどという山頂までは、富士の溶岩で造られた階段を登って約2分。登り切ると、「本家」頂に湧く泉「金明水」が再現され、水がたたえられていた。「歴史を知れば、塚からいろいろなことが読み解ける」と有坂さん。金明水は、この塚を造った講が富士登山の際、山頂から「薬」といわれた水を持ち帰り、行けなかった講員に配っていた証拠だ。

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