女子高生の制服スカート丈、大阪なぜ長い
私服風アレンジやねん
10~20代向けファッションブランドが集まるあべのキューズモール(大阪市阿倍野区)へ向かう。大阪府内の私立高校1年生に聞くと「長い方が大人っぽい」「脚を出すのは恥ずかしい」との答え。グループ4人中3人が膝下15センチメートルほどだ。本来は膝丈だが、ファスナーを開けて緩め、ウエスト位置を下げて「無理やり長くしている」と明かす。
府立高2年生は「短いのは安っぽいし、昔っぽい」ときっぱり。10人以上に聞いたが、学校では長い丈が主流という。「冬は防寒、夏は日焼け対策」という説明にもうなずける。
校則に「丈は膝下」と明記
ひょっとして東京でも長い丈が人気なのかも。東京・渋谷へ出掛けたが、ミニが多いのは変わっていない。都内の私立高生は「長いとスタイルが悪く見える。膝上15センチメートルにハイソックスかタイツを履くのが奇麗な脚の黄金比。私服は長めのスカートが好きな子も、制服はミニが普通」と話す。東阪の違いはなぜか。
大手制服メーカー、トンボ(岡山市)で20年近く制服開発に携わるユニフォーム研究室の佐野勝彦主席研究員に歴史をひもといてもらった。「1990年代後半、ミニスカートにロングブーツ姿の歌手、安室奈美恵さんのファッションが一世を風靡。女子高生が制服に取り入れ、ミニスカートとルーズソックスが全国で流行した」。大阪も当時はミニが主流だったらしい。しかし流れが変わる。
「長いスカートは10年以上前、神戸の私立高の制服が『お嬢様っぽくてかわいい』と人気を集めたのがきっかけ。ここから大阪に広まりました」と佐野さん。当時、特に人気を集めた松蔭高校(神戸市灘区)は清楚(せいそ)な紺のワンピースで、「丈は膝下(床より約35センチメートル)」と校則に明記されている。「長い丈の流行は全国でも大阪、兵庫くらい。京都はミニです」と佐野さんは言う。
しかし、街頭の現役女子高生からは「神戸の私立校に憧れて」という声は聞かれなかった。大阪で長い丈が最も流行したのは6~7年前。今の「第2次ブーム」には別の理由があるのかもしれない。
アメリカ村(大阪市中央区)で、2人組の女子高生が「リュックサックを合わせて、私服みたいに古着っぽく着たい」「"ゆるふわ"に着るのがかわいい」と話してくれたのが気になる。私服の流行も影響しているのでは。
10~20代向けファッション誌「関西ガールズスタイルエクスプレス」編集部を訪ねた。「大阪では13~14年前、東京に先行してラフな着こなしのカジュアルファッションが広がりました」と山口幸一郎編集長。「重ね着が基本で、派手な色使いをうまく取り入れた個性的なおしゃれが上級者とされる。その対極が男性目線を意識した(露出の多い)ギャルやコンサバ(保守的)な服装。セクシーさは排除し、ゆるくふんわり着るのが人気です」と解説する。
東京は制服「かわいく」
山口さんが言う個性的な着こなしが特に目立ったのは、大阪で古着が流行した7~8年前という。長い丈の制服が全盛だった時期と重なる。「東京は制服をかわいく着るという観点で短くし、関西は制服を私服のように着こなすという発想では。積極的に自分らしさを出す姿勢が関西らしい」と山口さん。
最初は違和感を感じた長いスカートも取材するうち、おしゃれに見えてきた。東京の女子高生に大阪の写真を見せると「東京だと浮くけど、かわいい」と評判は上々。全国的なカジュアルファッションの流行を背景に、大阪の女子高生の着こなしが全国を席巻する日がくるかもしれない。
(大阪・文化担当 佐々木宇蘭)
[日本経済新聞大阪夕刊関西View2013年12月17日付]
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