女性の活躍、トップの意思表示必要 岡山高島屋社長
Wの未来 男も動く
――高島屋では女性の活用を積極的に進めています。
「女性が活躍するためには、まず最初にトップがはっきりと意思表示することが不可欠です。自然にまかせていたら活躍する女性は増えにくい。2007年に高島屋の執行役員になりましたが、辞令を受けたときは『なぜ私が』と思いました。ほかにも優秀な社員はいるのにと。しかし鈴木弘治社長は女性の管理職を増やすという方針を掲げ、それを実行したのです」
――岡山高島屋の社長就任にあたって、心がけたことはありますか?
「岡山高島屋に来たのはリーマン・ショック後の景気低迷で赤字が続いていた時期でした。就職してから店の異動は何度か経験していたものの、関西に来るのは初めて。知っている人もあまりおらず、市場や顧客の様子、課題など見当もつかない状態でした。従業員ともほぼ初対面でした」
「就任直後、従業員の中でプロジェクトチームをつくり、自分たちで問題点を洗い出し、解決方法を考えるよう指示しました。上から何をすべきか決めるのではなく、自分たちで考えた、ボトムアップのものでないと根付かないと思ったのです。2週間後に答申を発表してもらったのですが、見事なものでした。まず従業員同士であいさつをしようとか、午後3時と5時半に決まった音楽を流すのを合図にして身の回りの1カ所をきれいにしようとか。限られた予算のなかでできることから始めようと意欲を見せてくれました」
――岡山高島屋での女性活用の現状は。
「優秀な女性の人材はたくさんいたので、積極的な活用を進めてきました。就任前は11あるマネジャー職のうち女性は3人だけでしたが、新たに婦人雑貨とリビングの担当を女性に代え、今は約半数の5人が女性です。男性よりも女性のほうが、テナントの派遣販売員と話をしやすく、円滑にコミュニケーションできるなど、いい効果が表れています」
――岡山高島屋の会長でもある、両備ホールディングス(HD)の小嶋光信会長はどのような存在ですか。
「顧客と経営者、両方の視点からアドバイスしてくれます。社長に就任して最初の年の労使交渉で、賞与の大幅カットを決めました。私は従業員のために例年並みの賞与を出したいという気持ちでしたが、『経営者はクールな部分がないと会社が続かない』と諭されました。赤字続きなのに賞与を出していては会社は存続できません。会社が存続できなければ、従業員が職を失うだけでなく、取引先や地域社会にも影響が出てしまう、と言われました」
「『岡山の消費者は皆が知っている、本当にいいものを支持する』とも言われました。都心の店では、ライバル店よりも早く海外の新しいブランドを導入することを競っていましたが、岡山の消費者は最先端のものは求めていないと。実際、今回の改装で地下の食品売り場に入った明治屋にはたくさんの来客があります。百貨店のことはよく知っているつもりですが、中にいると見えなくなることがあると気づかされます。負けず嫌いなので、『何を言っているの』と思うこともありますけれど」
(聞き手は小国由美子)
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