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行動経済学からみた男女差 大竹文雄・大阪大教授

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 なぜ女性管理職は少ないのか? 人材の育て方が男女で異なるなど制度上の問題も大きい。だが行動経済学は別の要因にも着目する。それは男女の行動特性の差が影響しているという見方だ。もちろん個人差はあるものの、統計的に平均値を比べたときにみられる男女の振る舞いの違い。研究の最前線を大阪大学社会経済研究所の大竹文雄教授に聞いた。

――なぜ経済学が性差に着目するのですか。

「始まりは人種問題。戦後、米国で人種間の格差が問題になりました。肌の色で待遇や役割に差をつけるのは経済合理性があるのか? 経済学がその解明に挑みました。結論はもちろん経済合理性はないというもの。そこから派生して男女格差も研究対象となりました」

「賃金格差や女性管理職比率など当時も男女差がありました。こうした格差に経済合理性はなく、経済学はいずれ市場における自由競争が自然と男女格差解消に導くと考えていました」

「女性管理職の少なさを例に説明してみましょう。優秀な女性より、能力が劣る男性を管理職に登用すれば組織の生産性は下がります。能力に応じて女性を登用する企業と比べて効率性で劣るので市場競争で勝ち残れません。誤った戦略をとる企業は市場で淘汰され、女性管理職比率は自然と高まると思われていました。だが予想に反して格差はなかなか縮まらない。そこで経済学者は昨今、何か別の要因があるのではないかと考え始めました。そして人が行動の選択を迫られる時、何を選ぶかで男女に嗜好(しこう)の差があるのではないかと着目したのです」

――経済学者は性差の有無をどのように探っているのですか。

「男女の被験者を集めた経済実験が基本にあります。例えばスタンフォード大学のムニエル・ニーダール氏は、2ケタの足し算を被験者に課す実験を試みました。まずは被験者を何人かずつグループに分けます。制限時間内に足し算をいくつ正解できるかに個々の被験者は挑みます。その結果に応じて個人に報酬を支払うのですが、支払い方は2つ準備しました。1つはグループ内のほかのメンバーの正解数に関係なく、個々の正解数に応じて報酬を出す出来高方式。もう一つはグループ内で最も正解が多かった人にだけ報酬を出す。これは勝ち残った一人が報酬を総取りするのでトーナメント方式と呼びます」

「両方の報酬方式を経験した後、被験者はもう一度足し算に挑戦する。この時、どちらの方式で報酬を受け取りたいかを被験者自身に選ばせました。すると男性はトーナメント方式を好み、女性は出来高払い方式を選ぶ傾向が統計的に明らかになりました。つまり男性の方が他者との競争を好むことが示されたのです。報酬方式を選ぶ際、グループ内で自分が正解率で何位になるかも予想してもらいました。男性は実際の結果より、高い順位を予想する傾向が合わせて分かり、これら実験を通じて男性の自信過剰傾向が競争を選ばせると推測されたのです」

――競争を好むか否かが管理職比率にどう影響するのですか。

「組織で昇進昇格するには出世レースにまず参加しなければなりません。男性が積極的に出世レースに加わろうとするのに対して、女性が競争を回避すれば、勝者は自然と男性比率が高くなります」

「もちろん女性管理職が少ないのは性差だけが理由ではありません。人材育成に男女差があることも見過ごせません。女性は結婚や出産をきっかけに仕事を辞める可能性が高いといわれてきました。男性より辞める確率が高い女性に企業は教育コストをかけるのをためらいます。優先的に育てられるので、女性より男性が管理職に昇進・昇格しやすいのも現状です」

――女性管理職比率が少ない現状は性差が根底にあり、致し方ないということですか。

「誤解しないでほしいのですが、現状を肯定するために性差を研究しているわけではありません。本来男女で仕事のパフォーマンスはそう違わないはずなのに、昇進結果に格差が残っています。見方を変えれば管理職で活躍できるはずの優秀な女性が存分に能力を発揮できていないということです。それは社会全体でみれば損失です。経済学が性差に着目したのは、男女に格差が生じる原因を突き止め、必要ならば格差解消策を探るためです」

――性差は生まれつき身についているのですか。

「原因は生来のものと生後の環境がつくるものが入り交じっています。競争を好むか否かという経済実験では別のおもしろい研究結果もあります。米国や日本など先進諸国では男性の方が競争を好む傾向が共通してみられます。ところが、女性が伝統的に経済的な決定権を握っている母系社会のインドのカシ族を対象に同様の実験をしてみたら、女性が男性より競争を好む結果が出ました。つまり生来の性差だけでは説明できず、生後の文化的背景が無視できないということです」

「興味深い結果はほかにもあります。グループの男女構成によって、出来高方式とトーナメント方式のどちらを選ぶかに違いが出ます。男女の混合グループと女性だけのグループで比較すると、メンバー全員が女性のグループではトーナメント方式を選ぶ女性が増えます。競合相手に男性がおらず女性だけだと分かると、女性も競争嗜好が高まるということです。女子校と共学に通う女子学生を比較した実験で、女子校に通う女子は競争を好む傾向も明らかになっています」

――競争を好むか否か以外にも、行動特性の性差はありますか。

「男性は競争相手の有無がパフォーマンスにも影響するといわれています。徒競走をするとき、1人で走っても2人で競争させても女性はタイムにそう変化はありません。だが男性は1人で走るより、2人で走った方がタイムは良くなります」

「投資に対する嗜好の違いも指摘されています。例えば今日1万円をもらうか、1カ月後に1万1千円をもらうかを被験者に選ばせます。利率を考慮すれば1カ月後に1万1千円をもらう方が得のはずです。ところが男性は今日の1万円を選び、女性は1カ月後の1万1千円を選ぶ傾向がみられます。女性は将来をちゃんと考える傾向があり、忍耐強いともいえるでしょう」

――研究成果は実社会にどう生かせるのですか。

「経済学が明らかにした性差はあくまで平均値の違いです。個々でみれば性差より個人差が大きいから、考えすぎることはありません。ただ国レベルなどマクロ視点でとらえれば、その差は確実に顕在化するので、影響を取り除きたいなら対応が必要です」

「例えば女性管理職比率の低さを解消したいなら、クオータ制の導入が考えられます。自然に任せていては女性は男性と争うのを避けてしまいます。あらかじめ女性枠を確保すれば、女性もチャレンジしやすくなります。クオータ制は能力が劣る女性にゲタを履かせる施策と思われていますが、それは誤りです。競争を回避する女性の特質を考慮すれば、能力はあるのに競争に尻込みしがちな女性の背中を押す工夫だとみるべきでしょう」

(聞き手は編集委員 石塚由紀夫)

 大竹文雄氏(おおたけ・ふみお) 1961年生まれ。83年京都大学経済学部卒。2001年より大阪大学社会経済研究所教授。「日本の不平等」(日本経済新聞出版社)、「競争と公平感」(中央公論新社)など著書多数。

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