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時代遅れの主婦優遇 「片働き」リスクも意識を  須田敏子氏に聞く Wの未来 やればできる

2014/1/18

 専業主婦世帯は税制や社会保険など様々な優遇を受けている。これらは専業主婦世帯が日本の家族形態の中で主流だった時代の名残だ。いまや世帯数では共働き世帯が専業主婦世帯を逆転している。社会構造の今後のあるべき方向について、青山学院大大学院国際マネジメント研究科の須田敏子教授に聞いた。

――2013年版男女共同参画白書によると、共働き世帯が1054万世帯に上るのに対して専業主婦世帯は787万世帯。1997年に逆転して以来、その差は開く一方です。

青山学院大学大学院国際マネジメント研究科教授、須田敏子氏

 「政府統計などではいまだに、外で働く夫と専業主婦の妻、そして2人の子どもの計4人が『標準家庭』とされることが多いです。でも数の上ではすでに夫婦共働き世帯が標準となっています。そもそも公的な制度は個人のライフスタイルや価値観に介入すべきではなく、制度は中立でなければなりません。なのに専業主婦優遇策は働かない方が働くよりも得する設計になっています。事実上、働かない方へ誘導する仕組みとなっていて、現行制度は中立的ではありません」

――若い女性たちの間では専業主婦志向が高まっているとも聞きます。

 「働くのは大変なこと。どちらかを選べと言われれば専業主婦を選びたくなる気持ちも分かります。でも専業主婦世帯を社会が容認できたのは過去のこと。日本は今、財政破たんリスクを抱えています。働きたい人が働いているだけでは社会保障制度が成り立ちません。少子高齢化も加わり、性別にかかわらず誰もが働き、税金や社会保険料を収める社会にシフトしていかなくてはいけない状況です。専業主婦優遇策があるから、それに乗ろうとする女性も出てきます。優遇策を見直し、頑張って働いた人が得する仕組みに変えなければ、働く女性は増えていきません」

 「女性たちには片働きリスクも意識してほしいです。夫だけの収入に頼るのは長い人生において危険すぎます。大企業でも社会変化に追い付かず、経営破綻する可能性があります。現在は夫が安定した収入がある正社員であるにしろ、生涯その地位を守れる保障もありません。夫が若くして亡くなったり、病気で働けなくなったりする可能性だってゼロではないのです。女性も自ら働き、自ら稼ぐライフ設計が欠かせません。夫婦共働きの方が家庭のリスク分散もできます」

――とはいえ専業主婦も家庭や地域で様々な役割を負っています。こうした役割を放棄して働くわけにもいきません。

「頑張って働いた人が得する仕組みに変えなければ、働く女性は増えない」と語る須田氏

 「まず家事に関していえば、日本女性は時間をかけすぎだと思います。かつて英国に留学していましたが、英国の共働き夫婦は家庭での食事や洗濯に外部サービスを上手に使っていました。なんでも自分で完ぺきにこなそうとせず、楽できるところは手を抜く意識を持ってもいいと思います」

 「もっとも最大の問題は長時間労働にあります。日本ではフルタイム勤務者は残業が常態化しており、家庭や地域活動に費やす時間がほとんど取れません。そのしわ寄せが専業主婦に来ている面もあります。長時間労働を見直すと同時に、フレックスタイムや在宅勤務など柔軟な働き方を企業が採用すれば男性ももっとプライベートな時間を取りやすくなり、家事や地域活動も担えるようになって、女性の社会進出は今より加速するでしょう」

(聞き手は編集委員 石塚由紀夫)

 須田敏子氏(すだ・としこ) 1958年生まれ。日本能率協会グループ勤務を経て、英国に留学。2004年英バース大で博士号取得。05年現職。

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