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発行部数300万部の「週刊少年ジャンプ」を支える熱い女子 日経エンタテインメント!

 

2012/11/5

 「週刊少年ジャンプ」といえば、『ONE PIECE』や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など国民的人気作を生み出す、売り上げナンバーワン・マンガ誌。“少年”と銘打ってはいるけれど、実際の読者は女性が半数近いといわれる。なぜ「少年ジャンプ」は女子にも愛されるのか。

 「週刊少年ジャンプ( 以下、ジャンプ)」は、少年誌のみならず、全マンガ誌で最多の売り上げを誇る。一般に「少年誌」というと、10代の少年を

 「週刊少年ジャンプ」といえば、『ONE PIECE』や『こちら葛飾区亀有公園前派出所』など国民的人気作を生み出す、売り上げナンバーワン・マンガ誌。“少年”と銘打ってはいるけれど、実際の読者は女性が半数近いといわれる。なぜ「少年ジャンプ」は女子にも愛されるのか。

 「週刊少年ジャンプ( 以下、ジャンプ)」は、少年誌のみならず、全マンガ誌で最多の売り上げを誇る。一般に「少年誌」というと、10代の少年を主要な読者層としてターゲッティングしているイメージがある。しかし、実は「ジャンプ」読者はほかの雑誌と比べても女性読者が多い異色の存在だ。下に掲載したマンガの単行本売り上げデータを見ても、女性読者比率が高い作品が少なくないことが分かる。

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■「ジャンプ」女子の系譜

 数ある少年誌の中で、なぜ「ジャンプ」は女子の引きが強いのか。ジュンク堂書店で少年マンガを担当し、自身も少年マンガ好きという山口由香里さんは「『ジャンプ』には脈々と続いてきた、“女子好き(女子から好かれる)”の系譜がある。それが成熟したのが今という印象」と語る。

 女子好きの先駆けとなった作品は、1977~1981年に連載された車田正美によるボクシングマンガ『リングにかけろ』だ。頂点を目指す少年ボクサーたちが、必殺技を駆使して戦うバトルが少女たちの心をもつかみ、女性読者層の拡大に大きな役割を果たした。

 その流れをより確かなものにしたのが、1981~1988年連載の『キャプテン翼』だ。この作品は1983~1986年に放映されたテレビアニメで一気に人気爆発。テレビ東京のアニメ視聴率の最高記録(21.2%)は、現在も破られていない。

 さらに、「コミックマーケット」を中心とする同人誌市場を肥大化させるなど、広範囲な影響をもたらした。その後も『聖闘士星矢』『幽☆遊☆白書』『るろうに剣心』『封神演義』『テニスの王子様』など、女性の心をとらえる作品を常に輩出し続けている(年表1参照)。

  • 年表1

 これら“女子好き”とされる作品には、3つの共通点がある。それは「イケメン」「濃厚な人間関係」「必殺ワザ的演出」だ。

 まず、イケメンの要素はとても分かりやすい。男性読者が美女・美少女を好むのと同様、女性読者も美男・美男子を好むのは当然だ。もちろん、少女、女性向けのマンガでもイケメンは登場するが、スポーツマンガのように何十人もそろうことはまずない。しかも、女性向けマンガでは、「イケメン=ヒロインの恋愛対象」と相場が決まっている。恋を全面的に描かない、「(きっと彼女がいないだろう)フリーなイケメン」が、多数登場するのは、少年マンガならではだといえる。

 2つめの女子が好む「ジャンプ」のマンガの人間関係については、友情や確執、葛藤などといった要素がある。ここで重要なのは、ジャンプでは「異性との恋愛」は、ほぼ触れられないことだ。登場人物の特徴として、「スポーツやバトルでの勝利」など、恋愛以外の目的に一直線なキャラクターが多い。性的興味についてはサバサバしていて無頓着。この点において、ラブコメ色の強い「週刊少年サンデー」や、より肉食系の「週刊少年マガジン」掲載のマンガ作品とは一線を画している。言い換えれば、恋愛が描かれないことにより、男同士の様々な関係性について、女性読者がイメージを膨らましやすい土壌が作られているわけだ。

 3つめの「必殺ワザ」は必須というわけではないが、週刊少年ジャンプに掲載されているかなりの作品に共通する要素である。一般的に女性は、スポーツマンガにおいても各競技の細かなテクニック解説については興味を示さない。それより「とにかくスゴい!」ことが伝わる派手な必殺ワザのほうが効果的だ。歌舞伎における「見得(みえ)」のようなものだと考えればいい。

 ところで、最近の「ジャンプ」本誌では、『ニセコイ』『恋染紅葉』『パジャマな彼女。』と、1人の男子と複数の女子の関係性を描く、女子ウケの悪い、“ハーレムラブコメ系”を集中的に投入している。この傾向は、女子売れに偏り過ぎた誌面に、もう一度少年読者を呼び戻す動きのように見える。女性読者の過剰な浸食は『“少年”ジャンプ』の看板をおびやかしかねないのだ。

【女子の好きな「週刊少年ジャンプ」 『黒子のバスケ』】

 着実に人気を得てきた『黒子のバスケ』が、2012年4月からアニメ放送が始まり一気にブレイクした(放送は9月で終了)。

 圧倒的な才能を持つ「キセキの世代」と呼ばれる男子高校生たちを中心に、各校が激闘を繰り広げていくバスケットボールマンガ。「少年ジャンプ」のバスケマンガといえば、1990~96年にかけて連載された国民的ベストセラー『スラムダンク』が思い浮かぶ。『スラムダンク』はリアリティーのある骨太な描写で魅了したのに対し、『黒子~』は現実離れしたスーパープレーの描写が多い。

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■アニメ放送後、女子支持爆発! 人気のポイントは?

 主人公・黒子テツヤの武器「生来の“影の薄さ”を生かした見えないパス」をはじめ、「命中率100%の超長距離3ポイントシュート」「他人の技を一目で自分のモノとする模倣(コピー)能力」など、現実では不可能に近い“必殺技”を持っている。この点は、派手な必殺技連発で女子ウケした『テニスの王子様』に通じる。

 各登場人物の造形が、事細かく作り込まれているのもポイントだ。例えば「キセキの世代」のシューター・緑間は、プライドが高く知的なイケメンながら、星占い好きでその日のラッキーアイテムを必ず持ち歩く。キュンとくるギャップを含め、バスケに関係ない特性まで掘り下げられている。

 さらに、ライバル同士の相克、チームメートの信頼関係、日常シーンでのたわいないふざけ合いなど、キャラ同士の細かい人間関係が挟み込まれる。「登場人物の関係図を作った場合、その関係性や結びつきが複雑であればあるほど、女性の妄想が入り込む余白がある」と、ジュンク堂書店の山口由香里さん。「バスケ部の監督は女性だけど、女を感じないキャラクター。ヒロインがいないから読者がヒロイン。自由に想像を膨らませられる」とも。

 個性的でカッコいい男子たちが大量に登場。彼らの人間関係を細かく描写し、胸のすく痛快な必殺技で各キャラの見せ場を演出する。女子がハマらないわけはない。

(ライター 芝田隆広、平山ゆりの)

[日経エンタテインメント!2012年10月号の記事を基に再構成]

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