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左右バランスを整えて腰痛解消 ゆがみリセット学(5) 竹井仁

 

2012/3/4

 「いつも片側だけ腰が痛い」とか、「ぐいっとひねると腰にずーんと響く」といった慢性腰痛には、体の「左右差」が関わっています。腰骨の高さが違う、横座りが片方だけうまくできない……。思いあたるあなたは、今回の体操がしっかり効くタイプ! 左右差によって硬くなった筋肉を伸ばし、弱くなった筋肉を鍛える体操をしっかり続ければ、つらい腰痛も根本解決が可能です。左右差が整えばウエストやお尻もすっきりし、O脚も改善

 「いつも片側だけ腰が痛い」とか、「ぐいっとひねると腰にずーんと響く」といった慢性腰痛には、体の「左右差」が関わっています。腰骨の高さが違う、横座りが片方だけうまくできない……。思いあたるあなたは、今回の体操がしっかり効くタイプ! 左右差によって硬くなった筋肉を伸ばし、弱くなった筋肉を鍛える体操をしっかり続ければ、つらい腰痛も根本解決が可能です。左右差が整えばウエストやお尻もすっきりし、O脚も改善するなど、うれしい変化もたくさん!

  • 腰の片側だけが痛む?  ひねったときに腰が痛む?  腰の決まった側だけが痛かったり、ひねったときに痛むのが「左右バランスの崩れ」による腰痛の特徴。これに対して「前後バランスの崩れ」による腰痛は腰全体が痛む。もちろん、2タイプの腰痛が同時に起こることもある。
 特別何かをしたわけではないのに腰がズキズキ痛む、常に違和感を感じる、といった慢性腰痛。そのうち、前回は「姿勢」が原因で起こる腰痛についてお話ししました。体の後ろ側の筋肉が頑張りすぎて硬直し、前側の筋肉が弱くなった「反り腰」姿勢が主な原因でしたね。これは、いわば「前後バランス」の崩れの表れ。今回はもう一つの腰痛の原因、「左右バランス」についてお話ししましょう。

 腰の高さが左右で違うなど、左右バランスの崩れがある人はとても多いですね。前後バランスの崩れによる腰痛は「腰全体が痛い」のに比べて、左右バランスの崩れによる腰痛には、「片側だけ」とか「ひねったときに特に痛い」という特徴があります。今は腰痛でなくても、左右のバランスが崩れている人は、ちょっと運動したり疲れがたまったりすると、腰痛になる可能性が高いんです。

 左右差は、鏡でチェックしてみましょう。まずは骨盤の高さから。骨盤が高い方の腰が痛む、という特徴があります。

骨盤の左右差はO脚や足首にも影響

 なぜ骨盤が高いほうの腰が痛むのか。発端はお尻の外側にある「中殿筋」が弱くなることにあります。中殿筋は脚の付け根の股関節を開く働きをし、立ち方、スポーツの影響などで緩みやすい筋肉。股関節を開くだけでなく、立っている状態では骨盤を地面方向に引っ張るようにも働きます。だから、中殿筋が弱ると骨盤が上に持ち上がるんです。

 すると一気に負担が増すのが、骨盤から腰椎をつなぐ平行四辺形の「腰方形筋」。中殿筋が働かないものだから、腰方形筋ばかりが頑張って、骨盤の位置を安定させようと硬直した結果、痛みが現れます。

 骨盤の高さの差による影響は、腰だけにとどまらず、ひざや足首にまで及びます。骨盤の片側が上がると、同じ側の股関節は、その分閉じ気味に。すると内ももの内転筋が引っ張られ、ひざは外側に向き、片脚だけO脚がひどくなる。O脚側の足裏は、外側で重心をとるようになるから真っすぐ立てず、足をくじきやすくなります。

 一方、反対側の足は内側に重心がかかって土踏まずがつぶれ、扁平足や外反母趾になりやすい。「同じ側の足ばかりくじく」という人は、腰から治さないと良くならない。左右差は全身に影響するんです。

片側だけ痛む人は… 腰骨の高さが左右で違う可能性大  

  • 骨盤の高さの左右差は、腰骨の高さでチェックできる。鏡の正面に足をそろえて立ち、腰骨に手を当てて左右の高さに差がないかチェック。写真を撮ってもらい、客観的に確認するとよくわかる。高くなっている側の股関節の横にある「中殿筋」が弱くなると、骨盤から腰椎にかけてつながっている「腰方形筋」が働きすぎて硬く短くなって、痛みを生じる。骨盤が高い側はO脚になりやすく、足首をくじきやすい。ちなみに、両足を広く開いて立つと骨盤の左右の差が少なくなる。チェックの際に試してみよう。

 もう一つ、チェックしたいのが、肋骨の左右差です。実は、片側だけが大きく開いている人がいるんですよ。肋骨が大きく開く理由は、腹筋の一つである「外腹斜筋」が弱くなること。外腹斜筋といえば、くびれを作る筋肉としておなじみですが、これが腰痛にも大きな影響を与えます。外腹斜筋は、お腹の外側から内側に斜めに走っている筋肉で、肋骨を内側に引き寄せ、その奥にある内臓を守るという役目も担っています。外腹斜筋の肋骨を引き寄せる力が弱いと、正面から見てもわかるくらい、肋骨が上に持ち上がってしまう。すると、肋骨が開いている方へひねったときにひねりを止める力が足りず、腰が回りすぎてしまいます。その結果、腰椎の関節がすべって摩擦が生じ、炎症を引き起こす。これが、「ひねったときに痛くなる腰痛」の正体です。

ひねると痛む人は… 肋骨の開きが左右で違わないかチェックしよう

  • 肋骨は本来、体の中心から左右それぞれ35~45度ほどの角度で開いているのが標準。ところが外腹斜筋が弱いと肋骨が上がってしまい、50度以上になることがある。肋骨の一番下のラインを指でたどって鏡に映すと、左右差のある人は手の高さにずれができるはず。こうした人は、肋骨が開いている方へ体をひねると体を大きくひねれるが、背骨の下の方の腰椎に痛みが起こる。

 外腹斜筋が弱くなることに加えて、股関節が硬いと、さらにひねりによる腰痛が悪化しやすい傾向があります。

 実は、体をひねるときに重要な役割を担うのが股関節。例えば体をひねると、骨盤が後ろに倒れると同時に、股関節では太ももの大腿骨が内側に回ります。この柔軟な股関節の動きがあってこそ、腰の関節に負担をかけずに体をひねることができる。ところが、股関節の動きがぎこちないと、腰だけで無理やりひねるから、関節が回りすぎて腰痛になるんです。

 ひねりの動作が多いゴルファーや野球選手が腰を壊す要因になるのも、股関節の硬さです。しばらく休養していた選手が復活したときのフォームががらりと変わっているのをテレビで発見しては「お、股関節の動きを改良したな!」なんていいながら私は眺めています(笑)。

 腰痛と関係の強い股関節の柔軟性は、正座から姿勢を崩して、お尻を落として足を横に出す「横座り」で簡単にチェックできますよ。左右ともに横座りがスムーズにできるならOK。しかし、例えば右側のお尻をぺたっと床につける横座りはOKでも、左側のお尻をつける横座りが苦手な人は、右脚の股関節が硬い、といえます。

崩れた筋バランスを整えれば腰痛は軽くなる

 腰痛の原因となる「左右差」についてひととおり説明が終わったところで、対策へと進みましょう。今回は、腰痛の原因となっている左右バランスを調整していくのが目的。だから、事前に必ず自分の左右差チェックを行い「自分はどちら側をやるべきか」を確かめてくださいね。

 まず、腰骨の高さに左右差がある人。頑張りすぎの腰方形筋を緩める「ごろ寝ストレッチング」から始めます。ウエストの下に丸めたバスタオルを入れることで、上側の腰方形筋のみが効果的にぐーんとストレッチされます。ここが硬くなっている人ほど「少し痛い」と感じるかもしれませんが、30秒間じっくりと伸ばしている間に、ふわーっと心地良くなってきます。

片側が痛む人に(1) 腰方形筋を伸ばす「ごろ寝ストレッチング」

  • チェックで腰骨が高かった側、あるいはいつも腰が痛む側を上にして横向きに寝転ぶ。ウエストの下に直径15cmほどになるよう丸めたバスタオルを挟みこむ。床についた側のひざを軽く曲げ、上側の脚は伸ばす。手を頭の上に伸ばし、腰の側面をぐーっと気持ち良く伸ばす。30秒×3回行う

 続いて、弱くなっている中殿筋を鍛える「脚上げ体操」を。この動きの最大のポイントは、脚を上げるときに骨盤を引き上げないこと。骨盤が上がってしまうと、中殿筋を働かせることができず、全く意味がなくなります。中殿筋が弱い人は脚を上げようとすると骨盤が上がってこようとしますから、手で骨盤を触り、しっかりモニターして骨盤が上がらない範囲で脚を上げ下げしましょう。脚は後ろ方向に上げるよう意識すると、中殿筋にぐっと刺激が加わります。その際には、足の小指を外側に向けることも意識しましょう。最初は5回を3セット。最終的には20回を3セットできるように続けます。はっきりいって筋トレです(笑)。でも、お尻が引き締まるというご褒美が確実に得られる体操ですよ。

片側が痛む人に(2) 中殿筋を鍛える脚上げ体操

  • 「ごろ寝ストレッチング」と同じ姿勢をとりながら今度は脚を上げる。上側の骨盤を手で触りながら、骨盤が動かない範囲で、脚をやや後ろ方向にひき上げる。高く上げようとすると骨盤が動くので注意。引き上げた状態で5秒キープし、5回×3セット行う。最終的には20回×3セットを目指そう。

 

 続いて、ひねったときに腰痛がある人。まずは左右の横座りチェックをしましょう。どちらでも座れる人は股関節の柔軟性は合格なので、「クロス腹筋」だけでOK。腰をひねりすぎる原因である外腹斜筋の衰えを、ひねる腹筋によって鍛える。非常にシンプルな方法です。

ひねると痛む人に(1)外腹斜筋を鍛えるクロス腹筋

  • あおむけになり、両ひざを立てる。ひねると痛い側の手を、反対側のひざの外側に伸ばすように、体をひねるように起こす。この状態で5秒止める。5回×3セット。最終的には20回×3セットを目指す。ただし、腰痛がひどい場合、この腹筋は控える。

 そして、横座りのどちらかが苦手だった人。ほとんどの人はこのタイプでしょう。苦手だった側はどちらでしょうか。例えば、左にお尻を落としたときの横座りがきつい人は、右脚の股関節が硬くなっています。だから、右脚を軸にした「フラミンゴ体操」を行いましょう。

 足の裏をしっかり地面につけて、もう一方の足は上げます。つま先が地面につくくらい、ちょっと上げるだけでもいいです。支える側の脚は1本の棒であると意識して。骨盤と上体が一体となるよう意識し、股関節だけを使って体を回します。股関節がしなやかに動くようになるのが第一の効果。そして、体をひねらないように固定することで、体をひねりすぎないように止める外腹斜筋の力を鍛えるという第二の効果も得られます。外腹斜筋を鍛えれば、ウエストも引き締まりますよ!

ひねると痛む人に(2)<横座りが苦手な場合> 股関節の可動域を広げるフラミンゴ体操

  •  壁や棚など支えになるもののそばに立つ。「横座りチェック」で、硬かった側の脚を軸脚に片脚立ちし、軸脚の側の手で支えを持つ。反対側の脚は軽く上げる。骨盤と上体を一緒に動かし、腰をひねらないよう意識しながら股関節だけを使って体を内側にひねる。軸脚のひざは正面を向いたまま。ひねりきったら5秒キープして戻す。5回×3セット。最終的には20回×3セットを目指す。左にお尻を落としたときの横座りが難しい場合、右脚を軸脚にする

 腰痛は、体の筋バランスが崩れているという大事なサイン。とにかく同じ姿勢をとり続けないこと。かがむ姿勢が続いたら腰を反らせる。逆に、反らせることが続いたら丸めてストレッチをする。体が必要としている動きへの感受性を、高めていきましょう。

【今回のポイント】
左右バランスの崩れをリセットして腰痛を根本から解消
 カチカチの腰方形筋を伸ばし、弱った中殿筋を鍛えれば片側だけの腰痛も軽くなる。一方、弱った外腹斜筋を鍛えて股関節の動きを良くすれば、ひねると生じる腰の痛みも改善できる。

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竹井仁(たけい・ひとし)
 首都大学東京 健康福祉学部理学療法学科准教授。1966年、愛媛県生まれ。筑波大学大学院修士課程(リハビリテーション)修了。2002年、医学博士(解剖学)学位取得。理学療法士。医学的知識に基づいた筋力トレーニング、リハビリテーションを研究する。著書に『不調リセット』(ヴィレッジブックス)などがある。

(ライター 柳本操、構成/日経ヘルス 宇野麻由子)

[日経ヘルス2011年11月号の記事を基に再構成]

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