キャリアは自分で築く 会社に委任する時代は終わった
「自分のキャリアを自分で創っていく時代がいよいよ本格的に始まる」――最近、そう感じる機会が増えました。
終身雇用があるべき姿とされていたこれまでは、会社にキャリア形成を"委任"できました。雇用が保証され、仕事が割り振られ、指示のままに様々な部署を経験しながら定年を迎えるのが理想とされていたのです。会社も充実した企業年金や退職金などで、こうした労働に報いてくれました。
しかし最近は、終身雇用制度もじわりじわりと崩れ始めています。名前の通った大企業でもリストラが敢行され、「男性・正社員・40代」でさえ対象になるケースが出てきており、誰もが主体的にキャリア形成を考えなければならない時代です。
私は「MY CHOICE」というキャリアインタビューサイトを運営し、自分の意思で仕事や会社を変えながらキャリアを創っている人たちを紹介していますが、サイトを開設した背景にはこうした問題意識があります。
そう聞いて、「会社に頼れなくなること」に不安を感じる人もいるのでしょうが、むしろ会社にキャリア形成をゆだねること、それ自体の"リスク"に女性ももっと目を向けるべきです。
1986年の男女雇用機会均等法施行で与えられた「男性と同等の地位」は、「男性並みに働くこと」が前提条件でした。けれど、男性の長時間労働や転勤は、家事や育児を全面的に担ってくれる"専業主婦"がいればこそ成立していたものです。でも、"専業主夫"をもつ女性はほとんどいませんよね。
そうなると、男性と同等の地位を与えられて働けと言われても、生活が成り立たないわけです。実際に子どもを産みたい時期に産めない、介護が必要なのに両親の面倒を十分に看ることができない、転勤で家族がバラバラになってしまう、など自分の望む人生を実現できていない人がたくさんいます。
育児や介護の話だけではありません。私は旅行が大好きなのですが、モルディブビーチがどれほど楽しめるか、30代と定年後の旅行では、楽しみ方も全く違うはずです。
人にはタイミングを逃すと経験できない「人生の醍醐味」があります。「今やりたいことを我慢することで、将来いい暮らしができるはず」と考えている人には、そのことにもっと敏感であってほしいと思います。
「自分のキャリアを自分で創っていく時代が始まった」と冒頭にお伝えしました。この時代の流れは、主体的なキャリア形成へとシフトするチャンスです。「子どもが小さい今は家族との時間を大事にしよう」、「この2年間は仕事に集中しよう」など、個々人が希望に沿って選択ができるキャリアが理想的ですよね。
その実現のために一番必要なものは何か。それは「自分の人生の主導権を握るのは、ほかの誰でもない、自分自身である」という決意です。
この人に聞きました
キャリア形成コンサルタント。93年からマッキンゼー・アンド・カンパニー日本支社に17年在籍。コンサルタントとして働いたのち、人材育成および採用マネージャーを務め、11年より独立。現在はキャリアインタビューサイトMY CHOICEを運営し、リーダーシップ教育やキャリア形成に関する啓蒙活動を行う。著書『採用基準』(ダイヤモンド社)は10万部を突破。
(ライター 田中美和)
[nikkei WOMAN Online2013年5月15日付記事を基に再構成]
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