1秒30枚も 連写アプリで撮影チャンスを逃さない
報道カメラマンのiPhone撮影塾
逮捕された容疑者を取り囲む無数のフラッシュとシャッター音――。映画やドラマでもよく見られる報道カメラマンの姿だが、こうした現場をiPhoneで鮮明に再現するのは難しい。なぜならiPhoneに内蔵された標準カメラアプリには「連写機能」が付いていないからだ。またシャッターを押してから切れるまでの微妙なタイムラグもあるため、高速移動する被写体を撮るのは至難の業だ。
■連写カメラアプリで1秒間に30枚まで撮影
そんなときに活躍するのが「連写専用カメラアプリ」だ。標準アプリには付いていない連写機能を利用して写真表現を広げてみよう。
同時に複数枚のシャッターを切ることができる連写カメラアプリは数多くあるが、画質、操作性などのバランスがいい「SnappyCam Pro」という有料アプリ(85円)をおすすめしたい。iPhone5の場合1秒間に30枚まで写真を撮影することができる。
ただあまり高速に設定してしまうと、写真1枚の画素数が減ってしまい、粗い写真になってしまうので注意が必要だ。
■シャッターボタン押すだけで連写がスタート
使い方は標準アプリとさほど違わず、シャッターボタンを押すだけで連写が始まる。撮影した大量の写真の中から、ベストの写真を簡単に選ぶことができる。
スポーツ取材では、連写機能が必須となる。1月に行われたスキージャンプのワールドカップ札幌大会の取材にiPhoneを使用した。撮影エリアは複数あるが、ジャンプ台からテークオフした瞬間を真下から狙う写真に挑戦してみた。
台の下の撮影位置からはジャンパーの姿は見えないため、「恐らくこのへんに現れるだろう」と予想した空間にiPhoneを向けて、助走路を滑り降りるわずかな音に耳を澄ました。
この連写アプリは秒速30コマ。プロ用の最上位機種の一眼レフの連続撮影は秒速12コマだから、このアプリの方が早いはずなのだが、なかなかタイミングが合わず苦労した。
■「子どもの笑顔」はノーファインダーで対話しながら
子どもを撮影する時、難しいのはタイミング。ふとしたかわいらしいしぐさにあわててカメラを構えたものの、時既に遅し、撮り逃してしまった、といった経験はないだろうか。
連写アプリがあれば、子どものふとした表情も撮り逃さないばかりか、被写体たちと動きながら撮影すれば、より動きのある写真が撮影できる。
この際、iPhoneのモニターを通してではなく、ノーファインダーで直接子どもたちと対話しながら撮影した方が生き生きとした写真が撮れることも覚えておこう。
■ゴルフスイングの確認も気軽に
連写アプリはこのほかにどんな場面で活用できるだろうか。連写アプリがあれば、スピードのある動きを分解写真で見ることも可能だ。そこで、ゴルフスイングを撮影してみることにした。
東京多摩川ゴルフ練習場(東京都大田区)でコーチをしている日本プロゴルフ協会(JPGA)の小林一重プロに協力を依頼。連写アプリを使ってスイングを撮影した上で、画像処理ソフトのフォトショップで合成してみた。
これまでもデジカメやタブレット端末をフォーム確認用に使用していたという小林プロは、撮影した連続写真を見て「これぐらいの連写ができれば、動画よりもフォームを確認しやすいかもしれない」と評価。「手本とするフォームの写真と比較できるよう、撮影する高さや角度の条件をそろえるといいのでは」とアドバイスもしてくれた。
技術の進化とともにカメラの連写機能は高速化し、ささいな瞬間も撮り逃さないようになった。また記録媒体の容量に空きがある限り撮影できるため、フィルム時代よりも撮影枚数が飛躍的に増えた。
新人のころ「『数打ちゃ当たる』じゃ駄目だぞ」と上司から怒られたものだが、膨大な枚数を撮影することで有名な写真家・森山大道氏が「量のない質はない」と言ったように、量が質を超えることもある。たくさんの写真からベストのカットを選ぼう。
(写真部 小林健・寺沢将幸)
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。