進む世代交代、「つっこまれ」キャラの女性アナが人気
日経エンタテインメント!
女性アナウンサーは、これまでにも何度か「女子アナブーム」を巻き起こしてきた。しかし、内田恭子(2006年退社)、高島彩(2011年退社)といったブームをけん引してきたフジテレビの人気アナウンサーがフリーランスになってからは、今ひとつ盛り上がりに欠けていた側面があった。
2011年8月には、24時間テレビの総合司会を7年連続で務め、日本テレビを代表する女性アナウンサーとして人気が高かった西尾由佳理が退社。2012月7月には、高島彩とともにフジテレビの人気女性アナウンサーの代表的存在と見られてきた中野美奈子、9月には「すぽると!」で活躍してきた平井理央も入籍とともにフジテレビを退社。世代交代を印象づけた。

こうした中、最近は、新世代の人気女性アナウンサーが増えて、久しぶりに女子アナ界が活気を見せている。盛り上がりの中心となっているのは、「カトパン」の愛称で知られるフジテレビの加藤綾子や、「サンデー・ジャポン」の"ぶりっこキャラ"で脚光を浴びたTBSの田中みな実らだ。
かつて、人気の女性アナウンサーといえば、報道・スポーツ番組から生まれることが多かった。フジテレビで言えば、「プロ野球ニュース」とその後継番組「すぽると!」のキャスターに起用された中井美穂、木佐彩子、内田恭子、平井理央。報道系では小宮悦子(元テレビ朝日)、渡辺真理(元TBS)、滝川クリステル(元フジテレビ系)らだ。各局のニュース番組を担当するアナウンサーが、視聴が習慣性になっている帯番組で活躍して、高い知名度につながった。
それに対し、現在人気を得ているアナウンサーの特徴は、週1回放送のバラエティー番組や情報番組を、お笑い芸人とともに担当している人が多いことだ。
お笑い芸人との共演で人気を得る
フジテレビの加藤綾子は、朝の帯番組「めざましテレビ」を生野陽子とともに担当しているが、人気アナウンサーの代表格へと押し上げた要因としては、明石家さんまのアシスタントを担当している「ホンマでっか!?TV」など、バラエティー番組での活躍が大きい。田中みな実は、毎週日曜の「サンデー・ジャポン」で爆笑問題をはじめ多くのお笑い芸人と番組で共演している。
テレビ東京の人気アナウンサー、大江麻理子も同様だ。2003年から「出没!アド街ック天国」などを担当してきたが、人気上昇のきっかけとなったのは「モヤモヤさまぁ~ず2」。2007年にスタートした同番組の前身である深夜番組時代からレギュラー出演し、2010年に日曜ゴールデン帯に昇格してから、さまぁ~ずとマイナーな街を歩きながら繰り広げる、ゆるいトークが人気を集め、番組に欠かせない存在になった(なお、大江アナはニューヨーク支局に異動するため、2013年3月いっぱいで「モヤモヤさまぁ~ず2」は卒業する予定)。
視聴率が好調なテレビ朝日でも、竹内由恵は入社1年目から「ミュージックステーション」でタモリと共にMC(司会)を務めているほか、前田有紀は「くりぃむクイズ ミラクル9」や「やべっちF.C.」で活躍している(なお、前田アナは2013年3月いっぱいでテレビ朝日を退社予定)。
このように、各局とも、今までなら女性タレントやフリーの人気アナを使っていたポジションに、局アナを起用するケースが増えている。
その背景には、一つは制作費削減対策があるが、それだけでない。「会社全体でアナウンサーを育てていこうという機運が強くなっている」(テレビ朝日アナウンス部長・山本清氏)という部分もある。
また、現在の人気アナにはキャラクターにも特徴がある。例えば、高島彩は、絶妙の「つっこみ」の能力で高く評価された。しかし、最近はくりぃむしちゅーの上田晋也、タカアンドトシのトシ、フットボールアワーの後藤輝基ら、つっこみ芸人がテレビで著しい活躍を見せている。そのため、相手役にはボケの魅力を持った、落ち着いた若手女性アナウンサーのほうが効果的。芸人に「つっこまれた」ときの、ニュースやスポーツを担当しているときとは違った素顔が、視聴者の好感を得ている。

「ヒルナンデス!」を担当する日本テレビ入社3年目の水卜麻美(みうらあさみ)、モーニング娘。の元メンバーでテレビ東京入社後はスポーツを中心に活躍する紺野あさ美なども、落ち着いたタイプのアナウンサーとして、有望株だ。
女性アナウンサーがアイドル視された時代と比べると、やや派手さはないが、キャラクターの持ち味を見せながら、アナウンサーとしての実務をしっかりこなす存在が支持を得るようになったと言っていい。
一方で、2012年に入社した新人の登用も、積極的に行われている。日本テレビの杉野真実は、2012年6月には早くも「世界まる見え!テレビ特捜部」の進行に抜てきされ(前任者はフリーになった西尾由佳理)、12月からは産休に入った石田エレーヌに代わって「スッキリ!」のMCを担当している。また、フジテレビの宮澤智は退社した平井理央に代わって2012年秋から「すぽると!」のキャスターに就任した。
高島彩も入社2年目に「スーパー競馬」の司会に抜てきされ、知名度が急伸した。人気アナウンサーが相次ぎ退社したことで、若手にとっては大きなチャンスがやってきたと言える。
【女性アナウンサーの活躍を上司が語る】
若手にチャンスを与えるのがフジテレビの流儀
フジテレビアナウンス室長 牧原俊幸 氏
フジテレビでは、アナウンサーに新人の頃から早めにチャンスを与えて、他のセクションの番組プロデューサーに実力を見てもらうようにしています。大きかったのは、深夜の「○○パン」シリーズですね。高島彩、生野陽子、加藤綾子らが1年目から番組を持って、多くの人に知ってもらうことができました。インタビュー技術や生放送への対応力を磨いたはずです。
加藤綾子アナは、バラエティーのスタッフからも「カトパンは細かいところに気配りができて安心できる」と引き合いが多くて、朝の「めざましテレビ」の本番が終わってからアナウンス室で仮眠を取って、そのまま夜の番組の収録に向かう姿をよく見ます。オーバーワークにならないように調整することも必要かもしれません。
加藤綾子の同期の椿原慶子アナも、報道を中心に頑張っているので、バランスよく若手が育っていると感じています。
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清楚で誠実なイメージが浸透している
テレビ朝日アナウンス部長 山本清 氏

テレビ朝日の女性アナウンサーの活躍の場は広がっています。先日は前田有紀アナに、「Qさま!!」のクイズ解答者のオファーがあり、神奈川出身インテリ軍団のメンバーとして出演していました。ゴールデン帯の音楽番組のMCを局アナがやっているのは民放では竹内由恵アナだけだし、夕方のニュースも局アナが担当するなど、番組の重要な役割で局アナが出演するケースはテレビ朝日が一番多いはずです。
伝統的にテレビ朝日の女性アナウンサーは、清楚で誠実なイメージが共通してあると思います。バラエティー番組でどんなにハジケても、局アナの範ちゅうをはみ出さない。アクの強さで勝負しようとしても、タレントさんにはかなわないし、必ず壁に当たるんです。視聴者センターに届く声の中にも、「テレ朝のアナウンサーは、テレ朝らしくて好感が持てます」という意見があるので、うまく他局との差別化が図れていると感じています。
(ライター 高倉文紀)
[日経エンタテインメント!2013年2月号の記事を基に再構成]
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