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候補者どう選ぶ 「女性役員1人」へ高まる外圧

2013/6/28

 「上場企業に女性役員を少なくとも1人」。安倍晋三政権が打ち出した成長戦略の女性活躍推進策に、こうした目標が掲げられた。上場企業ではまだ1.2%にとどまる女性取締役比率に、海外投資家からは厳しい目が向けられている。なぜ女性役員を増やすことが必要なのか。役員候補となる女性がいない中、どんな手立てが有効なのか。[注]

■海外投資家は「女性取締役比率」を常にウオッチ

図1 上は、上場企業における女性取締役比率の国別比較。欧州各国は欧州委員会(2012年)、日米は米調査会社GMIレーティングス(2011年)調べ

 安倍晋三政権が成長戦略で掲げた「女性役員を上場企業に1人」。こんな目標を掲げた背景には、海外から大きく後れを取っている現実がある。日本の上場企業の女性取締役比率は1.2%、先進国に目を向けると大半は10%を超える(図1)。世界全体で見ると、日本の女性取締役比率は圧倒的に低い。実はこのデータは、海外投資家に厳しい目でチェックされている。

 ブルームバーグは投資家からの要望を受けて、2009年に「ESG投資」のデータ提供を始めた。ESG投資とは、環境(Ecology)、社会(Social)、企業統治(Governance)に関する企業データをもとに投信判断を行うもの。同社が提供する350を超えるESG項目のなかで「女性取締役比率」は常に検索項目トップ10に入る。ブルームバーグを通じて世界中に発信される東証一部上場企業約1700社の企業データは、海外投資家から常に「女性取締役比率」という視点でチェックされているわけだ。

図2 東証一部上場企業について、2008年からのトータルリターンの結果。TOPIXマイナス11.11%に対し、上グラフの赤色ラインのように、女性取締役が1人でもいる企業はプラス23.83%と大きく差がついた(データ:ブルームバーグ)

 その理由は明確だ。「海外投資家は、女性取締役のいる会社のほうがリターンが高いと分かっているからです」。同社のESGアナリスト黒崎美穂さんは言い切る。欧米では女性取締役が3人以上いる企業は、そうでない企業に比べて業績がいいという分析は、米マッキンゼー・アンド・カンパニーなど各社から発表されている。日本でも黒崎さんの分析によると、2008年からの5年間、女性取締役が1人でもいる東証一部上場企業の業績はTOPIX(東証株価指数)を常に上回る(図2)。リーマン・ショック以降に株価低迷が続く中で下落幅が小さく、昨年末からのアベノミクス以降は上昇幅が大きい。2008年からのトータルリターンでみると、TOPIXマイナス11.11%に対し、女性取締役のいる企業はプラス23.83%と大きく差がついている。

 「取締役会は、性別・国籍・年代・業務経験など多様な役員で構成すべき。そうした『ボードダイバーシティー』の重要性は、もはや欧米では共通認識となっている」というのは、欧州連合(EU)のCSRと企業統治に関する政策調査・コンサルティングを行うSA&C(本社ベルギー・ブリュッセル)代表の佐久間京子さん。例えば新興国市場を切り開こうというときに、取締役全員「同じ業界で経験を積んだ、50~60代フランス人男性のみ」ではマネジメントのリスクが高いという考えが常識となりつつある。

 EUでは社外取締役における女性役員比率40%を法律で義務付ける「クオータ制」の導入が検討されてきたが、経済団体の反対により見送られる公算だ。そのかわり、この秋から「ボードダイバーシティーのデータ開示義務づけの議論が進むだろう」と佐久間さん。EUと米国は7月にも始める自由貿易協定(FTA)交渉でさまざまな規制のすり合わせを行う予定で、「ボードダイバーシティーのデータ開示が、世界標準となる」可能性があると指摘する。そうなれば、グローバル経営を進める日本企業も無縁ではいられない。

[注] 「女性役員」は執行役員、取締役、社外取締役、監査役のいずれかを指すとされる。女性取締役比率には、女性執行役員は含まれない。女性取締役比率は2011年5月現在。

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