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ホントが知りたい 食の安全

非科学的な「怖がり」が生む風評被害 ホントが知りたい食の安全 有路昌彦

2013/1/25

 ますます気になる食の安全。私たちの生活と健康に直接関係するだけでなく、ちょっとした誤解から風評被害が発生、何千億円規模の損失が出ることも珍しくありません。多くの人が幸せに暮らすには、バランス良い世の中であることが大切。そのためには風評被害のようなダメージが発生しないようにすることが必要です。この連載では、食と環境をテーマに、バランスよく持続可能になるにはどうすればよいかを専門に研究している筆者が、毎日の生活から浮かび上がってくる「食の安全」の疑問を解決します。

 近年、「風評被害」という言葉をよく耳にするようになりました。食品リスクの話題に必ずついてくるこの、風評被害。どのようなことか、みなさんはご存知ですか。

 実は、学問領域によっても定義が違います。社会心理学では、全く関連のリスクがないのにかかわらず経済的な損失を受けることです。経済学では「いわゆる風評被害」とか「カッコ書きの風評被害」という言い方をし、小さなリスクを過大に感じることによって発生する経済的損失も含めます。なぜならば、どちらも経済的な損失があり、原因がリスク認知のゆがみによるからです。

 ここでは経済学的な「いわゆる風評被害」についてお話しします。実際は危なくないのに、危ないという情報が広まることによって、消費者がその商品を買わなくなる、といった被害です。

■リスクのない食べ物はない

 食品は口の中に入れるものであり、健康に直結するので、消費者の立場としては基本的に「安全でなければならない」ものです。

 ところが、「食品リスクの『大きさ』の考え方」でも書いたように、世の中にリスクのない食べ物などありません。つまり、リスクとは、あるかないかではなく、大きいか小さいかという「リスクの量」の判断をするものです。

 しかし、人の心というものは結局のところ、「自分がどのように受け取るか」という主観的なものです。これを「認知」といいます。リスクの小さいものもとても大きく感じてしまうことはよくあります。

■客観的リスクと主観的リスク

BSE感染実験を行なっている研究室

 たとえば、BSEが国内で発生していろいろな体制が整えられた2005年、そのリスクはもちをのどに詰めて死亡するリスクや、風呂場で溺死するリスクの何万分の1といったくらい小さいものでした。しかし、世の中では「牛肉を食べたら直ちに感染する」と感じた人も多かったようです。もちろん、そんなことはありえません。

 そしてこの主観的なリスクこそ、消費者の消費行動を決めてしまうのです。

 先のBSEの例であれば同時期に牛肉の消費量は大幅に減少しました。ではなぜこの主観的なリスクは大きくなってしまうのでしょうか。

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