高望みせずに自分らしく生きたい"団塊ジュニア世代"
働く女性の25年 世代別研究(2)
30代後半・団塊ジュニアは、貧乏クジ世代&さまよい世代
第二次ベビーブームの中で生まれ、受験戦争など熾烈な競争の中を生きてきたこの世代。社会に出る頃にはバブルがはじけ、新卒採用が抑制されて就職氷河期が到来。女子大生ブームにも女子高生ブームにも外れ、「貧乏クジ世代」とも呼ばれる苦難の世代だ。「競争に勝ち抜かないと生きていけないという覚悟がある人たち。そして、努力が報われないジレンマを抱え続けている」と福沢さん。
吉瀬美智子(38歳)・木村佳乃(36歳)・篠原涼子(39歳)・SHIHO(36歳)・中谷美紀(37歳)・東尾理子(37歳)・本上まなみ(37歳)など
この世代の働き方に大きな影響を与えたのが、99年の労働者派遣法改正。雇用形態に「派遣社員」という新たな選択肢が加わるようになったのだ。人口が多くただでさえ競争が激しい上に、不況にも襲われ、満足な内定をつかめない人も続出していた時代。そんな中、「(20代のうちは)正社員と同等の月収があり、17時には帰れるからアフターファイブに習い事もできる。まあまあ、いい働き方なんじゃないか……ということで、派遣社員になる人も多かったのです」と牛窪さん。
仕事一辺倒のバブル世代に反感、ワークライフバランス志向も強い
99年には女性の働き方に、インパクトを与える出来事がもう一つあった。男女雇用機会均等法の改正が施行され、採用・募集・配置・昇進での差別が「努力義務規定」から「差別禁止規定」になったのだ。「女性であるという理由だけで差別することが正式に『禁止』となり、昇進もできるようになったことで、企業で女性が働き続ける土台ができたのです」(福沢さん)。
90年代後半のバブルなどによって起業家ブームが起こると、「小さなオフィスや自宅で起業するSOHOという考え方も登場し、正社員や主婦以外にも、派遣社員や起業家など、いろいろな生き方が選べるという考え方が広がっていきました」(牛窪さん)。
しかし、このように選択肢が増えた時代に社会に出たために、自分の進むべき道を見つけられない人が続出した「さまよい世代」でもある。新卒時にフリーターなど非正規で働き始め、正規雇用の採用を得ることができずに40代目前となっている人も。運よく納得のいく就職をした人も、仕事一辺倒のバブル世代にどこか反感があり、「ワークライフバランス」志向も強い。
バブル後の不況で男性が自信を喪失していく中、カップル率が低下しはじめたのがこの世代から。子ども時代から男女平等教育を受けてきたこともあり、割り勘にも抵抗がない。「男性に寄りかかろうと思わず、高望みせずに自分らしく生きようとする女性が増えました」(牛窪さん)。
そんな団塊ジュニア世代のキーワードは、「等身大」「ナチュラル」「シンプル」など。ファッションにおいても、ブランド志向は弱く、「無印良品」「ユニクロ」など気負わないシンプルカジュアルで、ありのままの自分を表現できる定番スタイルが支持を集めた。
彼女たちの心を鼓舞するのは、「こういう仕事ができるところが、あなたらしいね」「このプロジェクトは、あなたにぴったりじゃないかな」など、その人らしさを評価する言葉。
逆に、厳しい競争の中でさまよってきた世代だけに、周りの人を出し抜いておいしい思いをすることに罪悪感を覚えるため、「自分だけ評価されようとしないでよ」「目立つようなことしないでいいよ」という声で、パワーが落ちてしまう。
また、努力を厭わない強さを持つ半面、報われなかったときに心が折れやすいという弱さも。「長期的に見れば、成果が少しずつ表れるかもしれないよ」など、努力は無駄にならないということを示せば、立ち直りやすくなるはず。
「この世代が気をつけるべきことは、報われなかったことに対する恨みのオーラを周囲に感じさせないこと」と福沢さん。「積み重ねてきた努力が実を結ばない」という不完全燃焼経験を重ねてきた。しかし、そのネガティブな感情を表に出していては、今後の自分のためにプラスには働かない。
少なくとも、けなげに努力する自分を演出したほうが、周りの人たちの共感は得られやすいだろう。
【強み】「計画的な努力ができる」
同世代の人数が多く、子供のころから競争が当たり前という環境の中で育ってきた。そのため、目標を見据えて、コツコツ頑張ることが得意。
【弱み】「自分に自信が持てない」
努力が実を結ばなかったという経験を重ねてきたため、自分の力を信用できない。周囲から悪目立ちすることを恐れ、高望みをすることもない。
この人たちに聞きました
ジャーナリスト・昭和女子大学グローバルビジネス学部特命教授。1983年早稲田大学政治経済学部卒。在学中に女子学生の作る就職情報誌「私たちの就職手帖」を創刊、初代編集長を務める。卒業後、朝日新聞記者を経て1990年にフリーランスのジャーナリストとして独立。「女性と仕事」を中心テーマに、就職、起業、人材開発などについての執筆や講演を行う。2003年~2006年東京家政大学人間文化研究所助教授、2006年~2007年同客員研究員。2007年~2010年日本女子大学客員教授などを経て、2013年より現職。専門はキャリア開発論、ジェンダー論、メディアリテラシー。
マーケティングライター。インフィニティ代表取締役。財務省財政制度等審議会専門委員。1968年東京生まれ。日大芸術学部映画学科(脚本)卒業後、大手出版社に入社して編集、PR担当後、転職し、2001年に起業。トレンド、マーケティング、小売流通、ホテル、旅行関連などをテーマに執筆、講演を行う。テレビ番組のコメンテーターも務める。主な著書に『男が知らない「おひとりさま」マーケット』『独身王子に聞け!』『ただトモ夫婦のリアル』(いずれも日本経済新聞出版社)ほか。13年、経済産業省「ダイバーシティ経営企業100選」サポーターに就任。公式ブログ「牛窪恵の気分はバブリ~♪」
(ライター 西門和美)
[nikkei WOMAN Online2013年4月5日付を基に再構成]
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