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終身雇用は幸せか、「40歳定年」で多様な働き方を 東京大学大学院教授 柳川範之氏

2012/9/21

 7月末に「日本再生戦略」を発表した国家戦略会議の下に設置された部会の一つに、繁栄のフロンティア部会がある。再生戦略には盛り込まれなかったが、部会報告のなかで非常に注目されたのが『40歳定年制』の提言だ。賛否の議論が巻き起こっている40歳定年制の中身や狙いは? 繁栄のフロンティア部会の部会長を務めた東京大学大学院経済学研究科の柳川範之教授に聞いた。

■年金制度は積立方式に変えるべき

――柳川さんの略歴を拝見すると、高校時代をブラジルで過ごしたのち、大学入学資格検定試験に合格し、慶應義塾大学経済学部を通信教育により卒業されています。ほかの若者とはかなり異なる形で東京大学の大学院に進み、博士号を取得されたのですね。

 やながわ・のりゆき 経済学者。1963年生まれ。父の仕事の関係でシンガポールで小学校を卒業。高校時代をブラジルで過ごしたのち、大学入学資格検定試験合格。大学は慶應義塾大学経済学部を通信教育により卒業。その後、東京大学大学院に進み1993年博士号を取得。現在、東京大学大学院経済学研究科教授。『法と企業行動の経済分析』(日本経済新聞出版社、日経・経済図書文化賞受賞)など専門研究書のほかにも、『独学という道もある』(ちくまプリマー新書)、『元気と勇気が湧いてくる経済の考え方』(日本経済新聞出版社)など、若者に向けて多様な価値観を伝える著作もある。

柳川 ほとんど受験勉強をせずに大学教授になったというちょっと珍しいパターンだと思います(笑)。

――『繁栄のフロンティア部会報告書』のサブタイトルは、「未来を搾取する社会から、未来に投資する社会へ」です。

柳川 社会保障の負担がかなり大きくなってきて、財政赤字も膨らんでいます。経済が成長して、人口が増えている社会であれば、対応することもできるのでしょうが、日本はそれとは逆で、どんどん人口が減って、高齢化が進んでいます。そうなると、これから生まれてくる人たちや今の若い人たちが、さらに増えてくる社会保障や、国の赤字をずっと背負っていくことになります。これでは、明るい未来は実現しません。そうならないように、今から2050年という未来に向けて、何をすべきかということを真剣に考えてみました。

――どんな議論があったのですか。

柳川 所得再分配をあまりにも世代間でやってしまうと、若い人たちの負担が大きくなってしまいます。なるべく世代内で所得再分配ができるようにしてほしいと提言しています。具体的にいいますと、年金では、若い人の積み立てを受け取ることによって社会保障を得られるという「賦課方式」を採用していますが、人口が減っていくなかでは、若い世代の負担がどんどん大きくなる。ですから、2050年をにらんだときには、賦課方式から積立方式に変えていくという方向性が重要だと思います。

――報告書で新しさを感じたのは、「NPO、NGOなど“新しい公共”によって互助社会が維持され、地域ニーズに合った公共サービスが地域コミュニティー自らの構成員が支えあって提供されている」という未来イメージです。

柳川 地域のコミュニティーで支え合うという形で公共を考えていくことがこれからのあり方だろうと思います。そうすることによって、まだまだ元気に働ける高齢者が社会貢献する場ができるし、そこで子育てや介護を相互に助け合う形を作っていければ、子育てのために働けない、介護のために働けないという女性も戦線を離脱しなくても済むと思います。

■国のお金だけでは限界、NPOなどが社会支える仕組みに

 国のお金を使うだけでは限界があることは分かってきていて、それが財政問題になっているわけですね。今回の東日本大震災の後で我々は、個々人の社会貢献やNPOの活動がかなりの強さを持ってきていて、社会を支える一つのメカニズムになり得るということを実感しました。こうしたものをうまく使っていくことで社会保障とか互助的なシステムを動かしていけば財政も楽になるし、その結果、みんながよりよく生きられるようになるのではないかと思います。

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