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食の未来拓く産業に 完全養殖クロマグロの意味 ホントが知りたい食の安全 有路昌彦

2013/7/12

 今回はマグロの「完全養殖」話を取り上げます。

近畿大学が世界で初めて人工繁殖に成功した完全養殖マグロの出荷風景(近畿大学提供)

 近畿大学といえばマグロ、というくらいに有名になったクロマグロの完全養殖ですが、完全養殖とは人工採卵孵化した親魚からさらに人工採卵孵化を実現したことで達成したことを意味します。

 クロマグロは広い沖合で産卵して育って回遊するため、それまであまり初期段階の生態がわかっていませんでした。それを飼育して天然マグロに頼らなくても採卵可能になり世代交代を繰り返すことができるようになったのが現状です。今ではより強いマグロを生むために、より優れた種を選別する段階になりました。

■産業化してこそ

 ところでクロマグロで完全養殖に成功したことも重要ですが、実際はその「産業化」を真剣に行っていることの意味が大きいのです。他の魚でもそうですが、完全養殖が実現しただけではゴールの1割にも至っていません。

 市場で必要とされるマグロのうち、一定以上の割合を天然マグロと同じような価格帯で販売し、経済的にも見合うようになって初めて「産業化」したと言えます。

 現在クロマグロは、国内で必要とされる63万匹のうち、14万匹以上を近畿大学の人工種苗で供給しています。そこに至るまでには相当な研究が必要だったのですが、今でも効率を上げるために様々な研究を続けています。改善の余地はまだまだありますが、安定的に数万匹単位で供給できるので、産業化は一定の水準で達成していると言えます。

■大手企業との協働によって成立

 クロマグロは、初期は陸上の施設で育てます。大きくなってくると飼育に広い容積が必要なので、「沖だし」といって海のイケスのほうに移動させます。

 この段階で環境が大きく変わり、また、魚体に触れる機会が発生するので、多くがこの段階で死んでしまうのが今も課題で、その解決を進めています。

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