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アップル巻き返せるか 地図アプリ、機能で勝負

 

2013/2/23

 スマートフォン(スマホ)やタブレット端末向けの地図アプリの開発競争が活発化している。GPS(全地球測位システム)を内蔵した携帯端末の普及に伴い、外出時に便利な地図アプリの重要性が高まっているためだ。地図アプリを含む電子地図ビジネスは、2015年には10兆円規模の市場に成長するとの見方もあり、国内市場でも主導権争いが激しい。電子地図ビジネスの現状と未来を探った。

 2012年秋に起きた「アップル地

 スマートフォン(スマホ)やタブレット端末向けの地図アプリの開発競争が活発化している。GPS(全地球測位システム)を内蔵した携帯端末の普及に伴い、外出時に便利な地図アプリの重要性が高まっているためだ。地図アプリを含む電子地図ビジネスは、2015年には10兆円規模の市場に成長するとの見方もあり、国内市場でも主導権争いが激しい。電子地図ビジネスの現状と未来を探った。

  • 電子地図はカーナビやスマホ/タブレット端末などで広く使われている。右はグーグルの「ストリートビュー」向け撮影車

 2012年秋に起きた「アップル地図騒動」は、今や地図アプリがスマホやタブレット端末のユーザーにとって非常に重要な存在になったことを象徴する“事件”だった。

  • アップルの地図アプリ「マップ」
 米アップルは、2012年9月に提供を開始した携帯端末用OS(基本ソフト)の最新版「iOS 6」に自社開発の地図アプリを実装した。しかし、その完成度の低さからユーザーの大きな批判を浴び、CEO(最高経営責任者)が謝罪するという異例の事態になった。

 それまでiOS向けの「マップ」に地図を提供していたグーグルは、アップルがiOS 6から自社開発の地図をマップに使うことを決定していたため、対応を見送っていた。しかし、「グーグルマップ」の対応を望む声の急速な高まりに、ついに2012年12月13日、iOS 6対応のグーグルマップを公開した。同アプリは公開後数時間で、アップストアの無償アプリ部門のランキングでトップに躍り出た。

■他の地図アプリに目を向ける機会に

 業界では「スマホでアップルとライバル関係にあるグーグルが、iPhone 5に対応するのだろうか」との声も聞かれたが、グーグルの牧田信弘プロダクトマネージャーは、「世界中のあらゆる情報を整理し、OSやブラウザーに依存しない形で利用者に届けるのがグーグルの使命。利用者の多いiOSに対応するのは当然の流れだった」と語る。むしろiOSに対応しなければ、巨大なマーケットを放棄することにもなる。

 ダウンロード数が増えているのは、グーグルマップだけではない。iOS向けに地図アプリを供給する国内のサイトは、どこもおしなべて好調だ。

 「マップファン」ブランドでさまざまな地図を提供するインクリメントPの馬場純マネージャーは、「想定以上にダウンロード数が伸びており、マップファンの認知度も高まっている」と話す。「これまで標準で付いていたグーグルの地図で満足していた利用者が、それがなくなって初めて不便さに気づき、地図を探す旅に出ている」と分析するのは、地図検索サイト、マピオンの山岸靖典マネージャーだ。

 アップルの地図騒動は、iPhoneのユーザーが他の電子地図に目を向けるという副産物も生んだわけだ。

■電子地図の仕組み

 2015年頃には、周辺ビジネスも含めて10兆円市場に成長すると期待される電子地図ビジネスだが、そもそも電子地図とは何か。

 ベースの地図は、国土地理院が発行する地形図や地方自治体の都市計画図、日本デジタル道路地図協会が提供するデジタル道路地図などだ。これらに地図調整会社が独自に調査したデータを加え、視認性を高めるなどさまざまな編集・加工を行ったのが電子地図である。

 地図調整会社には、住宅地図大手であるゼンリン、観光情報に強い昭文社、カーナビ地図を手がけるインクリメントPなどがある。こうした会社から地図データの供給を受け、さらに独自に調査したデータを加えて編集・加工しているのがグーグル、ヤフー、ナビタイムジャパン、マピオンなどだ。

■独自色で競う

 同じ地図データを採用していても、文字の大きさや色使いはもとより、「どんなシーンでどんな情報を強調して見せていくかはそれぞれのノウハウ」と各社は口をそろえる。実際に、地図の見せ方は大きく異なっている。

  • スマホ対応の主要地図アプリ

 各社が供給するスマホ向けの地図アプリもそれぞれ特徴がある。「地図Yahoo!ロコ」は、標準地図だけではなく、さまざまな地図の表示が可能。昨夏には雨雲レーダーが観測した雨雲を地図に組み合わせる機能を追加し、「自分のいる場所で、これから雨が降るかどうかがひと目でわかる」(ヤフーの柳生茂樹氏)のが便利だ。

 「マップファンプラス」は、地図の有料ダウンロードに対応する。スマホに地図をダウンロードすれば、通信環境がなくても使える。背景には東日本大震災での経験がある。

 400万人の有料会員を擁するのが「ナビタイム」だ。クルマや電車、バス、航空機、自転車などさまざまな移動手段での最適なルートを提供する「トータルナビ」が特徴だ。例えば地下鉄から地上に出る場合、目的地までが最短の出口や、出てから進む方向まで細かくガイドする。自転車ナビでは坂道が最も少ないコースなども選べる。

 各社が電子地図の機能強化を打ち出しているのに対し、地図や旅行ガイドブックを発行する昭文社の方向性はやや異なっている。昭文社の電子コンテンツ事業を手がけるマップル・オンの大日方祐樹氏は、「電子地図は無料で使える時代。独自色を出していかないと競争に勝てない」と、強みである観光情報が生かせる「マップルリンク」という機能を付加した出版物に力を入れている。

 紙の旅行ガイドブックに収録された地図とガイド情報をスマホにダウンロードできるのがマップルリンクで、旅行にはスマホだけ持って出かけるといった使い方を提案する。

■地図でライフスタイルを総合サポート

 スマホの位置情報を、情報提供や集客に利用する動きも目立つ。

 グーグルは2012年秋に対応製品が登場したアンドロイドOS4.1から、「グーグルナウ」と呼ばれるサービスを開始した。グーグルナウは利用者の位置情報をはじめ、ロケーション履歴、検索履歴、予定表などから推測して自動的に絞り込んだ有益な情報を、最適なタイミングで端末画面に表示する。

 ネットの技術を実店舗の集客に結び付けるO2O(オンラインツーオフライン)サービスや、位置情報による仮想のフェンスを一定エリアに作ってクーポンなどを送信する「ジオフェンシング」なども注目を集めている。

 IT(情報技術)ベンチャーのスポットライトは、スマホを持って店に行くだけでポイントが得られるO2O「スマポ」をスタート。ビックカメラや丸井、大丸松坂屋百貨店など大手を中心に、導入店が増えている。

 O2Oは、マピオンの位置情報ゲーム「ケータイ国盗り合戦」が先駆け的な存在。戦国時代を舞台に日本を600エリアに分割し、そこに実際に行くことで自分の国を増やしていくスタンプラリーである。すでに100万人を超える会員を抱える。

 ヤフーも先般、千葉県浦安市にあるショッピングセンター、イクスピアリで「イクスピアリクリスマスタッチラリー」を実施した。位置情報は集客に欠かせない道具となっている。

■ビジネスの世界も変える地図アプリ

 ビジネスアプリの世界も変わりつつある。クラウドサービスと連係してさまざまなデータを電子地図上で可視化し、業務の効率化やコストダウンを図るのが「ロケーションインテリジェンス」である。

 業務用地図アプリの開発を手がけるオークニー代表の森亮氏は、「消費者の間で流行した技術はビジネスの世界にも入ってくる」と語る。業務ソフトのアプリ化が進む一方、ツイッターやフェイスブックなどの技術を取り入れるのが最近の動きだ。

 当初は完成度が低かったアップルの地図も、「1~2年で他社に追い付いてくる」というのが業界の見方だ。それは、電子地図でアップルとグーグルの対決構図が鮮明になることを意味する。

 スマホも今後は地図を表示するだけでなく、グーグルナウのように、個人の生活や仕事を総合的にサポートする形に進化する。そこに大きな商機があるからだ。アップルは音声での個人サポートサービス「Siri(シリ)」を提供している。電子地図を巡る陣取り合戦は、これからが本番だ。

(ライター 床井浩)

[日経トレンディ2013年2月号の記事を基に再構成]

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