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ホントの年金受給額、いくらもらえるのか 老後のお金のすべて(1)

 

2011/10/19

 2011年10月に厚生労働省が発表した厚生年金の支給開始年齢の引き上げ案をニュースで知り、老後の生活について不安を感じた人も多いのではないでしょうか。年金はいくらもらえるのか、そして老後の生活はいくらかかるのか。本連載では、こうした老後の収入と支出に関する疑問や不安を解き明かしていきます。第1回の今回は、まず老後の家計収支を予測した上で、年金受給額がいくらになるのかを試算します。

 今の日本で老後

 2011年10月に厚生労働省が発表した厚生年金の支給開始年齢の引き上げ案をニュースで知り、老後の生活について不安を感じた人も多いのではないでしょうか。年金はいくらもらえるのか、そして老後の生活はいくらかかるのか。本連載では、こうした老後の収入と支出に関する疑問や不安を解き明かしていきます。第1回の今回は、まず老後の家計収支を予測した上で、年金受給額がいくらになるのかを試算します。

 今の日本で老後の不安とは、おカネの不安のことでもある。消費税や医療費、各種保険料が上がっても、普通に暮らしていける年金はもらえるのか。年金で十分な介護サービスを受けたり、高齢者介護施設に入ったりできるのか。さらにいえば、これまでに発表されたような年金改革が進められたとき、老後の暮らしはどうなるのか。不安の種はつきない(図1)。

  • 図1 今後の年金改革の争点

 6月30日に政府・与党が正式に決定した「社会保障・税の一体改革成案」は、子育てや就労、医療・介護、年金といった社会福祉と、その財源となる税金の制度を抜本的に改革するための工程表だ。この改革案は具体的な数字が乏しく、将来の老後の姿は描きにくい。それでも今後、どんな福祉サービスが拡充されるのか、どんな税・保険料が増えるのかといった方向性は記されている。そこで、現在の高齢者の収入と支出、暮らしぶりを点検し、その姿に改革の方向性を重ねることで、老後の将来を考えてみよう。

■年金2割減、赤字は倍増?

 まず、サラリーマンの老後を支える厚生年金がいくらもらえるのか。改革案では金額抑制と、受け取り開始年齢を後ろにずらすことが検討されている。ニッセイ基礎研究所の中嶋邦夫さんに、この前提で試算してもらった年金額が図2図4だ(試算前提は「図2~4の試算の前提条件」を参照)。

  • 図2 35歳サラリーマン夫婦の年金受給月額の試算

  • 図3 45歳サラリーマン夫婦の年金受給月額の試算

  • 図4 55歳サラリーマン夫婦の年金受給月額の試算

■図2~4の試算の前提条件 夫:40年間厚生年金加入の会社員、標準報酬(賞与込みの1カ月当たり)52.9万円(平均より10万円高い)、妻:7年1カ月厚生年金加入後離職(標準報酬26.5万円)、その後専業主婦。現行制度をベースに、支給開始年齢を68歳に引き上げ、マクロ経済スライドの特例措置を撤廃したものとして試算。ただし両者がマクロ経済スライドの終了年に与える影響については加味していない。年金額は、現在の実感に近づけるため賃金上昇の影響を除いている。(試算協力)ニッセイ基礎研究所 中嶋邦夫さん

 改革で、現在65歳の人が今受け取っている月額25万円の年金は、現在35歳の人が70歳になったときには19万円になる。「政府が出している案はマイルドな内容だが、それでも30年後の年金受給額は現在より24%減る。さらに、金額より支給開始年齢の引き上げ(65歳から68歳)の方が家計に与えるダメージは大きいだろう」(中嶋さん)。

 では、老後の支出と暮らしぶりはどうなるのか。かなり強引だが日経マネー編集部で試算をしてみたのが図5だ。試算の前提は図を見てほしいが、11年後、22万9000円の年金収入はあるものの、医療費と税負担などが増え、毎月9万2000円の赤字が生じるという結果になった。年金収入は2~3割減。家計は毎月9万円の赤字。老後が厳しくなるのは間違いなさそうだ。

  • 図5 1992年と2007年の収入と支出から予測する2022年の高齢夫婦無職世帯の家計
    総務省「家計調査」、「ニッセイ基礎研究所ニッセイ基礎研REPORT 社会保障特集号」に基づいて作成。

■老後のお金Q&A

【Q】サラリーマン夫婦の年金額は月23万円と聞いたけど、本当ですか。
【A】モデル夫婦の世帯年金額です。10万円台の世帯もいます。

 厚生労働省の試算によると、40年間、平均的な給料をもらいながら会社勤めをした夫と専業主婦の妻というモデル世帯がひと月に受給できる公的年金額は約23万円だ。厚生白書などの発表資料では、このモデル世帯の公的年金額として約23万円という数字が何度も使われている。しかし、この金額をうのみにするのは危険だ。定年を迎え、年金をもらう年齢に達したとき、年金事務所(旧社会保険事務所)の窓口で「俺の年金がこんなに少ないはずない」と声を荒らげる人も少なくない。23万円の中身を確認しよう。

■月23万円のモデル夫婦 実は恵まれた層

 公的年金は、自営業者が加入する「国民年金」と、サラリーマンが加入する「厚生年金」、公務員が加入する「共済年金」に大別できる。国民年金加入者は第1号被保険者、厚生年金などの加入者は第2号被保険者、そして、第2号保険者の妻である専業主婦は第3号被保険者となる。1号保険者は毎月約1.5万円の保険料を40年間納めれば、65歳から毎月約6.6万円の年金を受給できる。2号は所得に応じた保険料を納め、65歳から保険料に応じた年金を受給する。3号は保険料負担無しに1号と同額の年金を65歳から受給できる。モデル夫婦世帯の年金額は2号分+3号分だ。

 夫の年金額は「平均標準報酬月額」と勤務年数で決まる。「平均標準報酬月額」とは、簡単に説明するとボーナスを含む平均月給だ。

 厚生労働省は、平均的な月給のサラリーマンが40年間働いたと仮定すると、年金額は月16.7万円と試算している。試算前提の平均的年収は560万円(税込み)だ。これに専業主婦の妻の年金額、月6.6万円を加えてモデル夫婦世帯の月額23.3万円となる。

  • 図6 高齢世帯の公的年金受給月額別割合(出展:厚生労働省「平成19年老齢年金受給者実態調査」)
 厚生労働省の「平成19年老齢年金受給者実態調査」調査では、現在の無職高齢者夫婦世帯が年金をいくら受給しているかを調べている(図6)。まず、現役時代にサラリーマンだった(厚生年金)か、自営業だったか(国民年金)で大きな差があることが分かるだろう。さらに受給額はバラついており、月23.3万円という「モデル夫婦世帯」に当てはまる世帯は、厚生年金が支給される世帯全体の16%しかいない。

■公的年金の水準は切り下げ方向

 では自分はいくらもらえるかをどう調べるか。日本年金機構のウェブサイトにある「年金簡易額試算」でざっくり調べることができる(本記事末尾の「ネットで年金額を試算してみよう」を参照)。これを使って試算した年齢別の年金額が図7だ。表からも分かるとおり若い人ほど年金額が少ない。これは給付を抑制する仕組みがあるためだ。

 改革案では、厚生年金に関して、年金受給開始年齢の引き上げ、第3号被保険者の廃止、高所得者への給付の引き下げ強化などが、議論すべきテーマとして上がっている。年金財政は厳しさを増しており、試算した現行制度における年金受給額や受給開始年齢、そして今の高齢者世帯が受け取っている年金額は、おそらくは上限。現役世代が年金を受け取る頃には、これらの年金額より下がることを覚悟しておいた方がよいだろう。

 なお、民主党がマニフェストに掲げていた税金を原資とする「すべての人に月7万円を支給する最低保障年金創設」は、6月の改革案では具体化されていない。

 実現は財源面でかなり厳しく、老後の資金確保に向けた自助努力は、ますます重要性を増している。

  • 図7 夫1人分の厚生年金の受給額  年齢が35歳、45歳、55歳の人が、ボーナスを含めた平均月給(平均標準報酬月額)が25万、35万円、45万円だった場合、将来、毎月いくらの年金が受給できるかを試算。例えば平均月給35万円の35歳の人が受け取れるのは65歳から毎月14.1万円。(注)22歳で社会人になり60歳まで勤務した場合を想定した。ただし、35歳(昭和51年生まれ)のみ20~21歳の間は、国民年金に加入していた場合のもの。金額は日本年金機構ホームページ「年金簡易額試算(シミュレーション)」による試算。平均標準報酬月額は、35歳時点のボーナスを含んだ年間給与を12等分した額が目安。一般男子の平均は34万7136円(平成23年)だが、平均値には高額所得者も含むので実際はもう少し低め。

ネットで年金額を試算してみよう

 学生時代は国民年金、23歳で就職して厚生年金に加入、42歳で独立して国民年金。こんな自分は公的年金をいくらもらえるのか――。これを試算できるのが、日本年金機構のウェブサイト(http://www.nenkin.go.jp/ )で利用できる「年金簡易額試算(シミュレーション)」だ。生年月日と加入してきた年金種別、加入年数、今から60歳までの加入予定などを入力すると、将来受け取れる年金額を示してくれる。

 同じウェブサイトでIDを申請すれば、自分自身の年金加入記録も確認できる。正確な加入月数や標準報酬月額も確認できるので、より正確な試算ができる。ただ、あくまでも試算なので、50歳以上で正確な予定額を知りたい場合は、最寄りの年金事務所で確認した方が良いだろう。

  • 図8 日本年金機構のウェブサイトで実施できる年金シミュレーションの進め方

(日経マネー 本間健司)

[日経マネー2011年10月号の記事を基に再構成]

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