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ホントが知りたい 食の安全

放射性物質汚染問題で見えなくなるリスク ホントが知りたい食の安全 有路昌彦

2013/5/17

 食品の放射性物質汚染は、東日本大震災から2年以上が経過した今も、みなさんに関心の高いテーマだと思います。過去に経験したことがないので不安も大きいのではないでしょうか。今回はその中でも、当時報道が多かった牛肉について取り上げたいと思います。

 一部の牛肉から国の暫定基準値を超える放射性セシウムが検出され、出荷停止の措置が取られました。これは肥育されている牛のエサのワラに原因がありました。

 東日本大震災で震災で一時的に物流が滞った時にエサがなくなり、牛を餓死させるわけにはいかず、汚染されたワラを汚染されていると知らずに与えてしまったのが原因とされています。

多くのスーパーが牛肉売り場に「全頭検査済み」の表示を掲げた(2011年11月)

 しかし、今は、当然、汚染されたワラをエサにするようなことはありません。

 セシウムのような放射性物質には、半減期があります。半減期にも2つあり、物理的半減期と、生物的半減期です。物理的半減期とは、例えば放射性セシウムの数が半分になるまでの期間で、一般的に半減期という言葉はこちらをさします。

 もう一つの生物的半減期は、一度、体の中に取り込まれた物質が、排泄作用などで、体内から失われ、半分に減るまでの時間です。セシウムの生物的半減期が60日。つまり、放射性セシウムが検出されてすでに1年数カ月たった今、リスク要因はほとんどありません。

■全頭検査を喜んでいいの?

 しかも、混乱の中、全頭検査が行われることになったので、汚染された牛肉はその後市場に出回ってはいません。すぐに全頭検査の体制が整えられたのは、全頭検査の仕組みがBSEの時から続いていたので、スムーズだったのが理由です。

 スムーズに全頭検査の体制が整ったことを、私たち消費者は手放しで喜んでいいのでしょうか。

 そもそも今回の牛肉における健康リスクは、受動喫煙と比較してもはるかに小さいものです。現時点でリスクは限りなく小さく、また発生の原因であった原発も冷温停止に至っており、追加的に汚染が拡大する可能性もほとんどなくなっています。

 つまり、現時点で全頭検査には必然性はなくなっています。本当なら、いろいろな食材のサンプルを取って検査をすることのほうが科学的に重要なのですが、食品の放射性物質検査の約半分は、ほとんどリスク削減の必要のない牛肉に使われているのです。

 牛肉だけを過剰に心配しすぎると、ほかのリスクを見落としてしまいます。今後は、東北地方を中心とする牛肉に関しては、安心して食べていただいてよいでしょうし、全頭検査を続けることを求めない方が、より対策すべきことに予算が回り、全体のリスクは下がることになります。

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