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サラリーマンの確定申告 2014年、6つの変更点

 

2014/2/19

 消費税が8%に引き上げられるのは2014年4月からですが、大きく変わる税制はほかにもあります。既に高額所得者への増税や復興特別所得税の導入などがあり、これらは会社員も無縁ではありません。サラリーマンだからこそ注目したい確定申告のポイントについて今回は解説します。

 「ああ、また給料が減った。アベノミクスはどこへやら……」。源泉徴収票を手に、こうつぶやいた会社員もいるだろう。そんな人は、確定申告をす

 消費税が8%に引き上げられるのは2014年4月からですが、大きく変わる税制はほかにもあります。既に高額所得者への増税や復興特別所得税の導入などがあり、これらは会社員も無縁ではありません。サラリーマンだからこそ注目したい確定申告のポイントについて今回は解説します。

 「ああ、また給料が減った。アベノミクスはどこへやら……」。源泉徴収票を手に、こうつぶやいた会社員もいるだろう。そんな人は、確定申告をすることで税還付が受けられないか、下のチェックリストを基に確認したい。確定申告の総件数は約2153万件、その約6割が還付の対象といわれている。税金を払い過ぎている場合に、確定申告をすれば戻ってくるのが「税還付」。しかし「あなたは払い過ぎですよ」と誰も教えてはくれないから、自らアンテナを張り確認する必要がある。

  • こんな人は、確定申告で税金が戻ってくる可能性がある(イラスト:沼田健)

 そもそも確定申告とは、納税者自らが所得金額と税額を計算し、確定した税額を納付する「申告納税制度」に基づくもの。申告により払い過ぎの税が戻ってくる人もいれば、不足額を納める人もいる。また申告して所得税を納めることが義務付けられている人もいる。個人事業主はもちろんのこと、上のチェックリストに挙げた通り、会社員でも必ず確定申告をしなければいけない場合もある。

 年に1度の確定申告は、自分の所得と、税の仕組みを知る絶好の機会でもある。賢い付き合い方をするためには、まず基本的な仕組みから理解したい。

■復興特別所得税で2.1%課税

 2014年の確定申告で気を付けたい主な改訂は6つ。下の図にその概要をまとめた。

 全ての人に関係するのが、「復興特別所得税」だ。2013年1月から25年間、基準所得税額に2.1%課税される。給与はもちろん、預貯金利息や株式配当、株式売却益も対象となる。復興特別所得税の導入に伴い、確定申告の書式が変わるので注意をしたい。

  • 平成25年分の確定申告、書式はこう変わった

 会社員なら、2013年1月から「特定支出控除」の枠が広がったことに着目したい。業務に関連する経費を自己負担した場合、給与所得控除の2分の1を超える分についても控除の対象となる。新聞・書籍など仕事に必要な図書費、取引先の接待費などが対象だ。ただし、会社が「経費」として認めるという証明書が必要になる。2014年申告分から枠が拡大するため、どこまで会社が「必要経費」として認めるかは、前例をもとに基準が作られることになりそうだ。

 海外資産を多く持つ富裕層には、「国外財産調書」の提出が義務付けられた。2013年12月末時点で5000万円超の海外資産を有する人が対象。2013年分は2014年3月17日までに所轄の税務署まで提出しなければならない。

 海外に5000万円超の不動産を持つ人は必ず提出しよう。投資家なら外国株や外貨建て金融商品がどこまで対象になるか、迷うところだろう。「国外資産」の判断は、取引する金融機関の所在地が決め手となる。例えば、国内証券会社で購入して保有する外国株なら「対象外」。一方、証券会社の海外支店にある株式・債券や、金融機関の海外支店口座の預金は「対象」となる。

 該当者が調書を提出しなかった場合は、1年以下の懲役か50万円以下の罰金に処すると、罰則は重い。そもそも、国外の資産運用で得た所得は、給料などと併せて申告する義務があるため、申告漏れのないようにしたい。

 今後の税改正では、高額所得者への課税が強まっていく。2014年の申告分でいえば、収入1500万円超の会社員の給与所得控除に245万円という上限が設けられる。また勤続5年以下の役員退職所得も増税となる。消費税引き上げに伴い、高額所得層への増税は今後も続く見込みだ。

■所得と控除の基本を理解しよう

 確定申告とは、自分の納める所得税がいくらか計算し、税金を納める手続きのこと。税を払い過ぎなら戻してもらえるし、足りなければ追加で納税することになる。そこで申告前に、所得税の仕組みを頭に入れておこう。

 所得税の計算には、4つのステップがある。まず、ステップ1。「収入」から必要経費を引いて「所得」を出す。

  • 所得税計算4つのステップ(図中のA~Dの詳細については、これ以降の図で解説)

 このとき、所得に含めなくてもいい「非課税所得」もある。会社員の通勤手当、宝くじの当せん金、雇用保険からの失業給付などだ。

 ステップ2では、各種所得を合算して、黒字・赤字を精算する「損益通算」を行う。

 10種類ある所得は大きく「総合課税」と「分離課税」に分かれ、それぞれ課税方法が違う(下の図A)。「総合課税」の対象となる所得は、給与所得や不動産所得、事業所得など計8種類。これらを合算して、合計額に税率を掛けて税額を出す。一方「分離課税」に分類されるものは、それぞれ税率が違うため他の所得と合算しない。退職所得や、不動産や株式の売却所得である譲渡所得などだ。

  • 図A 総合課税と分離課税の違い(*1=通常の利子は、「源泉分離課税」で申告不要 *2=上場株式等の配当では、計3つの課税方法がある。条件を満たしていれば申告不要、もしくは分離課税で確定申告、総合課税で確定申告を選ぶ)

  • 損益通算とは、図Aの10種類の所得を合計する際、損失が出た場合に他のプラスの所得と相殺すること。これができるのは上の4つ。頭文字を取って「富士山上」(不・事・山・譲)と呼ばれる。この4つ以外は、赤字が出ても、他の黒字の所得と相殺することはできない
 ステップ2のポイントは、赤字が出た場合、他の所得の黒字と損益通算(相殺)すること。これが認められているのは、「不動産所得」「事業所得」「山林所得」「譲渡所得」の赤字のみ。頭文字を取って「富士山上」(不・事・山・譲)と呼ばれる。例えば、副収入の不動産所得で赤字が出た場合、本業の給与所得の黒字と相殺して、所得の合計額を減らすことができる。

 ただし「譲渡所得」の中には、損益通算できないもの、できるものがある。生活必需品ではない別荘や宝飾品、また株式、土地・建物などの譲渡損失は損益通算できない。一方、損益通算が認められるのは、ゴルフ会員権、特定の居住用不動産などの譲渡損失。株式で損失が出た場合も、条件を満たせば配当所得と損益通算できる場合もある。なおゴルフ会員権で損益通算が認められるのは、2014年3月末までの売却分となる。

 こうして所得を合算して損益通算をしたら、次のステップ3へ。ここでは所得控除を差し引く(下の図B)。全部で14種類あるが、会社員なら11種は年末調整で控除されているはず。残り3種類の医療費控除、雑損控除、寄付金控除は自分で確定申告をする必要がある。

  • 図B 医療費控除などは、会社員でも場合によっては確定申告する必要がある

 ステップ4では、所得控除を引いた額に税率を掛け税額控除を引く。住宅ローン控除、配当控除などだ(下の図C、図D)。これらを引いた額が納税額となる。

 国税庁のホームページで申告書を作れば自動計算されるものの、税の計算の仕組みは押さえておこう。

  • 図C 所得税の速算表。課税される所得金額によって、税率や控除額は異なる

  • 図D 主な税額控除

[監修税理士]
柴原一(柴原一税理士事務所)、内藤 克 (税理士法人アーク&パートナーズ)、福田浩彦(福田浩彦税理士事務所)

(日経マネー 野村浩子)

[日経マネー2014年3月号の記事を基に再構成]

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