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「雑誌を買わない」世代に売れるファッション誌の秘密

日経エンタテインメント!

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NIKKEI STYLE

 不況と言われ続けている雑誌業界。今、ファッション誌では、情報の厳選やびっちり感など、コンテンツ力の高い媒体が元気だ。「雑誌を買わない」とされる世代に売れるファッション誌のヒットの理由を分析する。

雑誌業界でも特にファッション誌市場は激戦区だ。老舗の集英社、小学館、講談社から、付録が人気の宝島社まで各社が参入と撤退を繰り返す。

ファッション誌が百花繚乱のなか、雑誌をあまり買わないといわれる中学生、高校生、大学生という若い世代が読んでいるのは何か。

未開拓世代に着目し、成功

下の表は男性に売れている雑誌を世代ごとに10位まで並べたランキングだ。ファッション誌は若者世代では『smart』『キラリ!』などがランクイン。なかでも、『Samurai ELO』は中学生、高校生、大学生で、『週刊少年ジャンプ』に次ぐ2位。2006年の月刊化以降、着実に部数を伸ばし、現在は発行部数25万部を誇るという。

同誌はファッション記事を中心に、恋愛や性に関するコンテンツを展開し、メインの読者層は男子高校生。下の表の男性向けファッション誌マップを見ると、意外にもこの世代をターゲットに絞った雑誌はほかにないことが分かる。

『Samurai ELO』の編集部員は月に100人以上の男子、女子高校生に会うという。同誌の越後雅史編集長は「今の若い人は携帯やスマートフォンを持っていますが、情報が多すぎて整理できていない」と語る。

雑誌離れといわれる世代だが、効率よく情報を得るために雑誌に頼る人は意外に多いのだとか。「ムダを嫌う彼らにとって価値のある情報とコンテンツをそろえて信頼が得られれば、雑誌としての活路が開けると考えました。誌面はファッションが気になりだす15歳くらいの初心者にも分かりやすいように、情報をコンパクトにまとめた誌面作りを徹底しています」(越後編集長)と話す。

その象徴的なコンテンツが、着こなしのNGを明確にした企画(右上)。本来、着こなしに関してキッパリとNGを押し出す手法はファッション誌で少ないが、同誌ではハッキリとOK、NGパターンを解説する。「NGスタイルを載せることはOKの裏付けになるし、信頼を得るために必要だと選択しました」(越後編集長)。

月刊化後好調の『non-no』

男性誌に比べ、世代、ジャンルが細かく分かれ、雑誌ごとのカバー範囲がはっきりしている女性ファッション。なかでも注目なのは『non-no』だ。2011年に創刊40周年を迎える同誌は、2010年11月号より月2回刊から月刊に刊行形態を変更。月2回刊の際は一時、実売20万部を下回ったが、月刊化後に50万部完売までに回復。右肩上がりに調子を取り戻し、現在も好調をキープしている。

『セブンティーン』を経て2008年から同誌を手がける越崎義治編集長は、「今の時代、情報の早さではネットや携帯にかなわない。そこで、早さよりも、読者と時代のニーズを凝縮した、読み応えのある一冊にするために月刊化に踏み切りました。"着回し500"などの企画は、読む側に選択をゆだねる、振り幅の広さを意識しています。付録は実際に役立つ実用性の高さを考えていますね」と話す。

また、テレビなどメディアとの連携も積極的に進め、佐々木希や大政絢のように女優としても活躍するモデルを育て、雑誌の知名度を高めている。

ファッション誌の全体的な傾向としては、男女ともに、カッチリしたスーツやモード系よりもカジュアル系が人気だ。 男性では、20~30代で『MENS'NON-NO』『smart』が発行部数約20万部と堅調。30代以上では、海外男性セレブのラフな着こなしを取り入れた『Safari』が発行部数約12万部と、2010年4月の9万7000部から約2万部上積みしている。

女性ファッション誌は20~30代向けがボリュームゾーンで、発行部数40万部を超えるものも少なくない。現在は崩しすぎないカジュアルで、働く女性にとって実用的なスタイルを重視した『美人百花』、付録付きの『steady.』『InRed』が人気だ。また、少しナチュラル系に振った『リンネル』『LEE』などは、20代から50代まで通じるエイジレスなスタイルに加え、インテリアなどの情報も網羅し、幅広い世代の共感を呼んで躍進の兆しを見せている。

(ライター 金井真紀)

[日経エンタテインメント!2011年9月号の記事を基に再構成]

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