ガラス越しなら「密着写」 水族館写真いきいきと
水槽などのガラス越しに生き物や展示物などを撮影しようとしたら、反射による写り込みでうまく撮影できなかった、ということはないだろうか。写り込みは、ガラス面とカメラのレンズの間に光が入り込み、反射した映像と被写体の実像が重なることが原因で生じる。そんな失敗をしないようにするためにはどうすればいいのか。昨年5月にオープンした東京スカイツリータウン内の「すみだ水族館」(東京・墨田)で、様々なタイプの水槽の「ガラス越し撮影」にチャレンジしてみた。
■フラッシュ機能はオフに
水族館での撮影でまず最初にやっておきたいことは、iPhoneのフラッシュ機能をオフにすることだ。すみだ水族館をはじめ、ほとんどの水族館では生き物に刺激を与えないために館内でのフラッシュ撮影を禁止している。たとえフラッシュ撮影が許可されている場合でも、フラッシュ機能を使うとフラッシュ光が水槽のガラス面に反射して写真がひどくなってしまう。こうした写り込みの最も基本的な回避方法は、水槽のガラス面にiPhoneをぴったりと密着させて撮ることだ。
私が訪れた時、水槽はちょうどチンアナゴの餌やりの時間だった。いつもは砂の中に身を潜めているチンアナゴが首を長くして餌を求める姿はまるで森のよう。かわいいながらもちょっぴり不気味な姿をガラスに「密着写」した。さらに、サンゴが生育する水槽の手前からガラスにiPhoneを密着させて親子連れを撮影したところ、手前と向こうに2枚のガラスがあるにもかかわらず、写り込みゼロの奇麗な写真が撮れた。
■黒い紙で軽減
ガラスにぴったり密着させる撮影方法により反射はゼロになるが、半面、iPhoneを上下左右に傾けることができなくなってしまう。試しに約40羽のマゼランペンギンが泳ぐペンギンプールで、やや下から見上げるアングルにiPhoneを構えて撮影してみたところ、プール周辺にある喫茶店の明かりが写り込んでしまった。
そこで、ガラス面からiPhoneを離して角度を付けても反射を防ぐことができる方法を考えてみた。用意するのは黒い紙。紙でなくても黒い布やジャケットなどの上着があれば、それで代用は可能だ。
黒い紙をiPhoneの周囲に配置し、原因となった光源を遮断してみたところ、反射や写りこみのない写真を撮影することができた。
ところで、すみだ水族館の広報担当主任、村木健治さんによれば「ペンギンは水中では高速で泳ぐため、撮影に苦労する人が多い」とのこと。そんな時には本連載の「連写撮影編」で紹介した「連写アプリ」を利用すると決定的瞬間も逃さず撮影することができる。
■反射を味方に
こうした一連の方法を使っても、写り込みの範囲が広すぎるなど、どうしても反射をゼロにするのが難しい状況があり得る。そんなときは、思い切って反射する映像を取り込んでしまうのも一つの手だ。
ゆらゆらと漂うクラゲの2つの水槽は、90度の角度で隣りあって配置されていた。片方の水槽内を撮影しようとすると、どうしてももう一方の水槽が写り込んでしまう。そこであえて反射映像を含めて構図を作ってみた。すると、意外に幻想的な印象の写真が完成した。
報道カメラマンにとってガラスの反射は鬼門だ。逮捕された容疑者がマンションから姿を現したまさにその瞬間にガラス製の自動扉が閉まり、反射して撮影失敗。車内の人物を外から撮影したものの、フロントガラスの反射で失敗……とデスクに怒られたことは数知れない。そんな無数の失敗を糧にして、カメラマンたちは新たなテクニックや小道具による工夫を編み出してきた。失敗を恐れず「ピンチをチャンスにする」心構えが、撮影には一番大事なのかもしれない。
(写真部 小林健・寺沢将幸)
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