メタボ改善、シミ予防…コーヒーの正しい飲み方
日経ヘルス
コーヒーに含まれる注目成分は2つある。一つ目がポリフェノールの一種である「クロロゲン酸類」だ。
2つの注目成分
ポリフェノールとは、野菜や果実などの植物に含まれていて体の様々な機能を向上させ、いわゆる「体のさびつき」を防ぐ抗酸化物質。赤ワインのアントシアニンや緑茶のカテキン、大豆のイソフラボンなどもポリフェノールの仲間だ。
お茶の水女子大学大学院の近藤和雄教授は、首都圏在住の主婦109人を対象に調査を実施。食事や飲料からどの程度のポリフェノール量を摂取しているかを算出した結果「コーヒーからの摂取は47%と最も多く、日本人の代表的なポリフェノール摂取源であることがわかった」という。
近藤教授はさらに非喫煙女性を対象に調査し、1日にコーヒーを2杯以上飲む人は紫外線によるシミが少ないことも確認している。効果的な目安は「1日にポリフェノールを1000~1500ミリグラム摂取すること。コーヒーだけでとるなら3~5杯ほど」という。
もう一つの注目成分はカフェイン。脳の活動を活性化したり、疲労感をほどよく抑えたりする作用があるうえ、内臓脂肪の減少を促進するなどメタボの改善効果も期待できそうだ。
コーヒーと脂肪燃焼の関係について研究している東京慈恵会医科大学の鈴木政登教授は、コーヒー1杯を飲んだ後に30分間ランニングをする実験を行った。その結果「コーヒーを飲んで運動すると、通常よりもエネルギー消費量が高まり、その状態が5時間持続した」(鈴木教授)。カフェインをラットに投与した実験でも、体重と脂肪が減少することが分かった。
カフェインの「炎症を抑える作用」に注目するのは、東京薬科大学名誉教授の岡希太郎さん。「カフェインには抗炎症作用があり、肝臓や脳を炎症から保護することで、肝がんやアルツハイマー病などの病気を予防できる可能性がある」と話す。カフェインは薬の成分としても使われる。鎮痛作用があり、総合感冒薬に用いられるほか、片頭痛の予防にも役立つという。
コーヒー研究家でもある岡さんは「ペーパードリップで10グラムの粉にゆっくりと湯を注ぎ約50ミリリットルほど出すと、有効成分を最大限に引き出せて、かつおいしい」と話す。量が少なく冷めやすいのであらかじめカップを温め、濃すぎたら湯を入れて調整するとよい。
こうしたコーヒーの有効成分は、手軽な缶飲料などでも摂取できる。缶飲料、インスタントであっても、ともに焙煎した原料を抽出したコーヒーだ。
「クロロゲン酸類はコーヒーの生豆に最も多い。焙煎によって変化してクロロゲン酸そのものは減るが、抗酸化力は変わらない」とネスレ日本ウエルネスコミュニケーション室の福島洋一室長はいう。
妊婦は控えめに
一方で、飲み過ぎには注意が必要。「カフェインには胃酸の分泌を高める働きがある。胃酸過多の人は空腹時を避けるか、ミルクを加えると体内に吸収されるスピードがおだやかになる」(福島室長)。鈴木教授は「スプーン1杯程度の砂糖なら血糖値にほとんど影響を及ぼさない。脂肪燃焼効果を下げることもない」と話す。
ただ、カフェインの血中濃度が急激に高まると中枢神経系を刺激して、めまいや心拍数の増加、興奮、不安などにつながることもある。「10杯続けざまに飲む、というような過剰な飲み方は避けてほしい」と鈴木教授は注意を促す。
さらに、妊婦のカフェインのとりすぎは出生児が低体重となり将来の健康リスクが高くなる可能性がある。妊娠中の人は、製造工程でカフェインを除いたコーヒーにするか、1日1~2杯に控えるとよい。カフェイン抜きでも、クロロゲン酸類はしっかりとることができる。
体のさびつきを防ぐ抗酸化作用を発揮するポリフェノール。その効果を生かすなら日中こまめに飲むといい。「夜間は睡眠中に分泌するメラトニンなどが活性酸素対策になる。紫外線によるダメージを受ける日中は、コーヒーポリフェノールなどの抗酸化物質で対策をとるといい」(近藤教授)
またカフェインには体熱産生作用がある。薬膳カウンセラーの阪口珠未さんは「低血圧や低体温の人は、温かいコーヒーを朝に飲んで体にスイッチを入れる方法も有効」と話す。さらに活用したいのが日中の眠気対策。「疲れると脳では疲労物質がたまる。このときコーヒーを飲むとカフェインが疲労物質の働きを抑制して、眠気を防ぐ」と岡さん。そのうえ「昼寝の直前に飲めば、20~30分後にしゃきっと目覚められる」という。コーヒーの効果を毎日の元気にうまく役立てよう。
(日経ヘルス編集部)
[日経プラスワン2012年10月6日掲載]
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