ガンダム、エヴァ…後世に残したいアニメランキング
日経エンタテインメント!
テレビアニメ『進撃の巨人』の主題歌がNHK『紅白歌合戦』で演奏され、その映像が大みそかのお茶の間に流れた。映画の興行収入も、『風立ちぬ』の130億円を筆頭に、トップ3をアニメ作品が占めている──。エンターテインメントの枠を超え、近年その存在感を急速に増しているアニメ。『鉄腕アトム』が放送された1963年、わずか6本だったテレビアニメの制作本数も、2012年は222本(日本動画協会調べ)、劇場版も50本を超え、今、まさに隆盛を迎えている。
振り返れば、1960年代に始まったテレビアニメは、ベビーブームを迎える1970年代、エンターテインメント産業華やかなりし1980年代に、数々の名作を生み出した。大人になった我々は、今なお鮮やかに、当時の感動を思い出すことができる。そういった作品が、現在のブームにつながる基盤を築いている。
美しく共感できる絵、心情をつまびらかにするキャラクター、ドラマ性の高いストーリー──「日本人にしか作れない」と世界も俄然(がぜん)注目するアニメ。今、見返すべき、また、永遠に残したい我々の心を打った名作は何か。まずは、アンケートから明らかになった「好きな作品」ランキングを紹介していく。
総合1位は『機動戦士ガンダム』
「総合」1位に輝いたのは、男性票を中心に広い世代から満遍(まんべん)なく票を集めた『機動戦士ガンダム』。1979年に放送を開始し、ロボットブームを巻き起こしたまさにエポックメイキングな作品だ。『ガンダム』を冠にしたシリーズ作品が数年おきに作られているため認知度は抜群だった。今回は、すべての始まりの"ファーストガンダム"に票が集まった格好だ。
2位の『ドラゴンボール』は、25~34歳の若い世代では第1位。テレビ放送終了から15年以上が経過してもなお人気の高さを証明した。純粋に強さを追求しながらも、地球や仲間を守るために戦う悟空の熱いバトルは、時代や世代を超えて胸を熱くさせている。
宮崎駿監督作品のトップに立ったのは、3位に入った『となりのトトロ』。5位には『天空の城ラピュタ』が入るなど、50位までに6作品がランクインする強さを見せつけた。
4位にはスペースファンタジーのフラッグシップ『宇宙戦艦ヤマト』が。後続には、6位『ドラえもん』、7位『ルパン三世』、8位『サザエさん』と長期にわたりテレビ放送されているシリーズ作品が続く。同率8位の『銀河鉄道999』は、第2次アニメブームの急先鋒(せんぽう)として面目躍如。
10位にはジャンプアニメの『CITY HUNTER』と、1990年代の作品から唯一のトップテン入りとなった『新世紀エヴァンゲリオン』が並んだ。
引き続き、部門別ランキングを紹介する。
1960年代(昭和35~44年)に放送されたアニメ作品では、2014年にテレビ放送45周年を迎えた『サザエさん』が、各世代から圧倒的票数を集めて1位となった。
サザエさんに対しては、「家族の大切さを学んでほしい」(40代女性)、「日本の文化が学べる」(30代女性)など、子どもの情操教育に役立つと感じている人が多く、「子どもに見せたい」ランキングでも4位に入った。最高視聴率は1979年に記録した39.4%で、アニメ歴代2位の記録。日曜の夜を彩る日本一のホームドラマが、最高得票数を獲得した。
2位には40代、50代の女性票を集めた『魔法使いサリー』が入った。「最後のシーンは感動的」(40代女性)、「夢がある」(40代女性)など、"乙女心は永遠"であることを証明した。
3位は第1次アニメブームを作った『ゲゲゲの鬼太郎』がランクイン。5度にわたるシリーズ化で、知名度は十分。
さらに下位を見てみると、9位と11位には60年代後半に一世を風靡したスポコンアニメが登場する。『巨人の星』のちゃぶ台返しや大リーグ養成ギプス、『アタックNo.1』の回転レシーブは印象的だった。後にリメイクされた作品が強さを見せた。
「総合」で上位に入った『機動戦士ガンダム』や『宇宙戦艦ヤマト』を抑えて、1970年代(昭和45~54年)で1位に輝いたのは『ドラえもん』。藤子・F・不二雄原作で、1973年に日本テレビで初めてアニメ化された。
現在、テレビ朝日系で放送中の作品は1979年にスタートした。その人気は衰えることなく、30年を超える長寿番組になっている。
ドラえもんを支持する意見として一番多いのは、やはり「四次元ポケットは魅力的」(40代男性)といった、未来の便利な道具が取り出せるドラえもんのポケット。さらに「『のび太と鉄人兵団』は名作」(20代男性)など、劇場版作品を推す声も若い男性に多く見られた。
また、4位と6位に『ルパン三世』の劇場版とテレビシリーズがランクインした。累計するとダントツの1位となり、人気の高さを見せつけた。
1970年代は、女子向け作品が一気に増えているのも特徴。『アルプスの少女ハイジ』『キャンディ・キャンディ』『はいからさんが通る』『ベルサイユのばら』『エースをねらえ!』など、児童文学から歴史ラブロマンまで、ラインアップも華やかだ。
1980年代(昭和55~平成元年)は、「スタジオジブリ」「少年ジャンプ」「少年サンデー」「ロボット」の4強時代となった。
「スタジオジブリ」からは、『天空の城ラピュタ』『となりのトトロ』『風の谷のナウシカ』『魔女の宅急便』の4作がトップ10に入り、国民的アニメの地位を盤石のものにした。
「少年ジャンプ」からは『ドラゴンボール』を筆頭に、『CITY HUNTER』『北斗の拳』など7作品がランクイン。『うる星やつら』でラブコメブームを形成した「少年サンデー」は4作品。そのうち3作品が高橋留美子原作というハイアベレージをたたき出している。
「ロボット」は、70年代を代表する『機動戦士ガンダム』の続編が2作と、ロボットに歌と恋愛を取り入れて人気を博した『超時空要塞マクロス』が17位に入った。
そうした中、ひとり気炎を吐いているのは、13位の『笑ゥせぇるすまん』だ。人間の内面を露にするブラックコメディーは、主に男性から支持を集めた。
1990年代(平成2~11年)に放送されたアニメの人気トップは『ちびまる子ちゃん』。さくらももこのエッセー風マンガが原作で、テレビ視聴率はアニメ歴代最高の39.9%、主題歌はミリオンセラーを記録した。
アニメ化に当たり、リアリティーを追求するために「原作のさくら先生と同世代の女性の脚本家を多く登用した」(フジテレビ総合開発局長の清水賢治氏)と言う。その狙い通り、アニメを見ないとされる20代、30代の女性を取り込むことに成功。その結果が、このランキング1位にも表れた。
2位の『名探偵コナン』は、テレビシリーズはもちろん、劇場版シリーズも人気で、20代、30代の男女の票が集まった。
また、この2作以外に、『クレヨンしんちゃん』や『忍たま乱太郎』など、15年を超える長期アニメも多数ランクインしているのもポイントだ。
「社会現象になった」(40代男性)との意見を集めた『新世紀エヴァンゲリオン』は3位。劇場版興行収入が60億円超えの『ONE PIECE』は、男女とも50代の支持が弱く4位に留まった。
今回のアンケートでは、「一番泣けると思うアニメは?」「子どもに一番見せたいアニメは?」「悪役が印象に残っているアニメは?」についても聞いた。
アニメ史に残る最終回に女性が泣いた
「泣けるアニメ」でトップとなったのは『フランダースの犬』。「怒とうの不幸ラッシュに泣けてくる」(40代女性)、「最後のシーンは涙なしには見られない」(20代女性)、「理不尽さに泣ける」(40代女性)など圧倒的な女性票を獲得し、2位にほぼダブルスコアを付けてぶっちぎりの1位だ。
主人公ネロの教会での最後のセリフ「パトラッシュ…(中略)なんだかとても眠いんだ…」は、泣けるシーンとしてあまりにも有名。同じく「世界名作劇場」の『母をたずねて三千里』も3位に入った。
2位には、戦火の中で懸命に生きようとする兄妹をテーマにしたスタジオジブリ作品『火垂るの墓』(高畑勲監督)がランクイン。「子どもに重ねて見てしまう」(30代男性)など、子を持つ親からのコメントが目立った。また、「戦争の恐ろしさがリアル」(40代女性)という声があったのは、10位の『はだしのゲン』だ。
「泣けるアニメ」の分野では、名作劇場系と戦争ものが票を二分した格好となった。
親は日本の文化と友情を学ばせたいか……
「子どもに見せたいアニメ」では、市原悦子と常田富士男の独特の語り口が魅力の『まんが日本昔ばなし』が、100票以上を獲得して1位に。「子どもと一緒に見たい」(30代女性)と、「次世代に日本文化を残したい」(55歳女性)、この2つの意見が大半を占めた。レギュラー放送は消滅したが、不定期で単発スペシャルが放送されることもある。
男性から人気が高かったのが2位の『ドラえもん』だ。「秘密道具の想像力を学んでほしい」(20代男性)といった教育的観点からの意見もあれば、「オシシ仮面が好きだから」(20代男性)など過去に見た好きな話に言及する人も。
1970年代の作品が強さを見せるなか、1990年代で唯一ランキングに入ったのは、1999年放送開始の『ONE PIECE』。友情を重視する回答者から支持を集めた。ほかにはおなじみのジブリ作品や、とんちで問題を解決する『一休さん』も人気だ。
悪役だけど憎めないあの3人組の番組がトップ
40代、50代の票を獲得して「悪役が印象に残っているアニメ」で1位に入ったのが『タイムボカンシリーズ ヤッターマン』。そこに登場する敵といえば、女ボス・ドロンジョとメカ担当ボヤッキー、そして力担当トンズラーの3人からなるドロンボー一味だ。
ヤッターマンを支持する声で最も多いのが、「憎めない悪役」(40代女性)という意見だ。悪いことをしようとするけれど、なんだか空回りして悲惨な目に合ってしまう、ちょっとゆるい感じが憎めない印象を与えたようだ。中には「敵が主役」(50代男性)といった声も見られた。
2位は、「敵が続編で味方になるはしり」(40代男性)、「存在感がすごい」(30代男性)との理由で、冷酷な独裁者デスラーに票が集まり『宇宙戦艦ヤマト』がランクイン。
3位には数多くの敵キャラが存在する『ドラゴンボール』、4位には、赤い彗星(すいせい)シャアの男女問わない人気により『機動戦士ガンダム』が入った。
(ライター 山内涼子)
[日経エンタテインメント! 2014年3月号の記事を基に再構成]
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