郷愁再燃 「あまちゃん」以降、拡大続く80年代ブーム
日経エンタテインメント!
2013年、高視聴率を連発し、一大ブームとなったNHKの朝の連続テレビ小説「あまちゃん」。この番組をきっかけに注目度が高まったのが、1980年代のアイドルやエンターテインメント作品だった。小泉今日子演じる天野春子はアイドルになることを夢見て、1984年に故郷の北三陸を捨て、東京に出てくるという設定。劇中では当時の歌番組の映像なども流され、中高年男性なども関心を高めた。
2013年8月には、春子の部屋で流れていたという設定で、80'sのヒット曲を集めたコンピレーション盤「春子の部屋」がリリースされ、オリコン週間チャートのトップ10入り。同年12月4日に生放送されたフジテレビ「FNS歌謡祭」は、薬師丸ひろ子、松本伊代、斉藤由貴、南野陽子など80年代アイドルが、AKB48ら今のアイドルとコラボレーションするコーナーを大きく展開し、番組平均視聴率18.8%の好結果を収めた。
80年代の人気アーティストのベスト盤を高音質CDで
あくまでも「あまちゃん」ありきと思われたこの80'sブームだが、番組が終わり、年が明けてもその勢いはまだ収まっていないようだ。
1980年代作品の再発売が相次いでいる。ソニー・ミュージックジャパンインターナショナルは、80年代に人気を集めた洋楽アーティストのベスト盤を高品質CDの新規格「Blu-Spec CD2」でリリースする「80'sザ・ベスト」を展開中。マイケル・ジャクソン、シンディ・ローパー、ホイットニー・ヒューストンなど、20タイトルが発売された。
邦楽では、昨年創立35周年を迎えたエピックレコードが、ラッツ&スター「め組のひと」、TM NETWORK「Get Wild」など、当時のヒット曲を集めたアルバム「黄金の80'sベストヒッツ35曲!~Epic35~」の配信をスタートしている。
80年代原作映画が相次ぐ
一方、映画でも80年代マンガの実写化やヒット作のリメイクなど、当時の人気エンターテインメントをベースに、今の技術とキャストで「新作」を作る動きが活発だ。
「あまちゃん」の主演で、一躍、最注目若手女優となった能年玲奈。その次作は、夏に公開予定の映画「ホットロード」だ。紡木たくによる原作は、1986年から1987年まで「別冊マーガレット」に連載された少女マンガ。悩みや不安を抱える少女・和希が暴走族のリーダー・春山と出会い、不良の世界に居場所を見つけていく。
1989年に邦画の配給収入No.1となった、宮崎駿監督のアニメ「魔女の宅急便」は、魔女の血を受け継ぐ少女・キキが独り立ちしていく姿を描くもの。もともと同名の児童文学が原作だが、今年は「呪怨」などのホラー作品で知られる清水崇監督により実写化される。ほかにも「機動警察パトレイバー」「聖闘士星矢」など、80年代にルーツを持つ作品の映画化は多い。
「荻野目ちゃん」がNo.1に
こうした80's作品の人気は一過性のブームで終わらず、「ジャンル」として定着する可能性が高い。理由のひとつが、音楽や映像配信サービスの充実だ。前述の「FNS歌謡祭」では、三代目J Soul Brothersとともにパフォーマンスを披露した荻野目洋子のダンスが、当時と変わらぬキレだったことを多くの人が称賛。すると、この日歌った「ダンシング・ヒーロー」が、配信サービス「レコチョク」の歌謡曲・演歌部門で週間1位を記録した。今は以前とは比較にならないほど手軽に旧作を楽しめるのだ。
1980年代当時の若者が30代後半から40代以上の親世代となったことも大きい。1970年代の特撮作品「仮面ライダー」は、「平成ライダー」シリーズとして復活後、子どものころに見ていた親世代も取り込み、人気を拡大した。大人を取り込みたい業界事情もあり、「二世代」を狙った80's作品がこれからも出てくるのは間違いないだろう。
(日経エンタテインメント! 山本伸夫)
[日経エンタテインメント! 2014年3月号の記事を基に再構成]
ワークスタイルや暮らし・家計管理に役立つノウハウなどをまとめています。
※ NIKKEI STYLE は2023年にリニューアルしました。これまでに公開したコンテンツのほとんどは日経電子版などで引き続きご覧いただけます。
関連企業・業界