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3つ星スイーツ

ケーキはアートじゃない 「星の数」No1パティシエの思い リリエンベルグ・横溝春雄氏インタビュー

2013/5/2

 スイーツの専門家らが実際に食べ比べて、極上の商品だけを星付きで紹介している「今週の3つ星スイーツ」。毎回、人気も実績もトップクラスのシェフが競い合う中で、星を最も多く獲得しているのがリリエンベルグ(川崎市)だ。創業25年の店の主人は日本人では初めてオーストリアの洋菓子店「デメル」で修業した横溝春雄シェフ。日本洋菓子協会連合会の常任理事も務める横溝シェフに、菓子作りに込める思いと、日本のスイーツの将来について聞いた。

 今週の3つ星スイーツは2010年3月にスタート。これまで3年間に、リリエンベルグはショートケーキの「いちごのケーキ」が2度3つ星に輝いたほか、9~10種類の焼き菓子を詰め合わせた「ミックスクッキー」でも3つ星を獲得。さらに「さくらのムース」と「ナポレンオンパイ」(イチゴのミルフィーユ)、「ミルヒ」(杏仁豆腐)で2つ星、「スイートポテト」で1つ星をそれぞれ取っている。星の数は合わせて16と、この連載で取り上げた店では群を抜いて多い。

 ――リリエンベルグの店主としてこだわっていることは何か。

「お菓子はおいしいだけでは売れない。心をどれだけ入れ込めるか」と横溝シェフ

 「ケーキは決してアートじゃない。子どもから大人まで、誰もが食べたときに温かみを感じてくれるような菓子を作りたいと、40歳で独立して以来、思い続けている。何より心がけているのは素材の味を大切にすること。イチゴ、マンゴー、ラフランスなど北海道から沖縄まで十数軒の農家と直接契約している。農家が届けてくれる新鮮な食材をなるべく早く使い切る」

 「例えば『モンブラン』は、収穫したての栗をその日のうちにシロップ煮とマロンペーストに下ごしらえする。普通、モンブランはバニラエッセンスや洋酒などで香りを付ける店が多いが、うちは一切入れない。栗が新鮮だから必要ない。看板メニュー『ザッハトルテ』や『ミルヒ』に使う長野産のアンズも特別な食材。開店当初、中国産のアンズを使っていたこともあったが、長野県産のものに出合い驚いた。実も種も香りが豊かで、中国産と比べて配合量が3分の1から4分の1で十分だし、香料やエッセンスも必要ない」

 「こういう食材を届けてくれる農家のおかげで、うちのケーキができる。だから農家と一旦契約したら、浮気はしない。付き合いが長いからこそ、いつもいい食材を届けてくれている」

本家デメルよりおいしい?横溝シェフこだわりのザッハトルテ(川崎市麻生区)

 ――ザッハトルテで世界的に有名なウィーンの洋菓子店「デメル」で、日本人として初めて修業した。

 「実を言えば、本場のザッハトルテはおいしくなかった。神田にあった洋菓子店『エスワイル』で5年間修業した後、親方に紹介状を書いてもらい、本場へ。まずスイスやドイツで3年間、その後、ウィーンの『デメル』で2年間修業した。伝統あるお店だが、ザッハトルテは甘すぎるし、食感も重い。伝統を守ることはいいことだし、現地の味を学べたことはとてもいい経験だった。でも、帰国してウィーン菓子を作るときは、自分がおいしく感じるザッハトルテを作りたいと思った。うちの店のザッハトルテは基本の配合はデメルと同じ。でもメレンゲの混ぜ方を変えたり、グラニュー糖を粉砂糖に変えるなど自分なりの工夫で、ふんわり軽い食感に仕上げている」

リリエンベルグが過去に星を獲得したスイーツ一覧

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