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香港アートブームは「幻」か アジア現代美術の課題

2014/4/24

 有名ギャラリーが相次ぎ進出する香港、美術コレクターがひしめく台湾――。アートをめぐる動きから、アジアの経済や社会情勢が見えてくる。キュレーターのロジャー・マクドナルド氏を司会役に、コレクターのルディー・ツェン氏、アーティストのパク・シュウン・チュエン氏、キュレーターのフー・ファン氏、「NIKKEI ASIAN REVIEW」発行人の小柳建彦が台湾や香港、日本におけるアートの動向と課題を語った。(以下、敬称略)

ルディー・ツェン(曾文泉) インディペンデントキュレーター・アートコレクター。1959年台北生まれ。台北を拠点に活動。20年以上前に近代美術の収集から始まり、中国、日本を含むアジア、欧米の現代アートまで幅広いコレクションを持つ。2013年「堂島リバービエンナーレ」(大阪)、14年「アート・ステージ・シンガポール」(シンガポール)など、近年は展覧会企画も手掛ける

ツェン まず、現代アートとはなんぞや、という問いから始めましょう。一ついえるのは、現時点で重要性は感じられなくても、将来、価値を持つかもしれないものだということです。

 私が住む台湾には有力なコレクターが多くいます。インド美術を3年で500点集めた人、東南アジアの特定地域の作品を集めている人がいる。影響力のある現代美術ギャラリーがかつてあったこと、「第1世代」と呼ばれる日本で勉強した優秀な美術作家たちがいたことなどが背景にはあります。

■困難な社会状況を創作の糧に

パク・シュウン・チュエン(白双全) アーティスト。1977年中国生まれ、84年香港に移住。2003~07年まで香港紙「明報」に作品を毎週掲載。第3回横浜トリエンナーレ(08年)、第53回ヴェネチア・ビエンナーレ(09年)香港代表など多数の国際展に参加。英国テートモダン美術館などに作品が収蔵されている

 私がコレクションするのは、まず、歴史的な価値や意味を持つ作品です。また、アジアの現代写真や、日本、フィリピン、中国のそれぞれの年代や地域で重要な作家にも関心を持っています。今はまだ評価が定まらないアジアの新世代作家たちも、この先どう活動していくかによって作品の価値が決まっていくでしょう。

パク 私はアーティストですが、ツェンさんのようなコレクターの関心を引けるか、ちょっと心配です(笑)。香港を拠点にしていますが、アジアで制作する上で限界を感じる状況があり、その困難を乗り越えることで表現を打ち出してきました。私にとってアートとは「今」を作品化することであり、今の限界をふまえて表現すること。そして、アーティストはリアルな状況を見る人に感じさせるものをつくる必要があると考えています。

 例えば、私は香港の新聞紙上で作品を発表しました。そこでは日常よく目にするものや、政治的、社会的状況を題材に、新たな視点を持ち込みました。街や都市を「観察すること」が私の作品のスタイルです。日々浮かぶ作品のアイデアをギャラリーに展示したこともあります。誰もがアーティストのアイデアをもとに作品をつくれるようになったら、アート市場はどうなるか、と問いかけたかった。

パク・シュウン・チュエン「Valleys Trip」(2007年) 東京旅行中に買った分厚い地図をもとに、見開きページの間に埋まった場所を訪ねるプロジェクト
パク・シュウン・チュエン「Valleys Trip」(2007年)
パク・シュウン・チュエン「2011.7.27-2011.11.14」(11年、香港アートセンター) 作品のアイデアを文字にして、ギャラリーに展示した

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