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幼くなった鉄腕アトム? アフリカで変身したワケ

編集委員 小林明

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NIKKEI STYLE

日本初の国産アニメ「鉄腕アトム」がアフリカ大陸でよみがえる――。

手塚プロダクションはリメーク版「ロボットアトム」をナイジェリアの大手民放と共同制作し、3月22日から現地での放映を始めた。「鉄腕アトム」は1963年に日本で放映されて以来、日本や米国でリメークを3回しているが、新興国との共同制作は初めて。

なぜリメーク版をアフリカと共同制作することにしたのか? アフリカの中でもなぜナイジェリアに目を付けたのか? 背景を探ると、日本のアニメ業界が直面する厳しい課題や国際市場の大きな環境変化が見えてくる。「鉄腕アトム」輸出ビジネスの最前線を追った。

日本初放映は東京五輪の前年

まず「鉄腕アトム」の歴史をざっくりと確認しておこう。

「鉄腕アトム」は漫画の神様、手塚治虫氏の代表作品。もともとは漫画「アトム大使」が前身。その脇役の少年ロボット、アトムを主人公にした漫画「鉄腕アトム」が連載され、63年から日本初の国産アニメ(白黒)としてテレビ放映された。

21世紀の未来を舞台に、人間と同等の感情を持った少年ロボットが、時に失敗を重ねながらも敢然と悪に立ち向かう……。そんな筋書きだ。

放映開始はちょうど東京オリンピックの前年。新幹線や高速道路など社会インフラの整備が急ピッチで進み、あこがれのテレビが一般家庭に普及し始めた時代。最高視聴率が40%を超えるなど少年少女から絶大な人気を博した。

時代ごとにリメーク繰り返す

「実は、鉄腕アトムは時代に合わせてリメークを繰り返してきたんです」。手塚作品の版権を管理する手塚プロの清水義裕・著作権事業局長はこう振り返る。せっかく子どもファンをつかんでも、時がたてば大人になり「鉄腕アトム」を卒業しまうからだ。「もはや鉄腕アトムのアニメを見たことがある子どもは少なくなった。定期的にリメークして新たなファンを開拓し続けないと、ビジネスとして死んでしまう」と清水さんは言う。

最初のリメークは80年。白黒からカラーに衣替えし、デザインや設定もやや現代風にアレンジした。2回目は2003年。アトムの誕生日(03年4月7日)を記念したリメーク作品で米国などでも放映するため、武器や暴力シーンを極力減らした。3回目は09年。アニメ映画で米ハリウッドの制作スタジオでフルCG画像を使って制作した。

そして今回が4回目のリメーク。これが大まかな流れである。

キャラクターを大幅に刷新

4回目のリメーク版がどんな内容なのか簡単に紹介しよう。

舞台はロボットと人間が共生する架空の街「ロボタウン」。主人公のアトムには人間やロボットの仲間がおり、悪者グループがアトムたちに悪事を仕掛けようとする。教室や研究所、町外れの冒険山などでキャラクターたちが次々と活躍するという設定だ。

人間の仲間はキナコ、ミッチー、ケン、ポール、ロボットの仲間はピッコ、レジー、タック、悪者グループはフラー博士、ハムエッグ、ゴラー。お茶の水博士はアトムの親代わり。ヒゲオヤジは学校の先生だ。アトムやお茶の水博士、ヒゲオヤジ、ハムエッグなど原作でもおなじみの主要人物を除くとキャラクターは大幅に入れ替わった。

今回放映するのは8話(1話15分)。カーレースやリサイクルなど身近なテーマで毎回ストーリーが展開するが、原作のように壮大な物語性はない。キャラクターの動きやセリフの面白さを単純に楽しむことに重点を置いている。

対象は6歳以下と原作より低め

アトムの表情は原作よりも幼い雰囲気が漂う。「対象は6歳以下で原作よりも低めに設定した」と清水さん。新興国向けなので、文化や習俗の違いが強調されないようにするためだ。原作に大幅に手を入れ、まったく新しい作品に仕上げた。

毎週土曜日に2話ずつ、4週間放映する。セリフは英語だが、将来はフランス語など複数の言語にも吹き替える予定。4月に仏カンヌで開催される国際番組見本市にも出品し、新たに提携先も増やす計画だという。アフリカなどの新興国を中心に先進国にも売り込みたい考えだ。

しかし、手塚プロはなぜアフリカとの共同制作に踏み切ったのだろうか?

少子化・ネット・海賊版……輸出が半減

右のグラフを見てほしい。日本のアニメ制作会社の輸出額の推移である。05年の313億円をピークに減少傾向が続いているのが分かる。最新の12年は144億円でピーク時の半分以下の水準だ。

電通コンサルティングの森祐治・取締役によると、(1)リーマン・ショックに伴う世界経済の減速(2)少子化が進む先進国市場の伸び悩み(3)ネット配信の普及などによる単価減少(4)海賊版による被害(5)尖閣諸島を巡る日中関係の冷え込みによる中国への輸出減速――などがその原因とみられている。

日本のアニメ業界はジレンマを抱えている。

日本国内は少子高齢化が進み、アニメ市場は頭打ち状態。比較的勢いがあるのは深夜帯の成人向けアニメだが「海外では一部のマニアを除けば、成人がアニメを視聴する習慣がない。だから日本で勢いのある成人向けアニメをそのまま輸出しても市場規模がなかなか膨らまない」(森さん)。さらに、最近力をつけてきた韓国、中国、タイなどのアニメに激しく追い上げられている。

ナイジェリア人口は2050年で世界4位に

海外に輸出するなら子どもをターゲットにしないとビジネスにつながりにくい。日本アニメはすでに欧米やアジア、オセアニアなどには浸透しているが、南アを除くアフリカ市場は未開拓。アフリカは子ども人口も多く、アニメ業界にとっては成長が見込める。

日本動画協会によると、12年の日本のアニメ制作会社の地域別輸出契約件数はアジアが最大で49.8%(659件)。次いで欧州の24.6%(325件)、アセアニアの9.3%(123件)、北米の8.8%(116件)。一方、アフリカは0.5%(6件)しかなかった。

特にナイジェリアの人口は約1億7000万人でアフリカ最大。国連の予測によると、2050年には3億9000万人に急増し、インド(17億人)、中国(13億人)、米国(4億人)に次ぐ世界第4の人口保有国に浮上する見通し。

「こうした狙いもあり、ナイジェリアを突破口にアフリカ市場の開拓に乗り出すことにした。息が長いビジネスにするために対象年齢も6歳以下と低く設定した」と手塚プロの清水さん。同社の13年3月期の売上高は約20億円でその約6割が「鉄腕アトム」関連。「鉄腕アトム」が再生できるかどうかは手塚プロにとっても死活問題なのだ。

研修生3人が日本でアニメ初体験

共同制作でタッグを組むのはナイジェリア3位の民放テレビ局、チャンネルズTV。手塚プロは昨年12月から3カ月間、ナイジェリアから研修生3人(男性2人、女性1人)を受け入れた。「まったく基礎から勉強してもらい、実際にアニメのカットを描いてもらった」(清水さん)

男性2人はCGアニメ制作の経験があるが、カットを鉛筆で書くのは3人とも今回が初めて。アニメの制作過程やシナリオの擦り合わせなどの会議にも参加し、「アニメの本場である日本で貴重な体験ができた」と喜んでいたという。ナイジェリア初の国産アニメの制作プロジェクトも動いており、手塚プロもこれを支援する意向だ。

翻案で「鉄腕アトム」を再生

手塚プロの本社には、所狭しと「鉄腕アトム」のキャラクター商品が並ぶ。

原作がリメークで話題を呼べば、関連ビジネスが膨らみ、巨大な利益を生み出す"打ち出の小づち"になる。手塚プロでは「鉄腕アトム」の原作をもとに別な作品を仕上げる「翻案」に柔軟な姿勢をとっており、これまでにも漫画家の浦沢直樹さんが「鉄腕アトム/地上最大のロボット」をモチーフに漫画「PLUTO(プルートウ)」を生み出した。

「原作をもとに新たに創造した作品にも独自性がある。否定するより、それを認めて別な形で再生した方が社会にも役に立つ。知恵を絞って有効活用すべきだ」と清水さん。

課題は多いが、成功すれば、クール・ジャパン戦略のひとつの手本になりそうだ。

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