旅行・レジャー

日本の歩き方

鳥取砂丘の真ん中で「YOGA」とさけぶ

2014/6/30

 実は、砂丘が観光地として地元で認められるようになったのは、そんなに古い話ではない。1950年代、眺望は危機にひんしていた。旧陸軍から国に管理が移った後、緑地化する計画が持ち上がったためだ。

砂丘のメーンの見どころ「馬の背」は高さ47メートルにも及ぶ(鳥取市)

 ニュー砂丘荘の女将、近藤ちい子さんは「砂が飛んで住宅や田畑に被害が出ることもあり、防砂林を整備して田畑にしようという話だった」と振り返る。植林派と保存派の間で「緑化戦争」と呼ばれたそうだ。

 鳥取を二分した議論は砂丘を含む山陰海岸が国立公園に指定されたことで終息した。ただ多くの防砂林がそのまま残されたため、草地は広がり続けた。

 林田さんによると、1990年代初めには、現在、砂地になっている場所の30%以上が緑に覆われていたそうだ。その後、景観や植生の保護のため、防砂林の伐採や除草作業が進み、今の姿に。砂地は回復傾向にあり「年間50センチずつ拡大している」という。

 雨はさらに強くなった。「雨も砂丘と同じで自然のものです。終わりにしましょう」との石谷さんの声で午後9時前後にヨガは打ち切りになった。

 ヨガマットを巻き上げると、当初は暗くて気づかなかったが、マットを敷いた場所だけ白く区切られるほどの雨だった。ただ、マットの場所は日中の太陽の熱を帯びて、ほんのりと暖かい。砂丘という自然ならではのものだろう。

抜群の開放感

 参加者の1人で鳥取市在住の北浦里江さんに感想を聞いてみた。日ごろヨガをしているという北浦さんは「部屋の中でやるヨガは、体を伸ばすポーズでも無意識に体を縮めていたよう。遮るものがない砂丘で、思いっきり体を伸ばすことができた」と答えてくれた。

 一行は再び、バスでニュー砂丘荘へ。雨が小降りになったこともあり、到着後に外にでて砂丘の方を見ると、先ほどまで居た馬の背の陰がくっきりと見えた。その先には日本海。満月の大潮ということで漁船の出航が少なかったのか、山陰の初夏の風物詩、いさり火の行列は見ることができなかった。

 夜のヨガ初体験から一夜明けた14日。リベンジと意気込み、今度は日本海に沈む夕日が目玉のサンセットヨガに参加してみた。この日の鳥取市は、日中は青空ものぞく天気。集合場所からヨガを行う馬の背近くまで歩いていく間、雲は薄く、太陽は少しずつ夕日の赤色に変わっていった。

 ただ、ヨガが始まった午後6時すぎ、太陽は厚い雲の向こうに隠れてしまった。「いずれ」との思いもむなしく、この日は顔を出さないまま。夕日にヨガのポーズのシルエットという写真は結局、撮れずじまい。「やはり日ごろの行いが悪いのか」。少し落ち込んでしまった。

 しかし、何も遮るものがない開放感たっぷりの砂丘のなかで、再びヨガを行い、心地よさを存分に味わった。「次は朝日を拝めるサンライズヨガにトライするしかない」。日ごろの行いが良いことを証明するためにも、強くそう思った。(文=鳥取支局長・船越純一 写真=尾城徹)

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