ライフコラム

生きものがたり

クワガタムシ「大人飼い」ブームがもたらしたもの

2013/7/6

 東北でも梅雨明けが近づき、夏の訪れを告げるニイニイゼミの声が響くなか、各地の雑木林でコクワガタやノコギリクワガタ、ミヤマクワガタの姿が見られるようになった。コナラやクヌギのほか、西日本はアキニレ、北日本ではヤナギなどの樹液にもクワガタムシが集まる。

夜の樹液にいたノコギリクワガタ=写真 永幡嘉之

■クワガタムシの季節は夏休みとともに

 農村に住む子供たちは近所の林の中に、樹液が出てクワガタムシが集まる自分だけの「秘密の木」を見つけている。クワガタムシの仲間は6月から出現しているが、面白いことに7月20日を過ぎると子供たちが探し回った跡がにわかに増え、日中も活動するノコギリクワガタの姿を見かける機会はこの日を境に減る。

 「クワガタムシの季節は夏休みとともに始まる」という季節感が世間で通用しているということだろう。人海戦術で雑木林を見回る子供たちにかなうはずがなく、知人の昆虫写真家も「撮影するなら夏休み前に限る」と話していた。

 子供たちにとって、クワガタムシ採りは特別な道具を要しない等身大の遊びといえる。成果を得るには、早起きして雑木林を見回る努力に加えて、林の中で生きものを探す研ぎ澄まされた感覚が必要だ。たとえマニュアル本を熟読しようとも、誰にでも同じように採れるものではなく、採集を通じて子供たちが学ぶことも多いだろう。

昼間、樹液に集まるオオムラサキとカナブン=写真 永幡嘉之

■「子供の遊び」から「大人の趣味」に

 1990年代後半から全国的に巻き起こったクワガタムシの飼育ブームはこの遊びの世界にいくつかの大きな変革をもたらした。

 一つは、たくさん集めて採る方法が普及したこと。樹液を出している木を探すのではなく、バナナなどの食べもので作ったトラップを使って誘引する方法が広く知れ渡った。クワガタムシを野外で「探し出す」ことから「集める」ことに変化したのだ。雑木林を歩くと、腐ったバナナが木々にぶら下がる光景を目にすることが増えた。

ライフコラム