健康・医療

医人たちの挑戦

救急医療の役割分担を明確化 鳥取大救命救急センター長・本間正人さん(3) 崩壊寸前の救命医療を再建

2011/10/2

 鳥取大学医学部付属病院救命救急センターがパンク状態に陥った一因は軽症患者の多さでした。そのため地域の救急医療体制の再構築と住民への啓蒙活動が重要でした。

救急医療の役割分担の明確化で鳥取大病院は本来の3次救急に専念できる環境が整いつつある

 鳥取大病院のある鳥取県西部地区では地域医療計画で、軽症の急患は医師会が設置する時間外急患センターや輪番病院が、入院治療が必要な場合は2次救急医療施設が、生命が危険な重篤患者は3次救急医療施設の鳥取大病院が担当すると決まっていましたが、徹底されていませんでした。

 住民の立場からも、どこの医療機関でも医療費に大差がないなら、時間外急患センターより設備の整った大学病院で診てもらえれば安心という気持ちがありました。

 そこで県や市町村、医師会、救急指定病院で協議して地域救急医療の役割分担を再確認し、新聞やパンフレット、ホームページなどを通じて住民への周知に努めました。

 また、住民が突然の病気やけがの際、どこの病院を受診すべきか分からないことも考えられました。そのため電話で症状を聞き緊急度や重症度を判断し、適切な手当てや受診先を助言する看護師(トリアージナース)を救命救急センター内に配置しました。時間外急患センターや開業医と鳥取大病院の間に専用電話(ホットライン)も開設し、迅速に患者を受け入れる態勢も整えました。

 一方、鳥取大病院では2009年8月から入院の必要のない夜間や土日・休日の急患から時間外診療特別料金を徴収し、地域救急医療の役割分担を患者自己負担という目に見える形で示すことになりました。初診、再診、かかりつけに関係なく入院が必要ない患者から一律5250円徴収します。

新救命救急センターの完成で病棟や手術部門などのアクセスが改善された

 保険診療でも3550~7500円の時間外加算や深夜加算が徴収されていましたが、患者の自己負担割合は年齢や所得に応じて0~30%。鳥取大病院でも同様でした。

 時間外診療特別料金の導入に当たっては、かかりつけ患者を多く抱える小児科などから家族の不安の声が聞かれ、経営面でも特別料金を徴収することで時間外加算や深夜加算の徴収が出来ず減収となる心配もありました。

 以前から繰り返し鳥取大病院を時間外受診していた方には割高感を与えたかもしれませんが、一刻を争う救急患者の多くから不満の声は聞こえませんでした。

 特別料金導入前の08年度と導入後の10年度を比較すると、大学病院の救急外来の総受診患者数は44%減で、特に軽症者の割合が86%から70%へ減少した半面、中等症が8%から14%へ、重症者は6%から16%へと増加していました。また、救急車による搬送患者も38%増加し、受診患者の重症化に伴い総救急外来患者数に占める入院患者の割合も15%から28%へ増加していました。このように軽症患者の抑制で救命救急センターの本来の役割を担えるようになったと考えられます。

 さらに、今まで大学病院に集中していた救急患者が他の医療機関を受診するようになったことを受け、厚労省の地域医療再生基金を活用して時間外急患センターの改築・整備や、輪番病院や救急指定病院に最新の医療機器が整備されることとなりました。役割分担を明確にして取り組むことで、地域の救急医療体制が強くなると考えられます。

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 本間正人(ほんま・まさと)1962年生まれ。88年3月、鳥取大学医学部を卒業。救急医や外傷外科医、脳神経外科医として勤務。95年から国立病院機構災害医療センター(東京都立川市)に勤め、2006年から同救命救急センター部長を務めた。災害派遣医療チーム(DMAT)の立ち上げに深く関与し06年からDMAT事務局長。09年4月から鳥取大学医学部救急災害分野教授。

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 へき地医療、医師の偏在、医療事故――。「医人たちの挑戦」は、転換期にある日本の医療現場で逆境に立ち向かう人の姿を隔週で紹介するコラムです。医師や患者ら6人の筆者が、それぞれの体験を通して日本の医療の今をつづります。

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