ライフコラム

生きものがたり

実は日本近辺にしかいない ヒヨドリの不思議

2013/10/5

 秋空を移動するヒヨドリに出会うと、「がんばれ」と声をかけたくなり、場所によっては泣けてくる。北海道の室蘭、愛知県の伊良湖岬、鹿児島県の佐多岬などの渡りの名所では、海に飛び出す群れが見られる。彼らは海に出た途端に高度を下げ、波をかぶるすれすれを飛んでいく。

木の実を食べるヒヨドリ。実は丸呑みして、種子は糞で出す=写真 石田光史

 波にのまれるものすらいるのに、なぜ低く飛ぶのか――。それは海岸でハヤブサが待機しているからだ。ハヤブサは急降下で鳥を狩るので、低い高度を維持できないヒヨドリはハヤブサの餌食になる。湖上を飛ぶマガモに急降下をしたハヤブサがすんでのところでかわされ、湖面に突っ込んで死んだという話を聞いたことがあるので、ともに命がけなのだと思う。

■小鳥と木の実の関係

 秋の話題として、小鳥と木の実の関係も記しておきたい。どうして秋に色づく実が多いのだろう。私たちは哺乳類の例外としてさまざまな色が認識できるが、鳥は人以上に色覚に優れている。色づく実は鳥を呼んでいるのだ。

 小鳥の多くはヒヨドリのように細いくちばしをしている。春夏は主に虫をつまんで食べているが、虫が減る秋以降は木の実を食べるようになる。細いくちばしでは実の中の硬い種子を割ることができないので、実を丸のみして、種子はフンで排出される。これは動けない植物が種子を散布するための戦略といえる。色づいた実は小鳥が飲み込みやすいサイズ、形になっているはずだ。

(日本野鳥の会主席研究員 安西英明)

 安西英明(あんざい・ひであき) 1956年生まれ。日本野鳥の会が81年、日本初のバードサンクチュアリに指定したウトナイ湖(北海道苫小牧市)にチーフレンジャーとして赴任。野鳥や環境教育をテーマとした講演で全国各地を巡る。著書に「スズメの少子化 カラスのいじめ」など。

※「生きものがたり」では日本経済新聞土曜夕刊の連載「野のしらべ」(社会面)と連動し、様々な生きものの四季折々の表情や人の暮らしとのかかわりを紹介します。

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