ライフコラム

生きものがたり

クルミ食文化と緑色に輝くオオアオカミキリ

2013/8/31

青緑色の素晴らしい輝きを見せるオオアオカミキリ=写真 永幡嘉之

 今回は晩夏にクルミの木に集まるオオアオカミキリという美麗なカミキリムシを紹介したい。

 まずは、植物としてのクルミの話から始める。

■クルミの傷から食べた動物を調べる

 クルミの仲間には、いくつかの種類がある。その中で、日本に自生して食用のために古くから利用されてきたのはオニグルミだ。

 私は山形県内の芸術系大学で生物学など数科目の講師をしている。学生はほぼ例外なくクルミという果実の存在を知っているが、オニグルミが大学の周囲にたわわに実っていることを知っている者はごく少数だ。せっかく東北で暮らしているのに、身近な食材を知らないことはもったいない。ある年、生物学の講義を「クルミをめぐる博物誌」という内容で構成し、まずはオニグルミを拾ってきて洗い、乾かし、煎り、割って食べることから始めた。

 本題はここからだ。周辺地域での分布、食文化、染色での利用、遺跡からの出土状況、野外で拾った殻の傷から食べた動物を推定すること――。週ごとに調べる対象を広げていった。オニグルミを食べる小動物を知るには、野外観察を重ねるより方法はないが、学生らが通ううちにリスが何度か姿を見せ、口の大きさが違うネズミとの食べ方の違いをある程度確かめることができた。

 いずれの内容も今ではインターネットで検索すればそれなりに情報は出てきてしまう。だが、自分の目で事実を確かめながら、謎を解き明かしてゆく過程こそが面白い。直接の経験によって得た知識は色あせにくいものだ。

ヒメグルミ・オニグルミの実(穴はアカネズミに食べられた跡)=写真 永幡嘉之

■岩手県陸中地方で食べられるクルミ料理

 クルミの食文化については、学生らの家族からの聞き取りで多くの情報が集まった。全国各地で様々な形で食べられているが、現在もクルミの利用頻度が最も高い場所の一つが岩手県の陸中地方だ。我が家の食卓にも、妻が同県宮古市出身なので、すりつぶしたクルミで野菜などを和(あ)える「くるみ和え」がしばしば登場する。

 秋に宮古の市場に行けば、クルミの大きな網袋がいくつも売られているし、川原では大量に集めた実を洗った跡も目にとまる。ここでは、オニグルミのほかにヒメグルミと呼ばれる扁平(へんぺい)な果実も利用されている。ヒメグルミは植物学上、オニグルミと同じ種類だが、殻が割りやすく、中身が取り出しやすいという利点がある。

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