ライフコラム

生きものがたり

愛犬が教えてくれた 犬が草を食べるワケ

2013/4/27

 日本は四季に恵まれ、様々な生きものが生息する。人間社会の周りでいのちを育む野鳥、昆虫、魚、動物にスポットを当て、人々の暮らしとの関わりや、時代・環境の変化に伴う生息状況の移り変わり、ユニークな生態――などを紹介する。
愛犬のシベリアンハスキー「リズ」

 犬や猫、その他の小動物の診療に携わっていると、動物に関わることは何でも答えられると勘違いされ、様々な質問を受けて返答に困ることがある。「犬や猫はなぜ草を食べるのか」というような素朴な疑問であるほど、答えにくく、飼育者の体験に基づく異説もたくさんできやすい。

ペット診療、飼い主の愛情にも左右

 ペット動物の診療は解剖生理学、病理学、薬理学、内科学、外科学などの獣医科学に基づいている。だが牛、豚、鶏などの産業動物への対応とは異なり、犬や猫は飼い主の愛情や思い入れが支える家計負担という経済行為の上に成り立っている。

 ペットへの一方的な捉え方に科学的な根拠が薄くても、診療上の不都合が生じなければ取り立てて問題とはしない。このことが、あいまいで楽しい百家争鳴を生みだし、ペット飼育の魅力ともなっているのではないかと、還暦を過ぎた今では肯定的に考えている。

自身の悪酔い体験が重なる

スズメノカタビラ

 さて、それでは「彼らはなぜ草をたべる」のか。内科の教科書は「腸内寄生虫がいる」「胃腸障害」「栄養不足」などとしており、どの回答もある程度の正当性はある。だが、全ての寄生虫感染犬や胃腸障害犬が草を好んで食べるわけでもなく、必ずしも原因となり得ていない。

 若い頃、消化器系薬理学を専門にしている先生の講義を聴いたことがある。「犬は、そのツンツンした刺激を利用して嘔吐(おうと)するために草を食べる」という。なんと、人が喉の奥に手を突っ込んで嘔吐するのと同じことを犬がするというのか……。自らの悪酔い体験もよみがえる中で、通常の薬理学の講義中に突然出てきた「あまりに擬人的」な説を、にわかには信じがたかった。

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