ライフコラム

生きものがたり

クサフグの産卵 なぜ波打ち際に集まるのか

2013/7/20

濃緑色に白い斑点のクサフグ(葛西臨海水族園提供)

 晩春から夏にかけて多くの魚が繁殖期を迎える。クサフグもその1種だが、産卵行動はほかの魚と比べてかなり変わっている。大潮時に波打ち際に集まって産卵するのだ。

■産卵は満潮時の2時間前から

 先日、その不思議な産卵行動を観察するために神奈川県の湘南海岸に出かけた。あいにくの小雨まじりであったが、ここでは産卵が夕方の満潮時の2時間前から始まるというので、午後4時すぎに海岸に着いた。

 海面を見ると、波打ち際の水深50cmあたりに多くのクサフグが集まっていた。クサフグの体が濃緑色なので、黒い岩の上を泳いでいる時はほとんど見分けられないが、明るい色の石の上を横切る時にははっきりと魚影を見ることができた。

 海岸は起伏の激しい磯で、岩盤が尾根のように張り出し小さな入り江のような湾入部をつくっている。湾入部の一番奥が産卵場所で、大きな石の間を砂利が埋めている。クサフグは人影を警戒するので、そこから10mほど離れて水面を注視していた。

 45分ほど待つうちに産卵が始まった。用心しながら2mぐらいまで近づいて見ていると、波が引いて現れた平らな石の上に取り残されたクサフグが見えた。次に波がきた時に素早く海中に戻るかと思って見ていると、水に流されないように体を動かしており、岩の上から離れるのを嫌がっているようだった。

波打ち際で産卵するクサフグ

 しばらくすると、波打ち際の石の隙間にクサフグがどんどん入ってきた。波が引く時に重なりあって跳ね、辺りの水面が白く濁る。放卵・放精があったのだ。生臭い魚のにおいが漂う。こんな状態が30分ほど続いた。この日に集まったクサフグは数百尾ほどだったが、数千尾が集まる産卵場もあるようだ。

 クサフグの産卵場は千葉県から宮崎県までの海岸で確認されている。直径1mm以下の砂粒からなる砂浜、数cmの小石が重なった礫(れき)浜、大きな岩の割れ目に50cmほどの石が重なる磯、そして平らな岩棚のような岩盤と、海岸の地形は様々である。

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