ライフコラム

生きものがたり

奇跡の魚イシダイの問題処理能力

2013/6/22

イシダイの幼魚はしま模様がはっきりしている(東海大学海洋科学博物館提供)

 この4月、海の向こうのアメリカからイシダイのニュースが飛び込んできた。イシダイは日本沿岸と周辺国にだけいる魚で、海外で話題になるはずがないのだが、東日本大震災で流されてアメリカに着いた岩手県の船の中からイシダイたちが見つかったのだ。

■震災で流され、海を渡りアメリカへ

 震災で日本を離れてから2年。発見された時の大きさは15センチだったという。日本近海では2歳だと22センチになるので、少し成長が遅いようだ。漂流中、十分なエサがなかったのだろうが、よく無事についたものだ。そのイシダイたちの1尾がオレゴン州の水族館に引き取られ「とてもかっこいい魚だ」と、評判になっているらしい。うれしいことだ。

 イシダイは私にとっても特別に思い入れがある。

 今から40年以上前、大分マリーンパレスに勤めていた時、イシダイに「条件付け」をしたことがある。マリーンパレスは今で言うならば行動展示の草分けで、館内に「実験コーナー」と名付けた展示室をもうけ、デンキウナギやテッポウウオの行動を見せていた。

■優れた知能

 そこの呼び物がイシダイの実験公開で、すでに輪くぐり、糸引きなどの条件付けが完成していた。次の新しい種目として、イシダイがゴルフボールを運んで穴に入れる行動にチャレンジすることにした。

輪くぐりをするイシダイ(大分マリーンパレス提供、同館絵はがきから)

 トレーニングは、エサの付いたボールを水槽に入れ、エサを食べさせることから始めた。何日かすると、エサなしで入れたボールにも近づいてくるようになる。そこでボールをつつくと、すかさずエサをやる。これを繰り返すと、ボールを入れるだけで反応するようになった。次に、穴に入れるトレーニングに移った。しかし、イシダイは何日やっても転がす方向が定まらず、どうしても穴に入れることはできなかった。

 そこで、すべり台状のスロープをつくって、ボールをつつき上げるようにした。坂の途中には中継ぎの台を設置。そこまでボールが来ると、ボールの重みで箱のふたが開き、箱の中に下がっている糸を引くと「ひとやすみ」と書いた札が出るように演出した。この訓練には用具の製作などを含めて半年ほどかかったが、お客さんには好評だった。

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