ライフコラム

生きものがたり

カイコの成長 意識されず消えゆくクワ畑

2013/6/8

旺盛にクワの葉を食べるカイコの幼虫=写真 永幡嘉之

 春の養蚕が最盛期を迎えている。カイコが音を立てながらクワの葉を食べ続け成長する。最も育つ6月半ばには日に3回、軽トラックの荷台に満載したクワの葉の給餌が必要となる。クワ畑で枝を刈り取り、それを束ねて運ぶ作業は早朝から夕方まで続く重労働だ。養蚕は夏、秋にも繰り返される。

■「家畜」になったカイコ

 カイコはクワゴという野生種のガを長年にわたって改良し、生み出された品種だと考えられている。

 クワゴの幼虫は体が茶色いことのほかは、カイコの幼虫とそっくりだが、繭は褐色のうえにずいぶん小さい。カイコは真っ白あるいは黄色の糸をたくさん吐いて、野生種の数倍はあろうかという繭を紡ぐ。

 与えられたクワの葉を黙々と食べるだけで、逃げ出そうともしない。習性からみても、すでに野生生物ではなく家畜だ。長い改良の過程では、歴史に名を留めない多くの有能な人が生涯にわたって情熱を注いできたことだろう。

真っ白な糸を吐き、繭を紡ぐカイコ=写真 永幡嘉之

■養蚕に不可欠 天然の冷蔵庫「風穴」

 現在撮影に通っているクワ畑から裏山の斜面を上り、細い山道を20分ほどたどると、山肌の斜面に風穴がある。堆積した岩の間を通って地中から冷気が吹き出し、真夏でも冷蔵庫と同じぐらいの気温に保たれている。特殊な地形にしかできないため、存在する場所はごく限られる。もう訪れる人もなくなって久しく、山道にも夏草が生い茂っているが、かつては子供たちが山道を駆け登って遊びに来る場所だった。

 風が吹き出す出口に崩れた石垣が残っており、かつては石室として利用されていた面影をとどめている。電化製品のなかった時代、近郷一円のカイコの卵を貯蔵し、ふ化の時期を調節するための天然の冷蔵庫として利用されてきた。

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