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毛筆フォント、なぜウソっぽい? “本物”再現に意外な障壁

2013/1/3

 元日に届く年賀状。毛筆で書かれた名前や住所に、正月らしさを感じる人も多いだろう。最近は、手書きに代わって「毛筆フォント」を使った印刷文字が増えている。ただ、本物と見まがうような文字もあれば、どことなく違和感がある文字、いかにも嘘っぽい雰囲気の“毛筆風”文字などもある。こうした違いはどうして生まれるのか。毛筆フォント専門メーカーに話を聞き、秘密を探った。

■無料で入手できるものも

年賀状の宛名書きには毛筆フォントが広く使われるようになってきた

 フォントとは、コンピューターで表示したり印刷したりする際の文字の形。ゴシック体や明朝体など多くの種類がある。文字の形を小さな点(ドット)の集まりで表現するタイプや、輪郭線の集まりとして表現するタイプがあり、アウトラインフォントと呼ばれる後者は拡大・縮小しても滑らかな輪郭の文字を出力できるのが特長。コンピューターやプリンターの性能向上に伴い、最近、比較的広く使われるようになってきている。

 毛筆フォントは、これらのうち毛筆で書いたような字形を表現するフォントの総称。表彰状や年賀はがきの作成などに使われることが多いが、無料で手に入ったり、ワープロソフトのおまけ的に搭載されていたりする毛筆フォントの書体は、どこか安っぽい印象を受けてしまう。なぜなのか。

■偏や旁などパーツを使い回し

 賞状専用フォントを開発・販売する日本書技研究所(東京・目黒)の中本白洲取締役は「偏や旁(つくり)などのパーツを使い回しているからではないか」と指摘する。

 本来の漢字の字形は、同じ偏でも、旁の1画目の位置や向きによって、偏の終画の角度のほか「間(ま)の取り方も違ってくる」(中本氏)。例えば「王へん」がつく漢字。右に「見」がつくだけの現と、「リ」「王」が並ぶ班では、王の字形バランスが変わってくる。このような極端な例は別としても、こうした事情を考慮せずに機械的に偏と旁を組み合わせて字形を作るケースが多いため、一字一字が画一的に見えてしまうのだというのだ。

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