質感高く指紋認識も 満足度高い「HUAWEI GR5」
ファーウェイ・ジャパンは2016年2月12日、3万4800円(税別、以下同)と手ごろな価格のSIMフリースマートフォン(スマホ)「HUAWEI GR5」の販売を開始した。
このスマホは発売直後、さまざまな商品のクチコミが投稿される「価格.com」において満足度が「5点満点」という最高評価(レビュアー10人)を得たほか、SIMフリースマホの人気ランキングで1位に躍り出るなど、一躍注目を集めた。
高く評価された理由はいくつか考えられる。まず、アルミニウムマグネシウム合金を採用した質感の高い本体。同じ価格帯のエイスーステック・コンピューター(ASUS)の「ZenFone 2」や、シャープの「AQUOS SH-M02」が樹脂製ということもあり、高級感は段違いだ。
また、これまでハイエンドモデルにしか搭載されていなかった指紋センサーを搭載していること、独自開発された美しい液晶画面なども理由として挙げられる。
つまり、同価格帯のスマホと比較したときに、デザイン性や指紋センサーといった付加価値が高く、コストパフォーマンス(コスパ)が非常に高い点が評価されているのだ。2016年4月22日時点でも、価格.comでの満足度は「4.57点」(レビュアー68人)と高い。2月から3月にかけて維持した人気ランキング首位からこそ陥落したが、上位を維持している。
このように評価が高いHUAWEI GR5だが、評判通り、本当にコスパが高いのだろうか。実機をじっくりとチェックしてみた。
3D表示には向かないが、そこそこ高速
まず、スペックを見てみよう。液晶は約5.5インチフルHD(1080×1920ドット)IPSを搭載。スマホのサイズは若干大きめ。しかし重さは約158gで、同じディスプレイサイズ・同容量のバッテリーを搭載するZenFone 2(約170g)よりも軽い。
実際に手にしてみると、見た目以上に軽く、適度にラウンドした背面は持ちやすい。スマホの角が当たって手が痛くなる、といったこともない。そしてなにより、力強く握っても歪まないメタルボディーの剛性感が心地いい。この剛性感は、背面がプラスチックのスマホとは一線を画すところだ。
ただ、細かく見ると、光沢を残したヘアライン加工にはより重厚感が欲しいように思われた。このあたりは、デザイン的により工夫できる余地がまだある。
HUAWEI GR5のCPUは8コアのSnapdragon 616(1.5GHz×4 + 1.2GHz×4)。2GBメモリーを搭載しているので、メールやブラウザ、LINEといったアプリは快適に動作する。しかし長い時間使っていると、アプリの切り替え時に若干もたつくことがあった。
これまでファーウェイが発売しているスマホの多くは、傘下のハイシリコンが作った「Kirin」プロセッサを搭載していた。このKirinを搭載したスマホでは、一部のゲームやアプリが動作しないという問題が知られており、Kirinを搭載したスマホを購入しないというユーザーもいた。
一方、HUAWEI GR5は国内外の多くのスマホに採用されているクアルコム製のプロセッサを搭載しており、アプリの互換性は高い。この点は大きな改善点といえるだろう。
HUAWEI GR5の実際のパフォーマンスを調べるため、独自の仕組みでスマホの性能をスコア(点数)で評価できる「AnTuTu BenchMark V6.0.1」と「3DMARK」の2つのアプリを用いてベンチマークテストを行った。
AnTuTu BenchMark のスコアは36923(点数はアプリ独自のもの)。これは2014年発売のグーグルのリファレンススマホ「Nexus 6」の49774より低く、3Dゲームなどハイスペックを求める向きには物足りない。
ただ、同クラスのプロセッサを搭載するSIMフリースマホ、ASUS「ZenFone 2 Laser」(3万8000円)のスコア34549は上回っている。
一方、3Dグラフィック性能を測る「3DMARK」の「Ice Storm Unlimited」では8052という決して高くないスコアだ。ただ、パズルゲームなどカジュアルゲームなら十分楽しめる。
初心者でも扱いやすいUI
次に、使い勝手をチェックしよう。搭載するOSは、Android 5.1.1 Lollipop。これにファーウェイ独自のUI(ユーザーインターフェース)「Emotion UI 3.1」を搭載している。使い勝手がよく、ホーム画面は左右スクロールすることで切り替えられる。iPhoneのiOSによく似た操作性だ。アプリが多くなったらフォルダ管理すればよいというシンプルな構成も好感を持てる。
HUAWEI GR5は液晶サイズが大きく、片手操作しにくいユーザーもいるだろう。そういう場合には「ワンハンドレイアウト」を設定しておくといい。この設定をしておくと、画面下のナビゲーションキーを左右どちらかにスワイプすることで画面を縮小表示できる。自分の利き手側に画面を寄せられるので、片手で文字入力やゲームの操作も楽だ。
また、画面上部の通知パネルを簡単に開くには、ナビゲーションバーをカスタマイズし、通知パネルに開くボタンを追加すればいい。こうした細かい作り込みも好感が持てる。
指紋センサーでロック解除が快適
これまで、アップルの「iPhone」やソニー「Xperia」、サムスン「Galaxy」などのハイエンドスマホにしか搭載されなかった指紋センサーだが、2015年12月に発売されたZTE「g05」以降、ミッドレンジのSIMフリースマホでも採用されている。
HUAWEI GR5の指紋センサーは、スリープ状態(画面オフ)のときに背面のセンサーに指をのせるとスリープとロックが解除され、すぐにホーム画面が表示される。
このため、指紋センサーによるロック解除は快適そのもの。この価格帯のスマホに指紋センサーを搭載した魅力は十分にあると感じた。
残念なことに、指紋センサーの認識は、百発百中というわけではない。まれに認証されず、再度指をセンサーにのせ直すこともあった。とはいえ、電源ボタンを押してパスコードを入力する操作と比べたら苦にならない。
なお、指紋センサーは、設定することで「戻る」操作や「ホーム画面」表示操作などの機能を割り当てられる。ただし、もともとの操作感がよいので、わざわざカスタマイズしてまで使うものとは感じられなかった。
ただ、もし上下スクロールの操作を指紋センサーのタップや長押しに割り当てることができれば、電子書籍のページめくりなどが楽になりそうだ。このあたりは、一工夫をお願いしたいところだ。
カメラはシンプルで使いやすいが複雑な機能は苦手
カメラのユーザーインターフェース(UI)はテキストベースで「ナイスフード」「ビューティー」「写真」「動画」「コマ抜き」と項目が表示され、左右スワイプでモードを切り替える。現在どの撮影モードなのがわかりやすい。
UIは、iPhoneのカメラ機能とよく似ている。iPhoneに慣れているならすんなり使いこなせるものとなっている。
撮影モードは多彩で、「パノラマ」や「HDR」、現在地情報などを埋め込める「ウォーターマーク」などが用意されている。なお、シーン自動認識機能はないので、HDRや明るさ補正は手動で行う必要がある。
HDRや明るさ補正の操作は、ちょっと手間がかかる。例えば明るさを補正したい場合、撮影モードメニューを呼び出して「設定」→「画像調整」→「露光」とタップし、やっと補正することができる。
なお、上位機種のHUAWEI Mate Sには、これらの操作が簡単に行える「プロカメラ」モードが搭載されている。HUAWEI GR5でもプロカメラモードを追加してもらえれば、使い勝手は飛躍的に向上するはずだ。基本的な使い勝手がいいだけに、惜しい部分だと感じた。
撮影した写真の色味は自然だ。SNSアプリなどに付属するデジタルフィルターと併用しても、不自然な色合いにならない。
一方、気になったのが、夜景撮影時のオートフォーカスの動作だ。撮影時に本当にピントがあっているのかよくわからない。撮影した写真を確認すると、遠景にピントがあっておらず、いわゆるピンぼけ写真になっていた。どうやら、暗所での撮影は苦手なようだ。
プレミアム感あり、コスパに不満なし
HUAWEI GR5は、3万円台前半という手ごろな価格帯で、メタルボディーと指紋センサーという付加価値の高い機能を備えている。
値段が安く、質感が高い端末が欲しいという人にとってHUAWEI GR5はおすすめできるスマホだ。見た目の高級感は、同じ3万円台の製品と比べてもトップクラスで、指紋センサーも搭載されている。コスパはとても高い。
ただ、本体の質感や指紋センサーなどが必要ない、という人にとっては、2万円台で販売されている「FREETEL MIYABI」や「ZenFone 2 Laser」などのほうが、コスパが良いと感じるかもしれない。
また、カメラ機能は惜しい部分が残る。カメラを頻繁に使うなら、ZenFone 2 Laserや光学ズームレンズを搭載する「ZenFone Zoom」などがよいだろう。
とはいえ、手ごろな価格でプレミアム感があるスマホを欲しい人にとって、HUAWEI GR5は魅力的な1台といえるだろう。
(ライター mi2_303)
[日経トレンディネット 2016年3月30日付の記事を再構成]
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