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リーダーのマネジメント論

上司にこびる社員、おもねるイエスマンは好きじゃない DeNA会長 南場智子氏

2016/4/29

 ディー・エヌ・エー(DeNA)創業者の南場智子氏。2011年に夫の看病を理由に代表取締役社長兼最高経営責任者(CEO)を退任しましたが、15年1月に傘下のプロ野球球団「横浜DeNAベイスターズ」のオーナーに、同年6月にはDeNA会長に就任しました。インターネットを活用した遺伝子検査などヘルスケア事業も自ら率いています。再び全力疾走を始めた南場さんのリーダー論を再公開します。

 会長になられて役割は変わりましたか。

 「いいえ、全く何も変わりません。当社は常勤取締役が私も含めて3人で、社外取締役は2人です。会長かどうかは関係なく、私は3人のうちの1人として会社の重要な意思決定を間違えないということが任務です。それは以前と変わらずやっています。ただ、代表取締役社長の守安(功)を含め、担当する事業をそれぞれ分担しています。私は電子商取引(EC)とヘルスケアと、新卒採用、そして創業者としてDeNAイズムというか、らしさをしっかりと伝承していく仕事があります。CSR(企業の社会的責任)として小学校低学年向けプログラミング教育も直接やっています。あとは野球ですね」

 3人の取締役が各事業を分担するというのは珍しい経営スタイルですね。どのように役割を分担していますか。

 「だいたい迷うことはないです。ヘルスケアやEC分野であれば私で、守安はゲームや自動車関連などの新規分野を担当しています」

守安功DeNA社長

 CEOによるトップダウンではなく、3人のチーム経営というわけですか。

 「私がCEOの時は、私と春田(真・前会長)、守安の3人で決めていましたが、現在は上場企業のガバナンスを追求していかなくてはいけないため、社外取締役を入れて、取締役会のガバナンスをきちんと機能させていく方式にしています。例えば、15年6月の株主総会以降は、常勤取締役を2人減らして3人とし、社外取締役を1人増やして2人にしました。より株主の目を意識し、その声を経営に反映させて、ガバナンスを強化していこうと考えています。私が社長を退いて4年になりますが、この間に経営の透明性も高めています」

 確かに社外取締役を増やす企業は多いですが、外部の人間がうるさいと、本心では嫌がる経営者は少なくないですね。

 「私は11年に社長を退く前から月に1度はシリコンバレーに行っていました。米国ではどんな小さな企業でも、社外取締役がいて、きっちり機能しているんです。それが日本の企業だとうまく機能していないケースが多いんですよね。やはり社外取締役の知識とか、その辺の問題なのかと思っていました。それが、鳩山(玲人、サンリオ常務)さんを13年に社外取締役に迎えてからものすごくうまく機能しています。それは『株主からDeNAはこう見えていますよ』とか、『この話はさすがに株主には通用しない』とか、遠慮なくドンドン言ってくれるからです。鳩山さんの指摘に我々は目が覚めたような思いになり、グローバルスタンダードの経営ができるようになってきました。そこで取締役も常勤が5人、社外が1人はどうなのと、常勤を3人、社外を2人にし、さらに効果を高めるため、カーライル・ジャパンの大塚(博行マネージングディレクター)さんを招きました。金融のプロなので、市場からの視点で有益な意見がいただけると思いました」

 グローバルスタンダード経営に一歩脱皮したというわけですか。

 「はい、そうですね、ステージが一つ上がった感があります。執行と戦略的意思決定はしっかりと分けてやります。執行に際しては3人の常勤取締役に任されています。しかし、意見が分かれたときはどうするのか。その場合は代表取締役社長の守安に従います。しかし、戦略的な意思決定は取締役会に委ねられるので、5人が同じ責任の下に、透明な議論をして意思決定していこうと。そこでは代表取締役社長は議長ですが、1人の取締役にすぎません。特に海外の投資家が多いので、透明性の高いガバナンスの効いたグローバルスタンダードが必要なのです」

 しかし、外国人の社外取締役はいませんね。

 「確かに外国人はいませんが、鳩山さんも大塚さんも海外の状況が海外の人たちと同じくらい分かっています。わが社のことをよく理解され、守安や私とも信頼関係が厚いので、コミュニケーションのストレスはありません。視点はグローバル、コミュニケーションは日本語でできるというよさがあるんです。侃侃諤諤(かんかんがくがく)の議論ができます」

 南場さんは新卒採用も担当されています。どのような基準で採用していますか。

 「多様な人材がほしいので、個性とかはバラバラでいいんですが、これだけは譲れないポイントが2つあります。チャレンジ精神が旺盛で、仕事に全力で真摯に向き合うこと。あとはチームで仕事をやるので透明なコミュニケーションができること。ほかの会社の中には自分の成績を上げるため、顧客のターゲットリストは絶対に共有しないという会社もあります。しかし、DeNAはチームで情報を共有します。わが社の場合は社内で競争するのではなく、競争は社外とやるのです。この『社外』というのは競合する企業ではなくユーザーの移ろいとの競争を指しています。常にユーザーにフォーカスしていかないといけません」

 新卒は南場さんの目を通して決めるのですか。

 「いいえ、私が直接面接するというよりも、私は採用のチームと協議して戦略とアプローチを決め、直接は採用のチームが実行していきます。就職のセミナーには私が直接出て行ったりします」

 チャレンジ精神が旺盛な人材かどうか、どのように見分けますか。

南場智子DeNA会長

 「例えば企画会議をやっていて、上司の目を気にして優等生的なありきたりの答えを考えるような人では困ります。先回りして正解を答えるタイプはいりません。議論するだけ、時間が無駄です。自分の意見があり、芯を持っていて『おもねらない人』を求めています。30分、40分話して振り回すと、大体分かります。しかし、そこまでしても『裏をかく人』もいるので採用のミスというのはあります」

 「わが社の場合は『おもねらない』がスローガンのようにいわれています。『あなた上司の意見におもねっていない』とか始終言い合う文化なんです。これがわが社の価値観みたいなものです。うちはドンドン新しいことをやっていて、チームのリーダーにプロジェクトを任せています」

 「私が未熟な知見で『これ値段を半分にしない』といったら、『はい、仰せの通り』では困ります。イエスマンはうちには向いていません。私が『こうしてよ』と強めに言っても、『南場さん、それは違います』と。そして徹底的に議論して、結論を出していくそんな会社です」

 普通の会社の大半の社員はイエスマンではありませんか。

 「ですから中途採用の社員は最初びっくりします。例えば、新卒採用で私がある学生を知っていてすごく優秀な人間だと判断します。しかし、採用チームは、『南場さんから紹介があったけど、落とします』と。私は採用リーダーを呼びつけて『私があの学生のどこを評価したのかなぜ聞いてこないのか』と、プロセスの点は叱ります。しかし、結果的には採用チームの判断をリスペクトします。採用チームのほうが私より情報も多いし、任せていますから」

 しかし、そんな人材は会社を飛び出したりしませんか。

 「はい、外部で活躍できるぐらいの人材になってほしいと思います。私は囲い込みという言葉が嫌いなんです。もちろん優秀な人材はDeNAのために働いてほしいです。そのために新規事業を次々展開して、意欲的な舞台を提供し続けています」

 苦労して会社をつくって軌道に乗せたのだから、威張って君臨していたい。創業者はそんなもんじゃないですか。

 「それってすごく格好悪いと思います。アイデアを思いつく、そして苦労して、試行錯誤してがんばるというプロセスがあって、目標を達成する、3つの段階があるとしたら、一番興奮するのは七転八倒するプロセスのところですね。そこがワクワクして面白いわけですよ。私は名誉が欲しいとか、上場してお金持ちになってうれしいとは思わない人種なんです」

 「上司におもねらず、徹底してチャレンジしていく」という企業文化は、マッキンゼーのコンサルタント時代に学んだことがベースですか。

 「いいえ、マッキンゼー時代の経験はすべて消去しています」

 マッキンゼー時代は南場さん自身が「先回りして正解を答える」タイプだったのではありませんか。

 「そうですね。上司のパートナーを神のように尊敬していたので。新入りのときは常に何を求められているのか考えて、発言したり、行動していました。パートナーは絶対的な存在でしたからね。もともとコンサルとうちの社員とは、要求されるモノは違います」

(代慶達也)

南場智子氏(なんば・ともこ)
1986年津田塾大卒業、マッキンゼー・アンド・カンパニー入社。90年米ハーバード大経営学修士(MBA)を取得、その後マッキンゼー・ジャパンの役員に就任。99年にDeNAを創業して社長就任。2011年、病気療養中の夫の看病に専念するために代表取締役社長兼CEOを退任。取締役を経て15年6月から取締役会長。新潟県出身
 2015年7月24日公開の日経Bizアカデミーの記事を再構成しました。

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