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au三太郎に隠れキャラの一寸法師…人気CMの大疑問

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NIKKEI STYLE

テレビや映画などエンタテインメント作品をチェックしていて思う素朴な疑問について、当事者や専門家に直撃したり、独自のデータ調査などで真相を明かす大疑問特集。テレビ業界編に続いて、CM業界編をお届けする。au三太郎シリーズのCMクリエイター、篠原誠さんにもお聞きした。

疑問1: CM露出量が最も多いタレントは誰なの?

ビデオリサーチ社が発表している「タレント別テレビCM量TOP10」によると、2015年のCM露出量1位は濱田岳だった。

濱田といえば、遠藤憲一との掛け合いで笑わせたキリン「ビターズ」や、バカリズムとの「エン・ジャパン」など、その演技力と独特キャラで引っ張りだこ。特に露出が多かったのは、au三太郎だ。ちょっぴりネガティブで心優しい金太郎役で人気を集めた。

2位には、2010年以降、1位か2位を守り続けている上戸彩。ソフトバンク、コーセー、日本通運など、大口クライアントの多さがCMクイーンを支える。

3位には、前年1067位の桐谷健太が大躍進。4位の松田翔太とともに三太郎勢が上位を占めた。

5位は、前年118位だった広瀬すずがランクイン。広瀬は広告主数ランキングでは1位(19社)となっている。

トップ10を眺めると、10人中8人が携帯キャリアCM出演者。そんななか、綾瀬はるか(6位)、西島秀俊(7位)の健闘が光る。

疑問2:嵐の二宮はパンダを洗濯をしている?

嵐の演技派・二宮和也を起用したライオン「トップ スーパーNANOX」のCM。その登場篇で二宮が「汚れからの挑戦状」を受け取り、パンダの着ぐるみを洗濯しているが、あれは本当に洗濯しているのか。ライオン広報部に問い合わせてみると「CMは実証実験。本当に洗濯しています」とのこと。汚れ落ちに驚く二宮の反応は"演技"ではないそうだ。

疑問3: 役所広司が地方CMの監督をしている?

今年、創立80周年を迎えた長崎バスの運転手募集CMで役所広司が監督・主演している。まるで映画のようなクオリティーの高いCMだが、「まさか長崎バスのCMに役所さんが出演しているとは……と、当初は気付かなかった視聴者もいらっしゃったそうです」(長崎自動車広報室)。バス運転手不足に悩む出身地のためにと一肌脱いだ、名優の心意気に脱帽だ。

疑問4: dポイント、インコの声は誰?

NTTドコモ「dポイント」のCMで、中条あやみと共演しているインコのキャラクター「ポインコ」。その掛け合いはまるで芸人のようだ。声の主は、お笑いコンビ「ロッチ」。細いお兄さんポインコを中岡創一、太めの弟ポインコをコカドケンタロウが担当している。登場以降、グッズ化を希望する人が続出。競合の白い犬や三太郎に対抗するキャラに育つか。

疑問5:ソフトバンク「ギガ」の声は誰?

今年、上戸彩に拾われ白戸家の一員になったポメラニアンのギガ。その声の主は、乃木坂46の生駒里奈。生駒は自身の抜擢について、日経エンタテインメント!4月号の連載でこう自己分析している。「ギガちゃんは小悪魔みたいでちょっと憎たらしい感じなので、かわいすぎてもダメだし、大人すぎても似合わない。子どもっぽくて、ちょっと特徴のある声が良かったんだろうな」

疑問6:高畑充希はなぜ歌うCMが多い?

NHK朝ドラ『とと姉ちゃん』主演の高畑充希。そのCMといえば、チョーヤ梅酒、NTTドコモなど、歌うCMが多い。実は高畑、2007年に「みつき」としてデビューしている歌手でもあるのだ。だが、朝ドラも始まった今は演技に集中。「お芝居が一番やりたいこと。歌は私のチャームポイントのひとつとして使っていただけたら」と語っている(日経エンタテインメント!2月号)

疑問7:パズドラのアニメCM、監督は誰?

2015年『台風のノルダ』で劇場デビューした新井陽次郎監督。パズドラCMを手がける電通のコピーライター保持壮太郎氏が新井監督の才能に注目。「今までやってこなかったアプローチで、意外性のあるCMができるのでは」とオファーしたという。新井監督は元スタジオジブリのアニメーター。その画の透明感や躍動感は、ジブリ出身監督ならではだ。

au三太郎シリーズのCMクリエイター篠原誠が答えます

疑問8: 隠れキャラの一寸法師 今もどこかにいる?

いるみたいです(笑)。2015年夏ぐらいから登場しているという公式見解ですが、誰も気付かないと思ってたんですね。だから本当は1年後くらいに「実はいたんだ」と登場して、驚いてもらおうと思っていたのですが、想像以上に早く見つかって……(笑)。今後、一寸法師が活躍するときが来るかもしれませんが、すべては未定。乞うご期待です。

疑問9: 乙姫が舞い踊る竜宮城はどこにある?

三太郎では、陸にあります。実は初期に浦ちゃんが見つけた亀はリクガメなんです。それを見た視聴者から「リクガメでは竜宮城に行けない」とツッコミをもらったんですけど、その後、竜宮城は陸にあった、浦ちゃんは正しかった、と分かるようになっている。そんな伏線をたまに仕込んでは、後で回収するようにしています。

疑問10: 浦島太郎『海の声』どうして生まれた?

「ガラホ」というケータイに、声がよく聞こえる機能があるんです。それを訴求するために「海の声」「山の声」など、声にまつわる歌詞を書いて、歌が上手な桐谷健太さんに歌っていただきました。

それまでバカがつくほど愚直な浦ちゃんが、まじめに歌うときっと反響があるだろうなとは思っていたんですが、想像以上。各配信チャート1位には、驚きました。

疑問11: みんながみんな英雄 正月CMなぜAIに

正月といえば、1年の扉。声に説得力がある歌手の方に「誰しもが英雄なんだよ」と歌ってもらえたら、日本を応援するCMにできるんじゃないか。そう思って浮かんだのが、AIさんでした。ダメもとでお願いすると、「三太郎いいよねー。歌詞もいいよ」と。ふつう「Song by AI」とか入れるんですけど、それも入れなくていいと言ってくださって。すごいですよね。

疑問12: 家庭教師のトライは企画が先、映像が先?

どっちもです。企画に合う映像を『アルプスの少女ハイジ』から探す場合もありますが、先に面白い映像を見つけて、「こんなセリフをあてると面白い」と考える方が多いです。

2016年に放送した映画の予告編みたいなCMは、今まで使いたくても使えなかった不穏な場面のオンパレード。在庫一掃セールみたいな感じでした(笑)。

疑問13: 富士フイルムのCM 写プライズは本物?

本当なんです。広瀬すずさんがリアルに驚くリアクションを撮りたかったので、プランナーが嘘のCMコンテを描いて、嘘の企画説明をして…(笑)。とにかく広瀬さんにバレないように撮影を進めるのが大変でした。

疑問14: クリエイティブディレクターとはどんな仕事?

野球で例えると監督、船でいえば船長です。広告作りのさまざまな局面で、「こっちに行く」と判断する役割。そのときに、自分で案も含めて考えるプレイヤー型の人もいれば、ディレクションだけをやる人もいます。僕は前者。コピーライター出身、アートディレクター出身、CMプランナー出身など、なり方はさまざまです。

疑問15: 企画はいつ、どこで考えているの?

もう、四六時中です。この仕事を始めた頃は、「慣れたら簡単に浮かぶのかな」と思っていたけど、そんなことはないです。いつまでたっても、すごく考えないと浮かばない(笑)。浮かんでも、もっと面白い案が浮かぶかもしれないので、また考える。そうしてギリギリまで考えて、締め切り時点でのベストを出すようにしています。

疑問16: どんなCMはダメ? CM表現のタブーは

差別的表現など、人が傷ついたり、不快に思うものはダメですね。CMは見たくない人にも勝手に見せる媒体なので。あと、テレビ局にも考査というチェック機能があり、NGなものは「放送できない」と言われます。あと、ひとつのCMで2個の商品を出すこともできません。ただ、結構、基準が曖昧な部分もあります。

疑問17: CMがヒットしたら、ギャラは上がる?

クリエイターのギャラは上がらないですね。僕はサラリーマンなので、ヒットしても、ヒットしなくても、給料は変わらない(笑)。フリーの人だったら、話は別かもしれませんが。あと、海外なら確実に上がりますね。例えばカンヌ広告祭で賞を獲ったら、引き抜きにあったりして、急に1億円プレイヤーになったりもします。

(ライター 泊貴洋)

[日経エンタテインメント! 2016年5月号の記事を再構成]

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