マネー研究所

不動産リポート

改めて点検したい マイホームの耐震性能 不動産コンサルタント 長嶋修

2016/4/20

共同

 14日に発生した熊本地震は最大震度7を観測、多くの建物が被害を受けた。震度5強の揺れを観測した熊本市中心部では「13階建てのマンションが壊れた」として報道されたマンションがあったが、あれは実は「わざと壊れるように設計・施工されている」ことは意外に知られていない。

 独立した2つの建物をつなげるとき、そのジョイント部分をガチガチに固めてしまうと建物本体が直接地震の影響を受けるが、そこをあえて緩やかにつなぎ地震の力を伝達しないよう配慮している。

建物本体が直接地震の影響を受けないようにすることを「エキスパンションジョイント」という

 こうした考え方に基づく接続を「エキスパンションジョイント」と呼び、外部からの力、コンクリートの膨張や収縮に対して一定の可動を許容するものだ。もちろん今回のケースでは地震の程度が大きかったため、可動にとどまらず壊れたわけだが、被害を受けたマンションはある意味、「想定通り」に壊れたわけだ。

 ただ、現場の写真を見るとジョイント部分だけでなく、本体同士が干渉し、破損しているようにも見えるため、これは計算外・想定外の揺れによるものなのか、設計施工ミスなのかは判然としない。

 また、棟と棟のつなぎ目の部分だけでなく、建物本体も柱と壁をガチガチにつなげず、わざと切り離して「遊び」をもたせることがある。地震をしなやかに受け流すといった考え方に基づく「耐震スリット」といった設計配慮だ。

 ところで世の中には、現行の耐震基準を満たしていないいわゆる「旧耐震」の建物と、1978年の宮城県沖地震を受けて法改正され、1981年6月以降に建築確認が行われた、いわゆる「新耐震」の建物がある。

 この新耐震基準の強度の定義は「震度5強程度の地震ではほとんど損傷を生じず、震度6強から7程度の大地震でも人命に危害を及ぼすような倒壊等の被害を生じない」というものだ。

 わかりやすくいえば「建物は倒壊に至らない程度に壊れる」ということを意味する。つまり中小程度の損傷が建物に発生している可能性は高いのだ。地震の後、落ち着いたところで建物を一通り点検されることをお勧めしたい。耐震診断や耐震補強については多くの自治体で助成金・補助金などを用意しているので確認してみよう。

 旧耐震建物については、その耐震強度はまちまちで、現行基準を1とすると0.5とか0.3しかないといった建物も多くみられるのが実情だ。今回のような被害を受けた建物は一見問題ないように見えて、実は大きく損傷しており、その後の余震などでタイルなどの外壁が落ちたり、建物が倒壊したりする可能性も考えられるため十分に留意したい。

長嶋修(ながしま・おさむ) 1999年、業界初の個人向け不動産コンサルティング会社「さくら事務所(http://sakurajimusyo.com/)」を設立、現会長。「第三者性を堅持した個人向け不動産コンサルタント」の第一人者。国土交通省・経済産業省などの委員を歴任し、2008年4月、ホームインスペクション(住宅診断)の普及・公認資格制度を整えるため、NPO法人日本ホームインスペクターズ協会を設立し、初代理事長に就任。『「空き家」が蝕む日本』(ポプラ新書)など、著書多数。

マネー研究所新着記事