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フランスの子育て女性は「週4日勤務」が当たり前?

共働きでも子だくさん パリで働く妻と夫のリアル(前編)

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NIKKEI STYLE

女性活躍推進の大合唱のなか、「仕事も子育ても」といわれても、そんなの無理――とつぶやいた人もいるだろう。しかし、フランスでは80年代に「子育てしながら働く女性」を支える仕組みを作り上げ、女性の就業率を上げつつ、90年代後半から出生率の回復を果たしている。合計特殊出生率2.01、24~49歳の女性の就業率は80%超――。実際に共働き家庭ではどのように両立を実現しているのか。3人の子どもを育てながら共働きを続ける4組のカップルをパリの自宅に訪ねてみた。「共働きでも子だくさん」の秘密を前後編2回に分けて紹介しよう。

ある火曜日の夕方6時過ぎ。凱旋門近くの古いアパルトマンに、マイリス・フィジェルさん(40)が帰宅した。「ただいま」とドアを開けたマイリスさんを待ち受けていたのは、2歳を迎えた甘え盛りの次男、そして10歳の長女と8歳の長男だ。自宅には、既に夕食のいい香りが漂っている。ベビーシッターが用意してくれたものだ。

毎晩9時を回らないと帰宅しない夫を待たずに、子ども3人とマイリスさんは夕食のテーブルを囲む。ひとしきりおしゃべりを楽しみ、子どもを寝かしつけた後、マイリスさんは持ち帰った仕事を取り出した。こうした「ふろしき残業」は週に4時間くらい。大手通信会社の管理職であるマイリスさんは、「会社ではもっと仕事をしたい、家ではもっと子どもと一緒にいたいと思ってしまう」と小さなため息をついた。しかし、翌日水曜は休みだから、一日子供たちと過ごせる。マイリスさんは長女が生まれてからもう9年も、水曜休みの「週4日勤務」を続けている。

「週4日勤務」で両立、しかし昇進はゆるやかになる

フランスの学校では、水曜日は午前中だけで終わってしまう。そこで「ベビーシッター代を考えると給料が80%になっても週4日勤務のほうがいい、子どもとの時間もとれるから」と水曜日を休みとする子育て中の女性社員は少なくない。法律で子どもが3歳になるまで完全休業するか、あるいは最大50%まで時間を短縮して働くことが認められており、80%勤務として週4日を選ぶこともできる。マイリスさんの勤める大手企業のように、法定の3歳を超えて短時間勤務を認める職場も珍しくない。

2014年の調査によると、女性の約1割が週4日勤務を含む週30時間以上のパートタイムで働いている(円グラフ)。フランスのパートタイムは日本とは違って社会保障がついており、労働協約によりフルタイムとの行き来ができるとされている。今回訪ねたパリのカップル4組はいずれも、妻は子育てのために「週4日勤務」を3年以上続けていた。こうした柔軟な働き方の普及が「仕事も子育ても」を支えるひとつであることがうかがえる。

18歳を筆頭に3人の娘がいる地方公務員のデルフィーヌ・ベルランさん(47)は、娘が生まれてから17年にわたり、週4日勤務を続けた。「子どもが3人、4人いてもフルタイムで働くエネルギッシュな女性もいるけど、そんな生活は疲れる」と笑う。管理職ではないデルフィーヌさんにとって、週4日勤務は「バランスのとれた生活ができる」理想的な働き方で、職場でも気兼ねなく続けられたという。

では、キャリアに支障がないかといえば、微妙な問題である。フランスの大手企業の人事担当に聞くと、表向きは「短時間勤務がキャリアにマイナスになることはない。フルタイム勤務と同じように成果で評価をする」という。しかし、ことはそう理想通りには進まない。

冒頭の管理職のマイリスさんは「仕事の責任はフルタイム勤務と変わりはない。同じ質の仕事をしている」という自負があるものの、「週1日は休みだし、(子どものケアで)夜5回は起きる。それがない人のほうが(職場で)力がつくのは仕方ない。その代わりに、それ以上のものを得ているから人生トータルでは同じだ」と割り切るようにしている。

食品会社で品質管理の仕事をしていたマリオン・オレットさん(37)は、26歳で第1子を出産、その後3人の子どもを育てながら計5年間、週4日勤務を続けた。「子どもと週3日過ごせるのは幸せなこと」と言うものの、産休、育児休業期間も含めて11年の間、ポストは据え置き。その間に金融機関に勤める夫は、どんどん昇進していった。

それでも焦らずに仕事を続けられたのは、母親の助言があったからだ。キャリアウーマンだった母は子どもを4人育てた後に50歳を過ぎてから昇進し、最後は大使を務めたという。「60歳まで働くのなら、急ぐ必要はない。子どもが小さいうちは昇進しなくてもいいから続けなさい。動かなくていい」という言葉が支えになった。しかし最近、転職してファストフード会社で管理職のポストを得たのを機にフルタイム勤務に戻した。「週5日働くライバルたちに後れをとるのではないか」と考えたのだ。末子が6歳になり、そろそろキャリアにギアを入れてもいい時期でもあった。

子育てをするのにありがたい短時間勤務。しかし、これが昇進昇格するうえで「ペナルティー」となる可能性があることは、フランスにおいても変わりはない。週4日勤務を選ぶのは、大半が子育て中の女性、これが職場において男女差を広げる要因にもなっている。

短い出産時のブランク 「母乳信奉」の薄さも一因か

パリで取材をするなかで、日本との違いをひとつ発見した。出産時のブランクが短いのだ。子どもが3歳になるまで育児親休暇をとることはできるが、まるまる利用する人は少ない(下の表)。「出産後の休みは平均すると3カ月半くらい」(ルノー人事部)といった企業が多い。キャリアのブランクが短いためダメージも小さくなる。

早めに職場復帰できるのは、子どもは母乳で育てるのが一番という「母乳信奉」がないことも理由のひとつと指摘されている。日本では母乳育児が浸透しているが、フランスでは違う。1970年代のフェミニズム運動で、母乳育児は母性信奉につながるものとして否定された。近年、見直しの動きもあるが、それでも「選択できる」という感覚だ。

30代後半のマリオンさんは、フェミニズム運動花盛りだった世代の母親からの影響があり、「子どもは母乳で育てるべきではない」と信じている。「ミルクは栄養バランスが考えられていて安心だ。それに母乳で育てている女性は、疲れ切ってへとへとになっている」と言う。夜中にミルクが必要な子育て期は、夫と妻が交代で起きて哺乳瓶でミルクをあげていた。子どもが泣くと「今度はあなたの番よ」といった具合だ。第1子も第2子も、法定内の産前・産後休暇16週間のみで職場復帰した。第3子は、約5カ月半。いずれも100%有給で休める範囲で復帰している。

子育てのお金の心配はほとんどない

フランスで出生率が90年代半ばからゆるやかに回復した背景には、手厚い子育て支援策があるとされている。子どもが3歳になるまでは家族でケアをするか、あるいは保育所に預けるか、自宅で子どもを預かる保育ママに頼む。フランスでも日本と同様に保育所不足が問題になっているものの、保育ママという選択肢も定着しており、保育所の利用者を上回る。そして3歳からは無料の公立保育所に入れる。子どもが3歳になるまでは、育児親休業を取ることもできるし、短時間勤務も選択できる。つまり、3歳まで何とかすれば、あとは保育所に無料で預けることができるのだ。

11歳、9歳、6歳と3人の子どもがいるオレット家の場合は、毎日夕方2時間半子どもをみてもらうベビーシッター代と、週1回頼む掃除のシッター代で月9万5000円ほど。研究所に勤めながら8歳、6歳、2歳の子どもを育てるアマンディン・シェレイベルさん(38)の場合は、末子がまだ2歳のため子育て費用で月20万円ほどかかる。6歳未満の子どもがいる場合、保育ママやベビーシッターを雇うと収入に応じて国から補足手当が出るうえに費用の税控除がある。2人以上の子どもがいると支給される家族手当は、子どもの数が増えると増額される。そこで、「子育て費用はさほど負担ではない。大学までの教育費もあまり心配しなくていいから、4人目も考えている」とアマンディンさんは言う。

『パリの女は産んでいる』の著書があり、自身もパリで2人の子どもを育てる中島さおりさんによると、小学校の学童保育も充実しており、放課後は18時くらいまで学校内で預かってもらうことができる。そこで柔道やチェスといった様々な学びを、無料か、高くても年1万円程度で頼むこともできるという。「お金がないから子どもを産むのをためらうという話はまず聞かない」

シカゴ大学の山口一男教授の分析によると、日本では女性が第2子を出産しようと思うかどうかは、夫の育児参加が強く影響する。第3子になると経済的理由が浮上する。フランスでは、その第3子の壁は低いといえそうだ。では、第2子の壁である「夫婦の家事育児分担」はどうか。出生率2.01の秘密を探るため、後編ではカップルのあり方をレポートしたい。

(淑徳大学教授、ジャーナリスト 野村浩子)

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