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働くなんて「余暇活動」でいい ボーナスは同じ スタートトゥデイ社長の前沢友作氏が語る(下)

2016/4/14

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏
 ファッション通販サイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」を運営するスタートトゥデイ社長の前沢友作氏。消費市場が伸び悩むなか、独自の働き方を貫きながら、同社を成長軌道に乗せます。

<< 前沢氏が語る(上)「競争は嫌い」出社は週3日、前沢流の粋な働き方

 こんなにモノが売れない時代に、洋服を売って会社を成長させているなんてすごいですね、と言われます。僕自身は、「売り上げを伸ばそう」とか「利益をあげよう」とか、思ったことはありません。それよりも、楽しみながら働ける会社をつくりたい。

 多くの人は「稼ぐため」に会社に入り、働くと思っているでしょう。僕は、その考え方自体が、根本的に間違っていると思うんです。

 働くなんて、一種の”余暇活動”でいい。人生を楽しむため、好きなことをするために会社に入るのが本来のあり方。極端なことを言えば、嫌いなことは、一切、やらなくてもいいとさえ思います。

 どうせ買うなら、誰だって、楽しそうな人から買いたいでしょう。はやっている店ほど、働いている人も楽しそうだと思いませんか?

 これは、路面店でもインターネットのサイトでも、同じことだと思います。

 A4の紙1枚が100ページのカタログへ

 会社を設立したのは1998年のこと。最初の頃は、僕が気に入った洋楽のCDやレコードを海外から買い付け、販売していました。それ以前は、自宅の6畳一間を倉庫にして、買い付けも商品の発送も自分ひとりでやっていましたが、会社設立と同時に東京都江戸川区に小さな事務所を借り、友だちの何人かに仕事を手伝ってもらうようになりました。

 バンド活動と並行してやっていた当時は、ファンがお客さんだったんです。それが口コミで広がって、そのうちに、見ず知らずの地方の人からも「欲しい」と連絡が入るようになりました。

 当時、僕が輸入したCDやレコードはどこでも簡単に手に入るようなものではありませんでしたから、お客さんも喜んでくれました。だったらもっと集めようかと思いながらやっているうちに最初はA4判の紙1枚しかなかった商品リストが、いつの間にか、100ページくらいのカタログ冊子になっていました。

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏

 売れれば楽しいし、お客さんも喜んでくれるからますます楽しくなる。気がついたら、年商が1億円近くにもなっていました。

 それだけ売り上げをあげていても、会社としてはまったく体をなしていませんでした。肝心の社長である僕が全国ツアーを回っていて、マネジメントはほったらかし。それで、15人いたスタッフが一気に3人にまで減ってしまいました。

 社員の給料日もしょっちゅう忘れるくらいでしたから、当然ですよね。さすがに「このままじゃいけないな」と思い、就業時間を定めて、組織図を書きました。社長として目覚めたタイミングがいつかと聞かれれば、おそらく、その時でしょうね。

 競争はしない。ボーナスも一律

 紙のカタログからオンラインへと切り替えたのは2000年です。当初はシステム開発を外注していましたが、使っているうちに自分たちのニーズと合わなくなってきたので、自分で秋葉原に行って本を買い、それを見ながらサイトを作りました。

 やってみたら、意外と簡単でした。それまでは、カタログの制作や配送費に、売り上げの15%くらいコストがかかっていたんです。インターネットの通販に切り替えたら、営業利益率が一気に改善しました。

 余裕ができた分、「何か新しいことをやろう」と思い、自分たちの好きな洋服をセレクトして売り始めました。そうして出来上がったEC(電子商取引)サイトが、今の「ゾゾタウン」。

 「ゾゾタウン」では、常時、30万点以上の商品を取り扱っています。システム、デザイン、物流などECに関わる機能のほぼすべてを僕らが自前で手がけています。最近では、新品の商品だけでなく「ZOZOUSED」というサービスでブランド古着も販売しはじめました。

 1200人以上いるスタッフの多くは、洋服が好きで、自分が着たい服を売れるなんて素敵じゃないかと思って入社してきています。僕自身もそう。好きなことをトコトン突き詰めたら、結果的にそれがビジネスになる。これは輸入CDを販売していた頃から変わらない真実だと思いますし、変えたくない部分です。

 好きなことをやるために一つ屋根の下に集まっているのですから、社内で無駄な競争などしません。全社員基本給は一律ですし、ボーナスも全員同じ。いい時はみんなで分け合うし、悪い時は共同責任という考え方です。

 それだとサボる人が出てこないかと心配する人がいますけれど、いいじゃないですか、サボったって。人間なんですから、働きたくない時だってあるでしょう。そんな時は誰かがポンと肩をたたいて、「今日も1日、頑張ろうよ」と声をかけてあげればいい。僕は、むしろ、そんな会社をつくりたい。

 働くのは1日6時間だけでいい

 一人ひとりの能力を業績に応じて細かく評価し、給料に差をつけて、なんてやっているのは、ずっと効率が悪いと僕は思います。そんな時間があるならば、その時間を、お客様のために費やした方がいい。

 人のために役に立ち、人を喜ばせ、結果としてそれが事業になり会社が発展するというのがあるべき姿だったはずなのに、どうすれば隣の同僚に勝てるかとか、どうやったら部長に怒られないように今日一日をしのげるか、なんてことばかり考えるようになってしまったら、会社に行くのがつまらなくなるし、業績も上がらなくなってしまうんじゃないでしょうか?

スタートトゥデイ社長の前沢友作氏

 スタートトゥデイの場合、誰かがサボったり、会社に来なくなったりしても、それはみんなの責任です。来ない人が悪いとは、一切、考えない。

 2012年5月からは、「1日6時間労働」にチャレンジしています。基本、勤務時間は午前9時から午後6時まで。ただし、午後3時までにその日の仕事が終わっていたら帰っていいとしています。

 おかげさまで、最近は忙しくて、午後3時に帰る人はほとんどいないですけれど、会社なんて、本来はそれくらい自由でいいと思います。

 繰り返しになりますが、嫌なことをするために会社に行く必要なんてない。みんなが好きなことをやってうまくいく会社が、僕の理想です。

 どれくらいまでその理想を達成できたか、ですか?

 うーん、今はまだ、5割くらいかな。

前沢友作氏
1975年生まれ、千葉県出身。早稲田実業学校卒。音楽活動を経て1998年に有限会社スタート・トゥデイ設立(2000年に株式会社化)、04年にファッションショッピングサイト「ZOZOTOWN(ゾゾタウン)」開始。07年に東証マザーズに上場、12年に東証第1部に上場。13年にファッションコーディネートアプリ「WEAR」開始。

(ライター 曲沼美恵)

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