マネー研究所

老後貧乏防ぐ個人型DC

個人型DC、結構多い「古くて残念な品ぞろえ」 編集委員 田村正之

2016/3/31

 税制優遇が大きいのにあまり使われておらず、「隠れた投資優遇制度」とも呼ばれる個人型確定拠出年金(DC)。現在は企業年金のない会社員(会社員の約6割)と自営業者などが使え、2017年からは対象が大きく広がる予定だ。問題は金融機関の品ぞろえが玉石混交なこと。投資信託について、「古くて残念な品ぞろえ」のケースも多い。

■主要5資産の品ぞろえは基本なのに……

 「これではしっかり資産形成するのは難しいのでは……」

 ある都内の金融機関の投信の品ぞろえを見て、思わず脱力した。投信の品ぞろえが国内株、外国株、バランス型2本の計4本しかない。

 ファイナンシャル・ジャーナリストの竹川美奈子氏は「主要4資産である国内株、国内債券、外国株、外国債券に新興国株を加えた5資産について低コストのインデックス(指数連動)型があることが望ましい」と話す。しかし、それがそろっていないこの銀行のような金融機関は実はかなり多いのが現実だ。

 しかもこの銀行が扱っている日本株インデックス投信の信託報酬は0.67%と、個人型DCでは比較的高コスト。かつてはこれくらいの水準も普通だったが、最近は低コスト化が進んでいて、一般に売られている投信でももっと低いものはざらにある。

 しかもDC向けはさらに低いことが多く、りそな銀行の日本株インデックス投信のように0.19%というものも出ている。例えば30年運用した場合の信託報酬の累計(運用利回りゼロとした簡易計算)では、同じように日本株の指数に連動する投信なのに、りそな銀行の24万円に対しこの銀行では78万円と大差がつく。かなり損だ。

■高コスト投信しか選べない例も

 「これもひどい……」と落胆したのはある北日本地域の金融機関(表Aの最下段)。投信は国内株式、国内債券のほかバランス型だけ。外国株式や外国債券、新興国株式の品ぞろえがそもそも存在しない。

 しかもすべてが信託報酬の割高なアクティブ(積極運用)型。例えば国内株式投信やバランス型投信の信託報酬は年1.62%とかなり高い。30年運用すると運用利回り0%の場合で信託報酬の額は約172万円にもなる。

 もちろんアクティブ投信は運用者の腕で平均を上回ることを目指すので、成績そのものが良くなる可能性はある。しかし長期では費用負担増を取り戻すだけの成績を上げるのは容易ではなく、アクティブ型の7~8割が長期では平均を下回ってしまうことは運用の世界ではよく知られている。

 このため資金の中心はインデックス型で運用するというのが年金など長期資金のセオリーだ。アクティブ型も資金の一部で運用するのはいいが、それしか品ぞろえがないというのはかなり不親切だ。

 インデックス型でもアクティブ型でも、割高なものしかない金融機関には理由がある。(1)あまりやる気がない(2)信託報酬の約半分は販売金融機関に入り続けるので、信託報酬の高いものを売った方が利益になる――の2つだ。どちらにしろ顧客には不利だ。

 個人型DCは税制優遇が強力な、老後資金づくりのための極めて有効な手段。しかしこうした金融機関を選んでしまえば、せっかくの有利な仕組みなのに長期の資産形成で不利になってしまう。

 問題は「不十分な品ぞろえ、高コスト」という残念なラインアップしかない金融機関がかなり多いことだ。某保険系の大手金融機関や某大手銀行でも割高な商品が目立つ。そうした金融機関は、おうおうにして手数料も高い。漫然と選ぶと「高い手数料+不利な品ぞろえ」というダブルの不利益を受ける。

■低コスト目立つ野村とりそな、SBIは大幅刷新へ

 金融機関ごとの品ぞろえは確定拠出年金教育協会のサイトで調べられる。個人型DCは商品の選択や変更などが基本的にインターネットの操作で完結するので、地元の金融機関を選ぶ必要はない。

 いったん選んだ後でも変更できるが、2カ月程度時間がかかることが多いし、別途変更のための手数料がかかることもある。できれば最初からきちんと選びたい。

 選び方はそれほど難しくない。預貯金中心で節税メリットだけ受けたいのなら投信のラインアップは関係ないので、手数料の低いSBI証券やスルガ銀行が選択肢になる(前回記事参照)。

 「掛け金や残高が大きく、投信を中心に運用するのなら信託報酬の低い投信がそろっている金融機関がお薦め」(確定拠出年金教育協会の大江加代主任研究員)。

 投信の信託報酬の差は長期になるほど大きくなる。表Aでわかるように10年を超えると、手数料の差を上回ることもよく見られる。

 ちなみに低コスト投信が多いのは現状では野村証券、りそな銀行、ジャパン・ペンション・ナビゲーター(J―PECコースの場合)などだ(表B)。

 ただし来年からは個人型DCの対象が公務員や主婦などにも拡大されるのをにらみ、金融機関の中には商品の大幅強化を計画しているところも出てきている。

 例えばSBI証券は4月にも、主要資産クラスの信託報酬が最低水準の投信を一挙に投入方向だ。手数料も低いため、個人型DCを利用する際のかなり有力な選択肢になりそうだ。「品ぞろえを充実させる金融機関はほかにも出てきそう。しばらく金融機関選びを待つ選択もある」(竹川さん)状況だ。

老後貧乏にならないためのお金の法則

著者 : 田村 正之
出版 : 日本経済新聞出版社
価格 : 1,620円 (税込み)

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